ドライアイの治し方は、目薬でダメなら「涙点プラグ挿入術」を検討すべし
目には鼻へ抜ける管があり、涙の逃げ道となっています。泣くと鼻水が出るのはこのためです。逆に考えれば、涙の逃げ道をふさぐことがドライアイ対策になります。そんな「涙点プラグ挿入術」の適応や注意点について、「大川眼科」の大川先生が解説します。
監修医師:
大川 親宏(大川眼科)
目薬が効かなければ涙点プラグ
編集部
ドライアイの治療って、まずは目薬の処方からですよね?
大川先生
はい。手術は患者さんの負担を多少なりとも伴いますので、点眼薬で解決できるのであればそうします。なお、点眼薬といっても多彩で、人工涙液もあれば、ヒアルロン酸を含んだ「涙を長持ちさせる」目的のものもあり、患者さんの症状に合わせて処方しています。
編集部
点眼をしてもドライアイが解決しなかったら、次はどうするのでしょうか?
大川先生
涙の量より、蒸発したり排出されたりする量のほうが少なければ、目は潤います。じつは、「排出される量を少なくする治療方法」があるのです。目の中にある涙の出口を「涙点」(るいてん)というのですが、ここに栓をしたり、手術によって物理的に閉じたりします。
編集部
「栓をすること」と「物理的に閉じること」の違いが分からないのですが……
大川先生
栓のことを涙点プラグというのですが、これは後日、抜くことができます。生活習慣の改善などが実って、逆に「涙目で困るようなこと」があっても、元に戻せるわけです。他方の物理的な閉鎖手術は、涙点を癒着させるため、原則として元に戻せません。
編集部
涙点プラグを入れるだけなら、簡便な施術で済みそうですね。
大川先生
はい。切開などは必要ないですから、ものの数分で終わります。なお、「涙点」は目のまわりの組織の上下に2箇所あるので、片方に涙点プラグを入れるか両方に必要なのかを、個別に判断していきます。「涙点プラグ挿入術」には保険が適用され、3割負担で、片眼上下一方で3450円、片眼上下両方で4620円となっています。
意外な盲点は「目やにの増加」
編集部
涙点プラグ挿入術は、望めば、誰でも受けられるのでしょうか?
大川先生
「点眼だけでは効果が不十分な場合」という前提があるものの、とくに禁忌などはありません。ドライアイの原因が何であれ、原因の解決と並行して症状を抑えていきましょう。繰り返しになりますが、涙が出すぎたらプラグを抜くことも可能です。
編集部
「後で抜ける」ということは、意図せずポロッと抜けることも起こるのでは?
大川先生
人によっては起こりえる話です。涙点プラグの大きさはいくつかあって、患者さんの涙点の大きさに合わせているのですが、それでも抜けるときは抜けます。なお、栓の代わりに「コラーゲンを注入して埋める方法」もありますが、コラーゲンは水分に分解されるので長続きしません。閉そく効果も弱いので、当院ではほとんど用いていません。
編集部
素人の発想だと、逆にプラグが潜り込んで取れなくなることも心配です。
大川先生
同じく、人によっては起こりえますが、レアケースといえるでしょう。涙点プラグは、メーカーさんの努力で「いい案配の大きさと形」が具現できています。仮に潜り込んだとしても、そのことによる合併症はほとんど考えられません。
編集部
ほか、涙点プラグ挿入術の注意点があったら教えてください。
大川先生
「目やにが増える」ことでしょうか。本来なら、涙を排出することで、「目の中のゴミ」も排出されます。ところが、涙点プラグによって“涙のお掃除機能”が弱まると、目やにが増えてしまいます。なお、コンタクトレンズをしている方でも涙点プラグ挿入術は可能です。涙点は目のひだの奥に位置しているため、涙点プラグがコンタクトレンズと接触することは考えられないからです。
コンタクトレンズ、エアコン、パソコンが悪化の原因に
編集部
ところで、ドライアイは涙の量だけの問題なのでしょうか?
大川先生
ドライアイの原因は、(1)涙の量が少ない、(2)涙の量は正常でもすぐ乾いてしまう、(3)涙がうまく黒目の上にとどまらない、この3点に集約できます。(2)は「涙の質」が関係し、(3)は「水と油」の問題で涙がはじかれてしまうんですね。いずれのケースにも涙点プラグは有効ですが、やはり最も適応がいいのは(1)です。
編集部
よく、コンタクトレンズをしているとドライアイになりやすいと聞きます。
大川先生
ドライアイを悪化させる「3つのコン」があり、そのうちの1つは、涙が眼の表面にいきわたるのを阻害するコンタクトレンズです。ほか、部屋全体を乾燥させるエアコン、集中して“まばたき”の回数が少なくなるパソコンにも注意しましょう。
編集部
ところで、ドライアイなどで荒れた角膜を修復する治療方法はあるのでしょうか?
大川先生
あります。当院で頻回に用いているのは、ヒアルロン酸の点眼ですね。角膜には肌と一緒で、ターンオーバーによる自己修復機能があります。この機能を助けるのがヒアルロン酸点眼です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
大川先生
今までの流れを整理すると、ドライアイ対策としては、まず、原因に応じた点眼薬を用います。それでも解決しなかったら涙点プラグ挿入術。頻繁に涙点プラグが抜けてしまうようなら、手術による涙点の閉鎖。この順番で検討していくのが一般的でしょう。ドライアイには複数の解決方法が段階的に用意されていますので、治療をあきらめないでいただきたいです。
編集部まとめ
ドライアイを点眼薬で解決できるなら、それにこしたことはないですよね。主に患者への侵襲度の観点から、涙点プラグ挿入術を初手からおこなうことはほとんどありません。そして、プラグが頻回に抜けてしまうようなら、涙点の閉そく手術を検討しましょう。つまり、涙点プラグ挿入術の適応は広いものの、数ある選択肢の1つということでした。
医院情報
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診療科目 | 眼科 |