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~実録・闘病体験記~ 理解してもらえない難病「エーラス・ダンロス症候群」を抱える苦悩

 更新日:2023/03/27
~実録・闘病体験記~ 理解してもらえない難病「エーラス・ダンロス症候群」を抱える苦悩

世の中には本当にさまざまな病気があります。今回取材をした森本さんの病気は、患者数の少ない珍しい遺伝子疾患です。病気の症状そのものや、治療法がないのはもちろんのこと、「理解してもらえない」という点で不安を感じているとのことでした。まだまだ世の中に理解されない数少ない疾患であるエーラス・ダンロス症候群について、貴重な話を聞かせてもらいました。

森本 良太 さん

体験者プロフィール
森本 良太 さん

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1973年生まれ、京都府在住。2013年8月にテネイシン欠損型のエーラス・ダンロス症候群と診断される。不動産営業をしているが、声が出なくなった時もあいうえおボードをつくり接客をしたり、小腸ストーマ時でも外回りをしたり、今は杖をつきながら健常者と同じように仕事をし、自分なりに生きてる価値や証を残そうとしている。「辛い時ほど、だらしなく見えないように」を意識。

梅村 将成

記事監修医師
梅村 将成
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

「1年半後には寝たきりになります」

「1年半後には寝たきりになります」

編集部編集部

最初に、森本さんの疾患について教えて下さい。

森本さん森本さん

私の病気は、「エーラス・ダンロス症候群」という遺伝子疾患です。細胞から皮膚、血管も骨も内臓も、何もかも全て人よりも脆くできています。子どもの頃から気がつかないうちに内出血を良く起こしており、捻挫などもしょっちゅうでした。肩を自分で抜いたりできていました。右膝関節の脱臼が長引いてしまったこともありました。

編集部編集部

なるほど。そうだったんですね。

森本さん森本さん

この病気は本当に色々なところに症状が出るのです。ちなみに、エーラス・ダンロス症候群と一言で言っても、いくつかの分類があり、症状も人によって異なります。私の場合、特に辛いのは消化器系の症状です。大人になるにつれてひどくなり、S状結腸に数百の憩室(消化管の壁の一部が外側に突出し、ポケット状に膨らんだ状態)があるとのことで、いまだ食事をするたびに痛みが走ります。憩室炎を繰り返し、3ヶ月に一度くらいの頻度で入退院も繰り返し、かかりつけ医で「1年半後には寝たきりになります」といったような説明を受けたのが、12年ほど前だったと思います。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

森本さん森本さん

この病気には治療方法がなく、対症療法しかありません。関節の症状にはサポーターの装着、痛みには鎮痛剤、腸の症状には整腸剤といった感じです。あとはできるだけ症状が出ないように、自分で色々工夫もしています。

看護師さんに掛けられた言葉

看護師さんに掛けられた言葉

編集部編集部

例えばどのようなことをされているのですか?

森本さん森本さん

普通に生活していても関節の痛みがひどく、常に湿布を貼ったり、時々整骨院で関節を動かしてもらったりしています。さらに、ほんのちょっとぶつけたり、捻ったりしただけでも、打撲や内出血、捻挫などの、普通の方であればここまで酷くはならないというような大きな怪我になってしまうので、普段から靴にもインナーを3枚いれたり、自宅内でも、裸足はもちろんのこと、普通のスリッパでも痛みが出るため、底が厚いスリッポンを履いています。腹痛がひどい時には、車でシートヒーターをつけて体を温めると痛みがマシになりました。

編集部編集部

憩室炎については?

森本さん森本さん

何度も入退院を繰り返し、壮絶な痛みも経験し、最終的には手術でS状結腸を摘出し、人工肛門になりました。人工肛門は一時的な処置とのことで、時期が来たら閉鎖手術をするとのことでしたが、その時もエーラス・ダンロス症候群ということで、なかなか手術の予定が組めませんでした。エーラス・ダンロス症候群の症状として憩室炎になっているのに、「エーラス・ダンロス症候群があるのでうちの病院では手術できません」と言われた時は絶望的な気持ちになりましたね。

編集部編集部

治療や闘病生活の中で、何か印象に残ったことなどあれば教えてください。

森本さん森本さん

患者数の少ない珍しい病気だからか、医療関係者にも理解されていないと感じることがあります。症状を訴えても、検査で異常が見つからないと、精神科を受けてくださいと言われたこともありました。もっと医療関係者の方々に病気のことを知ってほしいです。

編集部編集部

ほかにも何かあれば教えてください。

森本さん森本さん

一方で、退院してからしばらく経ってから外来で診察待ちをしていた時、入院時の担当看護師さんに話しかけられたことがありました。びっくりしたと同時に、たくさんの患者さんを担当しているのに「良く覚えてくれてるな〜」と感心しました。実はその時期、色々落ち込んでいたのですが、話しかけられたことによって『覚えてくれている看護師さんがいてくれるなら安心だし、もう少し頑張ってみるか』という気持ちになりました。看護師さんの存在って大きいですね。医師より、看護師さんの方が頼りになりました。

まだまだ知りたいことがある

まだまだ知りたいことがある

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください。

森本さん森本さん

やっぱり、後ろ向きになってしまいますね。体が動かないし、痛みも常にあります。家族の前では笑顔でいようと思いますが、買い物に行っても荷物すら持てず、まだ小さかった子どもに荷物を持ってもらうと「近所の人が見たらどう思うだろう……」などと考えてしまいます。せめて、痛みだけでも取れるとありがたいですね。

編集部編集部

そこをどうやって乗り越えているのですか? 同じ病気で苦しむ方たちへのメッセージも兼ねてお願いします。

森本さん森本さん

病気持ちの人に限らず、世の中の人は、調子がいいときは、自分よりも社会的に成功している人を見て上を目指す、あの人みたいになりたい、越えたいと思って頑張る、自分が弱っている時には、自分より苦労している人と比べ、あの人よりはマシと思う、ということに気がつきました。これは、心が弱っている証拠だと思います。でも、『頑張らないと!』と思わなくても良いと思います。しんどいものはしんどい。辛いものは辛い。休むことだって必要です。

編集部編集部

その通りですね。

森本さん森本さん

あとは、周りの人たちのありがたみを感じています。特に妻は、人工肛門の交換なども嫌な顔一つせずに手伝ってくれていました。今は閉鎖手術を受けたので人工肛門ではありませんが、本当に日々ありがたく思っています。

編集部編集部

最後になりますが、メッセージをお願いします。

森本さん森本さん

この病気が少しでも多くの医療従事者に認知され、私たち患者も「この先生はエーラス・ダンロス症候群を知ってくれているかな……」と不安になりながら診察を受けることがないように、どこの病院でも安心して診てもらえるようになればと思います。患者である私たちにとっても、まだまだ情報が少なく、他の方がどのような症状なのか、どのように治療をしているのか、どのような先生がどこにいらっしゃるのかなど、知りたい情報がたくさんあります。フェイスブックでグループを立ち上げて、発信したりもしていますが、まだまだ十分とはいえません。今回、こういった形で記事にしてくださりありがとうございます。

編集部まとめ

子どもの頃からさまざまな症状があったという森本さん、やはり、「理解」や「認知」がこれからの課題という印象を受けました。エーラス・ダンロス症候群の認知度がもっと上がり、理解ある社会になれば良いですね。森本さん、ありがとうございました。

この記事の監修医師