【妊活とは】何をすると良いのか、ダメなことはあるのか? 産婦人科医が教えます
「妊活って、具体的にどんなことをしたら良いの?」このように疑問に感じている方もいらっしゃることでしょう。また反対に、やってはダメなことについても知っておきたいところです。そこで今回は、「江戸川橋レディースクリニック」の井野奈央先生に、妊活でおすすめできること、おすすめできないことについて話を聞きました。
監修医師:
井野 奈央(江戸川橋レディースクリニック 院長)
聖マリアンナ医科大学卒業。これまでに国立病院機構東京医療センター、慶應義塾大学産婦人科学教室、国立成育医療研究センター不妊診療科、杉山産婦人科生殖医療科などに勤務。日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、日本受精着床学会などに所属。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本生殖医学会認定生殖医療専門医の資格を持つ。不妊治療だけでなく、更年期や月経の異常など、女性に特有の諸症状まで幅広く治療にあたる。
妊活とは
編集部
そもそも、妊活とはどのようなことを指すのでしょうか?
井野先生
妊活とは、「妊娠活動」のことをいいます。妊娠に関する知識を学んだり、妊娠に向けて体調を整えたりする活動全般を指します。
編集部
妊活を始めるタイミングはいつ頃が良いのでしょうか?
井野先生
「赤ちゃんが欲しい」と思ったときが妊活を始めるタイミングといえるでしょう。男女ともに、30歳をすぎると少しずつ妊娠の可能性が低くなっていくといわれています。現在は晩婚化により初婚年齢も高くなっていますが、妊娠を希望する場合には、パートナーとともにそのタイミングで妊活を始めた方が良いでしょう。
編集部
妊活は女性だけでなく男性にも必要なのですか?
井野先生
妊活には、女性の行動だけでなく、パートナーの協力が不可欠です。不妊の原因は男性側にも多く存在し、男性側の原因のほとんどが精子をうまくつくれない「造精機能障害」です。これは、ストレスや飲酒、喫煙などが影響して起こることがあります。そのため、パートナーである男性も妊活に関する知識を身につけ、二人三脚で取り組むことが大切です。
妊活でのおすすめ
編集部
妊活のために取り組んだ方がいいことを教えてください。
井野先生
まずは、婦人科で検診を受けることや、生活習慣を整えることなどが挙げられます。
編集部
なぜ検診を受けた方が良いのですか?
井野先生
検診を受けることで、不妊に影響する病気の早期発見・早期治療に繋がります。万が一妊娠に影響する病気があった場合には、早期に治療を始められるため、受けておいた方が良いでしょう。検査内容はクリニックによっても異なりますが、血液検査や性感染症検査、女性ホルモン分泌検査、子宮の内診や超音波検査などが行われます。また、同様に男性向けの検査もあります。
編集部
生活習慣について教えてください。
井野先生
食事に関しては、規則正しく栄養バランスの取れたものを摂取することが大切です。1日3食、さまざまな食材を取り入れ、体の基礎となる栄養素をしっかり摂るようにしましょう。例えば、積極的に摂取してほしい栄養素の一つに「葉酸」があります。葉酸は、妊娠中の赤ちゃんの神経系の発達に必要な栄養素で、不足した場合には先天異常のリスクがあります。厚生労働省でも、赤ちゃんの先天異常の予防のために、妊娠前から葉酸のサプリメントを取り入れることを推奨しています。食品では、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、ほかにはいちご、納豆などにも多く含まれています。このほか、妊活にはオメガ3やビタミンDの摂取も重要といわれています。
編集部
運動もしたほうが良いですか?
井野先生
妊活では、適度な運動を習慣にすることも重要です。妊娠から出産にかけて、女性の体には大きな負担がかかります。運動して筋肉をつけ、血流を良くし、健康的な体づくりを心がけましょう。適度な運動は体力づくりとともに、ストレス解消や気分のリフレッシュにも繋がります。ウォーキングやヨガ、ストレッチなどは、日常生活の中にも取り入れやすく、続けやすいでしょう。
編集部
睡眠では、どんなことに気を付けたら良いのでしょうか?
井野先生
毎日十分な睡眠を取ることが大切です。睡眠は体だけでなく、ホルモンの調整などを行う脳を休めるためにも重要です。生活リズムを整えるためにも、夜は極力早めに布団に入り、十分に睡眠を取って、毎日同じくらいの時間に起床するようにしましょう。
編集部
生活習慣以外にもやった方がいいことはありますか?
