「私のリストカット跡を綺麗にするにはどうしたら…?」傷跡治療の種類と選び方を美容外科医が解説
若い頃に「リストカット」をして、その傷跡がいまだに消えていないとしたら。服装などで隠そうとしても限度があるので、ここは医療に頼りたいところです。リストカット跡の治療にはどのような方法があって、注意すべき点はなんでしょうか。今回は、「池袋サンシャイン美容外科」の鈴木先生を取材しました。
監修医師:
鈴木 栄樹(池袋サンシャイン美容外科)
リストカットの治療について
編集部
リストカット跡の治療法について教えてください。
鈴木先生
リストカット跡を消す治療方法は、おおまかに3つあります。「レーザーを当てた後の自然治癒力で消す方法」「同じくレーザーで削り取る方法」「手術で傷跡を切除して縫う方法」です。ただし、厳密に言えば削り取ったり縫ったりする方法は、「リストカット跡に見えないような別の傷をつける方法」と言えるかもしれません。
編集部
「別の傷」ですか? それだと、根本解決になっていないような気がします。
鈴木先生
そうかもしれないですね。レーザーで削り取る場合は、「フランスパンや樹皮の表面のような目立つあざ」が残る可能性があります。また、手術で切除する方法は、寄せて縫える限定的な範囲でしか用いられませんし、別途の手術跡が残るかもしれません。ただし、どちらも比較的短期で治療できるため、「とにかくリストカット跡だとわからなければ、別の傷やあざが付いてもいい」というニーズは少なからずあります。
編集部
結局のところ、「綺麗にする」が前提だとレーザー術一択になりそうですね。
鈴木先生
費用や治療期間の問題もありますので、全ての選択肢を医師側が提示したうえで患者さんがお決めになることだと思います。その結果として、レーザー術に落ち着くことが多いですね。なお、自傷によるリストカットを前提とした治療費は、原則として自費診療となります。
編集部
ただし、例外的にレーザー術以外の短期治療を優先したいケースもあるということですね?
鈴木先生
はい。あくまで当院の場合ですが、患者さんの状態によって「リストカット跡の治療をしたものの、現在の精神状態は安定している」という趣旨の治療計画書をお出しすることが可能です。
リストカットの治療の流れ
編集部
レーザー術ですが、医療機関によっていくつか種類がありますよね?
鈴木先生
自然治癒が前提となると、威力を弱くした複数のレーザーをメッシュ状に照射する「フラクショナルレーザー」というタイプになります。例えるなら“やけどの一歩手前”のような刺激によって、皮膚の自然治癒力を高めていくイメージですね。ほかにも「YAGレーザー」や「炭酸ガスレーザー」などがあり、削り取る治療などで用いられます。ほくろの除去治療などにも向いています。
編集部
先生の医院では、「フラクショナルレーザー」を扱っているのですか?
鈴木先生
はい、扱っています。同じ「フラクショナルレーザー」でも機種によって呼び方が異なり、当院で扱っているのは「スターラックス1540(ICON)」というレーザーです。ですから、レーザーの名称で調べるというよりは、治療の中身や進め方を問合わせていただいた方がわかりやすいかもしれません。
編集部
リストカット跡の具体的な治療の流れについて教えてください。
鈴木先生
まずは、カウンセリングと治療方法の決定です。「フラクショナルレーザー」で進めるとしたら、術中の痛みはほとんどないので、麻酔を使用する必要がありません。ただし、出力を絞っていることもあり、月に一度のペースで5回ほどの照射をおすすめしています。皮膚のターンオーバーは約28日間と言われているので、この周期に合わせていきます。
編集部
ほかの治療方法を併用するようなことはありますか?
鈴木先生
リストカット跡がミミズ腫れのように盛り上がっている場合、「ステロイドテープ」を併用することがあります。「フラクショナルレーザー」によって細かく開けられた穴からの効果的な成分浸透にも期待できます。また、盛り上がった傷跡に有効な内服薬をお渡しすることもあります。ほか、肌の保湿・修復機能を高めるプラセンタのクリームも有効です。
リストカットの治療を受ける際の注意点
編集部
通院と並行して、自宅での注意点があればお願いします。
鈴木先生
治療跡が一時的にかゆくなると思いますが、引っ掻くようなことはしないでください。また、“やけどの一歩手前”のようなダメージを与えていますので、日焼けには注意したいですね。とはいえ、「好んで日差しの強い場所に行かない」程度の注意で十分です。お部屋の中にじっと閉じこもるような必要はありません。
編集部
正式な治療を受けずに、例えばダーマペンのような市販品に頼る方法はどうなのでしょうか?
鈴木先生
正直、推奨はしないです。市販されているダーマペンの場合、色素沈着が強く残るかもしれません。そもそも、ダーマペンは医師にしか扱えない医療器具なので、市販していること自体が謎です。おそらくは、医療器具ではない「ターマペンもどき」なのでしょう。また、市販されている軟膏などの傷薬にしても、治りきらないために悩まれている人が多いのだと思われます。
編集部
ほかにも、知っておくと役立つ情報はありますか?
鈴木先生
リストカットなどの自傷は自費ということでしたが、保険適用例もあります。それは、自傷跡が治る過程でひきつれなどを起こし、手首や肘などに「運動障害を残しているケース」です。こうした日常生活の不具合に対しては、保険診療が認められています。手首や肘の可動域を治療で戻していきましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
鈴木先生
思春期の患者さんが前提になりますが、リストカット跡の治療は、ぜひご家族と一緒にご相談ください。傷跡と一緒に「心の問題や原因」も解決していきましょう。なかなか親に打ち明けられないお子さんも多いと思われますが、クリニックを問題解決の場として活用していただければ何よりです。傷は早く治療するほど劇的に改善しますし、若い人ほど治癒力も高いのです。リストカット跡は「1人で解決する問題ではない」と考えます。大人になったら後悔する人も多いので、傷をつけてしまった時点で受診していただきたいです。
編集部まとめ
傷跡治療には大きく3種類あり、「綺麗に治す」ことを優先するなら、フラクショナルレーザーによる治療が第一選択肢になりそうです。ただし、レーザー機器の呼び方に注意しましょう。「威力を弱くした複数のレーザーをメッシュ状に照射するタイプ」を選ぶようにしてください。なお、治療費は原則として自費です。就業する前だと経済的に厳しいかもしれませんが、なおのことご両親と一緒に「心身のケア」を図りましょう。
医院情報
所在地 | 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-15-3 近代ビル9F |
アクセス | JR・東京メトロ・東武東上線・西武池袋線「池袋駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 美容外科、美容皮膚科、皮膚科、形成外科 |