【闘病】胸の痛み・息苦しさがことの始まり! 肺が5cmに縮んだ「自然気胸」とは
闘病者の幸祐さん(仮)は自然気胸という病を患い、何度かの再発や手術を経験し、今後も再発の可能性を抱えながら生活しています。「命に別状はないけれど、原因がわからないので防ぎようがない。今後、再発の可能性もある」と医師に言われたら、あなたは何を感じながら生活していきますか? 初めての受診から即入院、退院後の再発、手術の経験や、現在の気持ちなどについて、話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年3月取材。
体験者プロフィール:
幸祐さん(仮称)
1988年生まれ、神奈川県在住。2007年に自然気胸と診断され、手術を受けた。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
落ち着いたら受診しようと思っていたら…
編集部
最初に不調や違和感を感じたのはいつですか? どういった状況だったのでしょうか?
幸祐さん
最初は大学2年生の頃です。胸部や背中に痛みを感じ、少し動くだけでも息苦しさがありました。身体をかがめるなど、胸部が圧迫される姿勢をとると、ポコポコと泡立つような音がしました。今思うと、肺から空気が抜けていた音なのだと思います。
編集部
受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。
幸祐さん
明らかな違和感がありましたが、日常生活を送ることはできていました。アルバイトや大学のテストもあったので、色々と落ち着いたら受診しようと考えていたのですが、そのうちに症状がどんどんひどくなってきたんです。階段を昇るとその後しばらく息苦しさが続くようになったため、やっぱり早めに受診しようと思い病院へ行きました。自分でバイクを運転して病院に行き、レントゲンを撮ると、右側の肺が直径5cmくらいの大きさしかなくなっているとのことで、即入院となりました。
編集部
どんな病気なのでしょうか?
幸祐さん
「自然気胸」といって、肺に穴があいて空気が漏れてしまう病気です。なぜ穴があくのかなど、原因はよくわかっていないようですが、痩せ型の若い男性に多いと言われています。僕は当時、身長179cmで体重59kgくらいでした。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
幸祐さん
初めての発症であったことと、入院した病院には呼吸器外科がなかったことにより、手術はせずに様子を見ることになりました。穴のあいた右側の肺に管(ドレーン)を挿入し、肺から漏れて胸腔に溜まってしまった空気を抜くという治療を2週間程度行うとのことでした。
編集部
そのときの心境について教えてください。
幸祐さん
受診前からインターネットなどで調べていて、「軽症であれば入院などは必要なく2週間程度の安静でいい」と書いてあったので、即入院と言われて驚きました。「自分は軽症だ」と勝手に思い込んでいたのだと思います。大学のテストをどうしようかと不安になったことを覚えています。
編集部
実際の治療はどのように進められましたか?
幸祐さん
入院後、すぐにドレーンを留置し安静に過ごしました。約2週間後、レントゲンで肺の膨らみ加減を確認し、医師からOKをもらったので、ドレーンを抜去し退院となりましたが、その後すぐに再発してしまいました。
退院後すぐに「再発しています」
編集部
何か違和感を覚えて病院を受診したということですか?
幸祐さん
はい。退院後、すぐに似たような症状があり、不思議に思って受診すると、「再発しています。再発自体は安静にしていれば問題ないですが、今後のためにも手術をした方がいいでしょう」と言われました。後日別の大きな病院を受診しました。前回と同じところが破れていて、今後も再発する可能性が高いので、その部分を胸腔鏡で切り取る手術をすると言われました。
編集部
手術前後の様子はどうでしたか?
幸祐さん
手術は全身麻酔で眠っている間に終わっていましたが、手術中にまたドレーンが入り、1日だけでしたがICU管理となりました。動けなくて痛みもあったのでとても辛かったです。それでも経過は良好だったようで、手術をした翌日には退院することができました。
編集部
治療や闘病生活の中で、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
幸祐さん
ドレーンは局所麻酔で留置したのですが、点滴のように針で刺入するのではなく、糸で縫い付けて固定するのです。麻酔のおかげで痛みは感じませんでしたが身体に穴を開ける時の衝撃や血の量には驚きました。また、麻酔が切れた後は動くたびに痛みがあったことも印象に残っています。
自己判断せず、すぐに受診した方がいい
編集部
幸祐さんの中で、病気の前後で変化したことを教えてください。
幸祐さん
原因がわからない病気なので、またすぐに再発するのではないかという不安がありました。手術の影響で肋間神経痛のような痛みがしばらく残っていたので、痛みを感じる度に不安になりますね。
編集部
病気に関連して、今までで後悔していることなどありますか?
幸祐さん
明らかな違和感がありながらも、落ち着いたら受診しようと思っているうちに肺が直径5cmほどにまで小さくなってしまい、更には手術が必要となってしまいました。直近の予定を優先せず、外科的治療が必要なほど重症になる前に受診するべきでした。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
幸祐さん
術後6年ほど経ち社会人となった頃にもう一度再発してしまいました。しかしそのときは、しばらくの安静療法でいいとのことだったので、自宅で安静にしているだけで回復することができました。現在は違和感や痛みもなく生活できています。ダイビングなどは水圧がかかるため禁止されていますが、普通に生活する分には何の制限もありません。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
幸祐さん
痛みや違和感、息苦しさを感じたら、自己判断せず、すぐに受診してください。いったん治っても再発しやすい病気ですが、これといった予防法もないので、不安でストレスを抱えたまま生活するよりも、普段通りに日々を過ごすことが大切だと思います。仮に再発しても保存治療か外科的治療か、その時に担当医と相談して決めれば大丈夫なので、過度に怖がらずに日々を過ごしていきましょう。
編集部まとめ
手術後、しばらくは痛みを感じるたびに不安になっていたとのことでしたが、時間をかけて「不安でストレスを抱えたまま生活するよりも、普段通り生活することが大切」と考えるようになったという言葉がとても印象的でした。幸祐さん、ありがとうございました。