【闘病記】最初の異変は足のしびれ。多発性硬化症で左目は見えなくても夢と生きる
多発性硬化症は脳や脊髄、視神経に繰り返し炎症が起きて、神経組織が壊されてしまう病気です。有病率は10万人のうち8~9人ほど。日本では発症が稀な疾患であるため、病名を聞いたことのない方も多いでしょう。発病年齢は30才前後と若年層に多く、男女比は1:3で女性に多い疾患で、原因は不明です。視神経障害による視力の低下や手足のしびれが見られます。多発性硬化症と診断され、現在闘病中のあすかさんに、現在の生活や、治療について世間に訴えたいことを聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。
体験者プロフィール:
あすかさん
千葉県在住、1997年生まれ。中学生のとき(2013年)に多発性硬化症と診断される。現在は車椅子生活。趣味は愛犬3匹と遊ぶこと。特別支援学校教諭を夢に大学生活を送る。
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
多発性硬化症って……?
編集部
はじめにカラダに起きた異変、初期症状はどのようなものでしたか?
あすかさん
両下肢の痺れと脱力、右目の視力低下がありました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
あすかさん
怖いとか不安とか、それ以前に「多発性硬化症ってどうなる病気なの? なにそれ?」と思いました。聞いたことのない病名で、どのような病なのかまったく想像がつきませんでしたね。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
あすかさん
初めは経過観察をすることになりました。その後、病名が分かってから自分で治療法を調べ、医師に「(経過観察ではなく)治療をしてほしい」と伝えましたが、初診を担当した医師は、経過観察という方針を変えてくれませんでした。
編集部
セカンドオピニオンは受けましたか?
あすかさん
初診担当医の治療方針に違和感を感じ、セカンドオピニオンを受けました。そこではじめて放置していてはいけない病気だと知ったんです。そしてセカンドオピニオンで出会った医師からは「急性期治療はステロイドを使用し、再発を予防するための治療も必要だ」と説明を受けました。
多発性硬化症によって変わりゆく日常
編集部
多発性硬化症の発症後、生活にどのような変化がありましたか?
あすかさん
痺れが24時間続いていましたね。数回再燃を繰り返すうちに痺れから痛みに変わり、痛みから解放される日はなくなりました。今では電動車椅子での生活を送っています。
編集部
薬の副作用などはありますか? ある場合、その薬名も教えてください。
あすかさん
急性期治療で使用される、ステロイド薬による吐き気がありました。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
あすかさん
好きなアーティストの音楽を聴くことや、LIVEに行くという目標が心の支えになっていました。そしてなにより、母の存在が大きかったです。何か言葉をかけられるということはなかったのですが、母がいてくれるという安心感が大きな支えになっていました。現在は特別支援学校の教諭になるという夢も、私の支えとなっています。
編集部
多発性硬化症による症状の改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?
あすかさん
神経難病患者であることを、できる限り自分に実感させないように生活しています。病は気からというように、気持ちが下がると体調がより悪くなると思うので。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
あすかさん
両下肢と右手に麻痺があり、左眼はほとんど見えなくなってしまいました。現在は1日を自宅でゆっくり過ごしていることがほとんどで、以前の様に活動的な1日を送ることが出来なくなっています。また、IgA腎症、QT延長症候群、喘息の合併症もあります。
セカンドオピニオンの重要性
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
あすかさん
私はセカンドオピニオンを受ける前、初期治療を行わず、経過観察をしてしまっていました。今でも「もっと早くから治療を開始していれば、今とは違う結果になったのでは」と思うときがあります。「医師の治療のやり方に違和感を覚えたなら、すぐにセカンドオピニオンを受けて」と言いたいです。「何も考えずに放置するな」とも。
編集部
多発性硬化症を意識していない人に一言お願いします。
あすかさん
多発性硬化症は神経難病ですが、適切な治療を受けていれば健常者と同じ生活が送れる病気です。ただ、私の場合は初期治療がスムーズにいかず、症状が悪化してしまったように思います。皆さんが適切な治療が受けられることを切に願っています。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
あすかさん
私たちは困っているから、異変を感じたから病院を受診するのです。検査で異常がないから、診察上異常がないからと、直ぐに「大丈夫です」と診察を終わらせるのではなく、改善策を一緒に考えて欲しいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
あすかさん
誰しも病気と診断されると落ち込むものです。でも大丈夫。あなたの周りの人は皆あなたの応援者です。病は気から。諦めることなく、一緒に立ち向かいましょう。
編集部まとめ
病名を医師からハッキリ告げられると、どうしても「自分は病気なんだ」と弱気になってしまうもの。しかし多発性硬化症と診断されても、特別支援学校の教諭になるという夢を持ち、病気に立ち向かうあすかさんには力強さを感じました。またあすかさんの心の叫びである、セカンドオピニオンの重要性は、より多くの方に知ってほしいと感じました。納得できる治療を受けられるよう、自分のためにできることをする、という姿勢は誰もが持っておくべきでしょう。