井野先生
風疹の免疫がない場合には、妊娠前にワクチンを接種しておくことが必要です。これは、妊娠初期に女性が風疹に感染することで、おなかの赤ちゃんにも感染してしまい、難聴や心臓病を持って生まれる可能性が高くなるためです。そのため、風疹の抗体を持っているかどうかを調べ、免疫がない場合にはワクチン接種をしてから妊活を始めましょう。風疹ワクチン接種のあとは2カ月間の避妊が必要なので、余裕を持って検査することをおすすめします。また、風疹への感染を防ぐため、女性だけでなく男性も抗体価を調べ、免疫がなければワクチン接種をしましょう。
編集部
ほかにもあれば聞いておきたいです。
井野先生
基礎体温を記録することは重要です。しかし、それがストレスになっているような場合には無理に測定しなくても良いでしょう。基礎体温は月経周期を把握し、性交のタイミングを図るためには有用な手段ですが、毎日決まった時間に測定しなければならなかったり、忘れてしまうこともあったりと、人によってはそれがストレスになってしまうことも考えられます。妊活ではストレスを溜めないことも大切なので、基礎体温を記録すること自体がストレスになっている場合には、無理に測定しなくても良いと思います。
妊活でおすすめしないこと、やってはいけないこと
編集部
では反対に、妊活をする上で「やってはいけないこと」について教えてください。
井野先生
先ほどと反対の意見になりますが、偏った食生活や睡眠不足、運動不足、喫煙はやめた方が良いでしょう。また、痩せすぎや太りすぎも良くありません。
編集部
妊活にたばこが良くないというのはよく耳にしますが、これはどうしてでしょうか?
井野先生
女性の喫煙は、卵子の質を低下させるほか、赤ちゃんが低体重で生まれてくることがあります。男性の場合にも、喫煙している人はしていない人と比べて、精子の数や運動率が低いといわれています。そのため、喫煙しているカップルは、男女ともに禁煙することが大切です。
編集部
体重が妊娠に影響することもあるのですか?
井野先生
痩せすぎや太りすぎは、妊娠に関係するホルモンの分泌に影響を与えることがあるのです。無理なダイエットは女性ホルモンの分泌に影響し、生理が止まってしまったり、排卵しづらくなったりして、妊娠しにくくなってしまうことがあります。また、肥満の場合、流産や早産のリスクが高まるほか、「妊娠高血圧症候群」になりやすく、おなかの赤ちゃんの成長発達に悪影響を及ぼしたり、出産時のリスクが上がったりすることもあるのです。
編集部
男性の場合はどうでしょう?
井野先生
男性の場合にも、肥満の場合には精子の形や数、運動性に影響することがあります。EDや生活習慣病に繋がることもあるため、適正体重を保つことが重要です。
編集部
摂取してはいけないものはありますか?
井野先生
絶対にいけないということではありませんが、コーヒーやアルコールの飲みすぎはやめた方が良いでしょう。コーヒーは、過剰に摂取すると妊娠率が下がるという研究結果があります。気にしすぎる必要はありませんが、コーヒーを毎日飲むという方は、1日2杯程度に留めておきましょう。アルコールも嗜む程度なら問題ありませんが、過度な飲酒は控えてください。アルコールに関しても、1日2杯程度に抑えた方が良いとされています。また、せっかく飲まれるのであれば、せめて抗酸化作用の高いポリフェノールを豊富に含んだ赤ワインが良いでしょう。
編集部
生活習慣以外にやめた方が良いことはありますか?
井野先生
よもぎ蒸し(セラピーの一種)や排卵期の鎮痛薬の内服には注意が必要です。妊活に良いからと、よもぎ蒸しを受ける方もいらっしゃるかと思いますが、子宮周囲を温めすぎてしまうと卵子が育ちにくくなってしまうため、頻繁に受けることや温度には気を付けてください。特に排卵後(生理前2週間)は避けた方が良いでしょう。また、排卵期に鎮痛薬を内服すると、排卵を抑制してしまうことが分かっています。どうしても痛みが辛いという場合には内服して構いませんが、そうではない場合には、排卵期の鎮痛薬の内服は控えましょう。
編集部
男性ではどんなことをやめた方が良いですか?
井野先生
男性の場合には、下半身を温めすぎてしまうことや圧迫することは控えた方が良いとされています。これは、精子にダメージを与えてしまうためです。長風呂やサウナ、膝上でのPC作業、きつい下着の装着などは、男性器付近の血流を妨げるため、避けるようにしましょう。
編集部
ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
井野先生
妊活においては、体調面だけでなく気持ちの面も大切です。妊活に熱心になりすぎてしまうと、知らず知らずのうちにストレスを溜めてしまうこともあるでしょう。頑張りすぎず、ニュートラルな気持ちで妊活に取り組んでみてください。
編集部まとめ
妊活でやった方が良いこと、ダメなことについて伺いました。いずれの場合にも、規則正しい生活習慣を心がけることがポイントといえるでしょう。妊活においては、男女ともに食事や睡眠、運動習慣などを見直し、喫煙や過度な飲酒などの習慣がある場合には改善しましょう。
医院情報
所在地 | 〒112-0014 東京都文京区関口1-48-6 日火江戸川橋ビル第二 B202 |
アクセス | 東京メトロ有楽町線「江戸川橋駅」より徒歩1分 東京メトロ東西線「神楽坂駅」より徒歩10分 都電荒川線「早稲田駅」より徒歩13分 |
診療科目 | 産婦人科 |