【体験談】風邪と思いきや顔はただれ出血! 「スティーヴンス・ジョンソン症候群」とは
スティーヴンス・ジョンソン症候群は別名「皮膚粘膜眼症候群」とも呼ばれ、口の中や唇、眼、鼻などの粘膜がただれ、全身に赤い斑点や水ぶくれができる病気です。全身の倦怠感や発熱も症状として表れます。厚生労働省の調査によると、スティーヴンス・ジョンソン症候群の有病者数は、100万人に3.1人(年間)と言われています。今回はそんなスティーヴンス・ジョンソン症候群と闘うkanakoさん(仮称)に、病気について話を聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年1月取材。
体験者プロフィール:
kanakoさん(仮称)
島根県在住、1988年生まれ。診断時の職業は美容師。2016年11月にスティーヴンス・ジョンソン症候群を発症し、約2ヶ月半の入院生活を送る。退院後は後遺症が残り、数回手術を行った。今では通院しつつ仕事に復帰し、充実した日々を過ごしている。
記事監修医師:
丸山 潤
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
スティーヴンス・ジョンソン症候群と分かるまで
編集部
はじめに身体に起きた異変、初期症状はどのようなものでしたか?
kanakoさん
2016年のことですが、頭痛や喉の痛み、鼻水など、風邪と特に変わらない症状でした。あとは目の痛みやまぶたの腫れがあり、40℃近い高熱もでました。次第に目の腫れがひどくなり、目が開かなくなりましたね。身体中の皮膚もただれ、痛くて寝返りもできず、トイレも困難になりました。顔全体も腫れ、皮膚がただれて出血し、しゃべったり、意思の疎通をとったりするのも困難な状況でした。
編集部
スティーヴンス・ジョンソン症候群は珍しい疾患ですよね。すぐに疾患名は明らかになったのですか?
kanakoさん
いいえ。すぐに診断はされませんでした。はじめは病院で「インフルエンザかもしれない」と検査を受けるものの、陰性だったのでそのまま帰宅。しかし、次の日40℃前後の熱が出て、喉の痛みもひどく、何も食べられませんでした。すぐに別の病院を受診しましたが、再びインフルエンザの検査をすることになり、陰性で「明日点滴を打つのでまたきてください」と言われその日も帰宅しました。翌日になるとさらに状態が悪化していたため、すぐに入院することになりました。この時点でもスティーヴンス・ジョンソン症候群とは分かっていませんでした。
編集部
入院してからスティーヴンス・ジョンソン症候群と診断されるまでの経緯を教えてください。
kanakoさん
入院する前に高熱の影響で意識がほとんどなくなり、気づいたときには大学病院へ移動していました。目は開かず、喉の痛みでしゃべることもできず、そのほか身体中が痛かったです。それから寝たきりの生活が数日続き、ようやく意識が戻ってきたころに、スティーヴンス・ジョンソン症候群という難病だと親から伝えられました。
編集部
スティーヴンス・ジョンソン症候群だったと聞いたときの心境はどうでしたか?
kanakoさん
スティーヴンス・ジョンソン症候群と聞いたときは意識が戻って間もなかったため状況が全くわかりませんでしたが、少し時間が経ち「ああ、私は難病なんだ」って思いました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
kanakoさん
医師から説明はあったのですが、意識が朦朧としていたため細かい説明はほとんど覚えていません。でも、なぜスティーヴンス・ジョンソン症候群になったか原因を探していくことと、この病気の有病者が少ないため、色々な治療を試しながら行っていくとことを説明されました。
発症してからの生活
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
kanakoさん
視力低下でほとんど周りが見えなくなり、ひとりで歩くのも困難になりました。今まで車を使って生活していたのですが、乗れなくなってしまったので、その点はとても不便でしたね。食べ物にも少し変化があり、化学調味料や添加物などを口にすると、口の中がピリピリするようになりました。今まで食べられていたものが食べられないことが、多々ありました。
編集部
症状の改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?
kanakoさん
治療を薬だけに頼らず、普段の食事や生活習慣に気をつけて、自身の自然治癒力を高めるように意識しています。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
kanakoさん
家族の存在ですね。入院中は毎日のようにお見舞いに来て、励ましてくれました。すごく心の支えとなりました。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
kanakoさん
ときどきまぶたが腫れて痛みが出ることもありますが、視力は少し回復し、再び車を運転できるようになりました。ありがたいことに現在、体調に大きな異変はありません。しかし、目に後遺症が残っており、ひどいドライアイでかなり乾燥するようになってしまいました。
とにかくまずは病院へいってほしい
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
kanakoさん
「身体に異変が起きたら市販薬に頼らず、まずは病院へ行きなさい」と言いたいです。早期発見できていれば、あれほど症状が悪化せずに済んだかもしれないと思うので。
編集部
スティーヴンス・ジョンソン症候群を意識していない人に一言お願いします。
kanakoさん
スティーヴンス・ジョンソン症候群は、いつ誰がなるかわからない難病です。風邪薬のような市販薬が原因になることもあるらしく、私の場合はその可能性が高いのではないかと思っています。読者の方で、もし市販薬を服薬し、身体に異常をきたすようなことがあれば、スティーヴンス・ジョンソン症候群の可能性も頭の片隅にでも留めておくと良いかもしれません。また日々の生活習慣や自己管理をしっかりして、薬に頼らない身体づくりをした方がいいと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
kanakoさん
スティーヴンス・ジョンソン症候群はとても珍しい病気なので、名前を聞いたこともないという方が多いと思いますが、「こんな病気もある」ということを知ってもらえたら嬉しいです。特に初期症状などを理解しておけば「もしかしたら私、スティーヴンス・ジョンソン症候群なのでは?」と自分で考えることができるかと思うので。
編集部まとめ
今回kanakoさんに取材をさせていただき「難病になる可能性は誰にだってある」と改めて痛感しました。日常生活のなかで体調が悪くなったとしても「ただの風邪だろう」と思ってしまう方がほとんどでしょう。しかしkanakoさんの「身体に異変が起きたら市販薬に頼らず、まずは病院へ行きなさいと過去の自分に言いたい」という言葉を、私たちはしっかり受け止める必要があると思います。自分の身体を守れるのは自分だけですからね。