若い人も要注意。知っておきたい「若年性白内障」のリスクと原因
若者にも起きる若年性白内障。一般の白内障と呼び方を分けているとしたら、同じ発症の仕方ではないということしょうか? 身近にあるどんな要因が、年齢を問わず、白内障に関係してくるのでしょう。心当たりがあったら、白内障の有無を検査しておきたいものです。「アイケアクリニック本院・アイケアクリニック東京」の佐藤先生を取材しました。
監修医師:
佐藤 香(アイケアクリニック本院・アイケアクリニック東京 院長)
獨協医科大学医学部卒業。同大越谷病院眼科入局。眼科勤務を経た2012年、首都圏を中心に5院展開する「アイケアクリニック」のうち「アイケアクリニック本院」「アイケアクリニック東京」の院長に就任。日々、患者の望む見え方を実現できるようにするための手術を心がけている。医療法人トータルアイケアの理事も務める。
アトピー・目薬・食事など原因はさまざま
編集部
白内障は紫外線の影響が大きいので、高齢者に顕著だと聞きます。
佐藤先生
そのとおりです。ある種の「老化現象」と言ってもいいでしょう。その一方で、若い方の「若年性白内障」という病気が増加傾向にあります。若年性白内障の原因で最も多いのは、アトピー性皮膚炎との併発ですね。お肌と同様に、目の水晶体にも変質が起きています。
編集部
若年性白内障の要因が他にもあれば、お願いします。
佐藤先生
次に挙げるとすれば「外傷」、つまりスポーツや事故などで目に受けたショックです。水晶体は、過度に振動させることでも白濁を起こします。ショックを受けた時点で水晶体が濁るとは限りません。ショックが継続的に続いていないとしても、ある時点での外傷をきっかけとして、白内障は水面下で進行していきます。
編集部
意外です、要因の棚卸しを続けていきましょう。
佐藤先生
ステロイドを含むお薬も、白内障と関係しているとされています。目薬に限らず、塗り薬などで皮膚からステロイドが入ってくる場合も含みます。また、糖尿病との合併も知られているところです。とくにⅠ型糖尿病は生活要因との関連が薄く、「なるときには誰でもなる病気」です。つまり若い方でも、Ⅰ型糖尿病による若年性白内障は、起こりえるということですね。また、レーシック手術が白内障リスクを押しあげるというデータもあります。
編集部
花粉症でステロイド剤の処方を受けるパターンは多いです。
佐藤先生
ステロイド剤の白内障への影響には、長期使用が関わってきます。眼科医が処方する場合は十分、その点に考慮します。ですから、ありえるパターンとしては、耳鼻科や皮膚科で処方されたステロイド剤を長期使用するケースでしょうか。ちなみに、ステロイドを含む市販薬はまだ、認められていないはずです。
編集部
まさか、日頃の食事は関係していないですよね?
佐藤先生
どうでしょう。白内障が原則として「加齢性の変化」だとすれば、抗酸化作用とも関わってくるはずです。ですから、「目の濁りを促進する食べ物がある」というより、「目の濁りを防ぐ食事内容がある」といったところでしょうか。食事の基本は、栄養バランスに尽きると思います。
視力の低下とはいえない症状と予防方法
編集部
若年性白内障の原因が個別にあるとしたら、医師に調べてもらわないと分からないですか?
佐藤先生
そうですね。例えば上記を読んで「花粉症の目薬をやめよう」と思っても、その方個人のリスクに該当していない場合があります。予防するとしたら、先に眼科の受診で、個別の因子を明らかにしていきましょう。ただし、紫外線対策と食生活の工夫は、「どなたが取り組んでも、一定の効果がある」予防方法です。
編集部
アトピー性皮膚炎なら、その病気を治す必要があるけども、ベースとして紫外線対策と食生活の工夫が大切ということですね?
佐藤先生
はい。日頃の積み重ねが「病気の進行」ということなのだと思います。長期でみた白内障罹患率はほぼ100%とされていますので、「なるかどうかわからないのに予防をする」という空回りにはなりません。やればやっただけ効果のある予防策です。加えて、お肌の老化や生活習慣病の予防も望めます。総じて「老化を抑えましょう」ということでしょうか。
編集部
加齢による視力の低下とは、また別の話なんですよね?
佐藤先生
違いますね。いわゆる視力の低下は、ピントが関係してきます。ピントを合わせられる距離が近い側に偏ってくれば近視ですし、ピント幅が限られてきたら老眼です。一方のレンズの濁りは、見え方のコントラストと関係してきます。白内障の進行により、ピントは合っているのに、輪郭がにじんでいてわからないような見え方をします。ただし、視力検査の結果として、「視力が悪くなった」ということは起こりえるでしょう。
編集部
視力の低下と勘違いしてコンタクトレンズを買っても解決しない?
佐藤先生
目の濁りなので解決しないのですが、勘違いされている方は多いでしょう。眼科を介さず、コンタクトレンズを直接、通販や量販店で入手されているとしたらなおさらです。眼科に限らず、眼鏡店でも目の検査はおこなえますから、受けてみてください。仮のメガネで矯正視力を出したはずなのに、思うように見えなかったら、視力とは別の問題が起きていることになります。
目玉焼きを生卵には戻せない
編集部
ちなみに、白内障にかかると、どういう見え方をするのでしょうか?
佐藤先生
一般に「もやがかかる」「まぶしく見える」などとされていますが、その人の受け止め方によりますよね。ですから、「以前の見え方と違って、なんだかおかしいな」と感じたら、それが十分な受診動機です。白内障以外の目の病気を生じさせている場合もあるでしょう。
編集部
白内障の診断はどうやって付けているのですか?
佐藤先生
視力検査や問診、見た目での濁りの有無などに加えて、「コントラスト感度検査」を用いています。先ほどの「見え方のコントラスト」の確認です。また、白内障では、水晶体が濁りと一緒に“大きくなる”ことがあります。ともに、変質の一種です。
編集部
若年性白内障ならではの治療方法があるのでしょうか?
佐藤先生
通常の白内障治療と一緒で、人工レンズへ置き換える手術の適応になります。なお、若い方なら本来の視力が出ていたはずなので、多焦点レンズを推奨しています。ピント距離の固定された単焦点レンズだと、手術前との見え方のギャップが大きいでしょう。あるいは、片方の目だけに若年性白内障が起きていたら、正常な目の見え方に合わせます。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
佐藤先生
若年性白内障は、企業内健診で拾いきれないと思います。ですから、まず、ここで説明したようなリスクがあることに気づいてください。また、外傷のように、「いつ、具体的な症状として現れるのかがはっきりしていない」ケースもあります。ヒトが得る情報のうち“8割”は目からです。「1年に1度の眼科健診」という習慣があってもいいのではないでしょうか。白内障は、年齢を問わない病です。
編集部まとめ
総論として、水晶体の白濁は“さまざまなきっかけ”で濁るということなのでしょう。原因は多岐にわたり誰でも100%かかる目の病気だとしたら、防ぐことは難しく感じられます。そこで活用したいのが、目の定期健診です。眼科医が診れば、個別対応は可能でしょう。そして、全般的な底上げ対策として、紫外線対策と食生活の工夫に配慮してみてください。
医院情報
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診療科目 | 眼科 |