【体験記】「まさか自分が!」たまたま発見できた腎臓がんの恐怖とは
腎臓がんは血液を濾過して尿を作る腎臓に発生し、50~70歳の中高年に多いといわれる悪性腫瘍です。症状が出にくく、最近では検診などの超音波検査やCT検査で偶然に発見されるケースや、血尿、お腹の違和感で見つかることもあります。闘病者のマメ子さん(仮称)は現在、治療を終えて仕事復帰し、残った方の腎臓に負担をかけないように食事や水分量に注意しつつ、術後に始めた登山を楽しめるまでに回復しました。そんな彼女に、どのようにしてがんに気づき、治療をおこなっていったのか、闘病中の話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年12月取材。
体験者プロフィール:
マメ子さん(仮称)
岐阜県在住、1977年生まれ。夫、子ども3人との5人家族。職業は派遣社員。2021年3月、血尿と右脇腹の強い痛みがきっかけで泌尿器科を受診したところ、検査の結果、腎臓がんと診断を受ける。4月下旬に右腎摘出術後を受け、現在は経過観察中。
記事監修医師:
石川 智啓
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
症状の出にくい腎臓がん
編集部
一般的に症状が出にくいとされる腎臓がんですが、病気が判明した経緯について教えてください。
マメ子さん
週に2〜3回、寝ていると夜中に脇腹が痛むようになったんです。あまり気に留めていませんでしたが、半年くらい続きました。2021年3月、血尿がありトイレが真っ赤に染まりました。生理中だったので、そのせいかなとは思ったんですが、生理のピークは過ぎたころでタンポンもナプキンもそこまで汚れてなかったんです。
編集部
すぐに病院にいきましたか?
マメ子さん
不安感とともに激しい脇腹の痛みに襲われ、「これはまずい」と思って、翌日に泌尿器科を受診しました。頭痛・吐き気・悪寒もあり、ただごとではない感じがありました。
編集部
どのような痛みだったんでしょうか?
マメ子さん
脇腹の痛みは、最初は強めの生理痛のような感じから、だんだんと陣痛に近づいていったような感じでした。痛みが少し和らいだときに、スマホで「血尿」「腹痛」などを調べました。もしかしたら「がんかも」と疑ってはいました。
編集部
どのような検査をされましたか?
マメ子さん
最初は、エコーで腫脹(炎症などで身体の一部に血液が溜まり腫れあがること)を確認しました。そのあとにCTを撮りましたが、右の腎臓が左に比べ2倍位の大きさになっていました。それに右腎臓の真ん中あたりに、ピンポン玉のようなものが見つかりました。悪性かどうかはわからないとのことで、後日、造影剤を使ってMRIを撮ることになりました。紹介状を書いてもらい、別の病院で受けることになりました。
腎臓がんの宣告
編集部
MRIですぐに病名がわかったんですか?
マメ子さん
MRIの受けたあと、先生から「腎臓がん」の宣告を受けました。数日後、骨シンチグラフィという骨の検査をして、骨への転移を調べました。MRIは、造影剤の影響で身体がかゆくなったのを覚えています。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
マメ子さん
肺、リンパ節、骨に転移が無いことが確認できたら、手術で右腎臓を摘出すると言われました。腎臓がんには、放射線治療の効果が期待できないため、もし転移が認められたら、薬物療法に入ると説明を受けました。検査の結果、転移は認められなかったため、2021年4月に右腎臓の摘出手術を受けました。
編集部
手術時の様子は覚えていますか?
マメ子さん
全身麻酔が効いてきて、すぐに意識がなくなりました。それから長かったのか、短かったのかわかりませんが、意識が戻った瞬間は、突然テレビのスイッチをつけたような感じがありました。目は開かないまま、周りの慌ただしい騒音や金属の触れ合う音や複数の話し声の感じが、ぶわっと一気に流れ込んできたような感じです。
術後の様子や当時の心境
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
マメ子さん
症状が出た時からネットでいろいろ調べていたので、ある程度覚悟はできていました。先生から結果を聞かされた時は、「やっぱりか」という感じでした。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
マメ子さん
手術するまでは、脇腹が度々痛みました。あまり体が疲れないように、必要以上の仕事をせず、毎日早めに就寝して身体を休めていました。家族はいつも通りに接してくれていたので、思い詰めることなく過ごすことができ助かったと感じています。夫も有休をとって病院に付いてきてくれたので安心できました。
編集部
入院時やその後の治療の内容を教えてください。
マメ子さん
右腎摘出術を行って以降は、追加治療は今のところ必要ないため、何もしていません。ただ、定期的に検査は受けています。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
マメ子さん
闘病体験や医療従事者のブログを読んだり、自分自身のがんの記録もブログに残したりして、同じ境遇の人とつながりを持つことでした。
手術を終えて伝えたいこと
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
マメ子さん
「そんなに無理をして働かないで、悔いのないようにしたいことをしなさい」と伝えたいです。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
マメ子さん
転移や再発がないか定期的に検査を受けています。術後、半年が経ち(取材時)、今のところ順調です。体調はとてもよく、登山が趣味になりました。水分を多めにとることと、減塩を心がけています。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
マメ子さん
「この年で腎臓がんなんて?」と最初は思いましたが、病院の先生やネットの情報によると、40代女性の腎臓がんは思っていたより、ずっと多いことがわかりました。他人事とは思わないで欲しいですね。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
マメ子さん
今回お世話になった先生をはじめ、医療従事者の方々に、とても感謝しております。これ以上望むことはありません。
編集部
早期発見のポイントはありますか?
マメ子さん
腎臓がんの罹患率は10万人に数人といわれており、「まさか自分が」という気持ちでしたが、確率が低いその数人に自分が入ることを体験しました。女性の40代以降は、体調が大きく変化する時期です。不調があっても「そういう年頃だし」「更年期だろうから仕方ない」「疲れが溜まってるから」と、隠れている大きな病気を見過ごすことがあるので注意してほしいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
マメ子さん
私自身、血尿と強い痛みが起きてからでさえ、「生理中だからかもしれない」と一旦受診を躊躇しました。少しでも違和感を感じたら、迷わず受診するべきだし、がん検診も欠かさず受けるべきだと思います。
編集部まとめ
マメ子さんは、「非正規雇用で働く人も、正社員と同じように、人間ドックを少ない負担で受けられたらいいのに」と話されていました。マメ子さんは、たまたま初期のがんでも症状が出たので気づくことができました。初期で自覚症状が出ることは、まずないと言われています。マメ子さんも、このまま気づかず進行していた可能性があります。ほかの方の闘病体験記を見ると、初期の腎がんは人間ドックで受けたエコーで見つかった方が多いようです。逆に言うとエコーをとる機会が無ければ、初期発見は難しいのではないでしょうか? 今後の、制度が変わり、皆が検査を受けられる機会ができれば、安心できますね。この記事を見て、少しでも早期発見につながればいいですね。