生まれたての赤ちゃんにもスキンケアを! 必要な保湿・洗浄・紫外線対策とは
生まれたての赤ちゃんは、もちもちした肌をしています。はたして、卵肌に人工的な化粧品を使ってもいいのでしょうか? 一方で、肌トラブルになりやすいのも赤ちゃんの特徴ですし、悩ましいところです。そこで、どのようなスキンケアが理想的なのか、「Sunnyキッズクリニック」の若林先生に解説してもらいました。
監修医師:
若林 大樹(Sunnyキッズクリニック 院長)
慶應義塾大学医学部・医学研究科卒業。各基幹病院の小児科勤務や慶應義塾大学病院小児科助教を務めた後の2020年、埼玉県川口市に「Sunnyキッズクリニック」開院。子育てサポートという観点から、小児医療を地域に提供している。日本小児科学会認定専門医。日本小児アレルギー学会、日本周産期・新生児医学会の各会員。
赤ちゃんだってヒトである
編集部
いわゆる「赤ちゃん肌」は、スキンケアの理想像として語られがちです。
若林先生
そうかもしれませんね。しかし、赤ちゃんであっても、スキンケアは必要ですよ。とくに、乾燥しがちな冬であれば、化粧水などの水分を入れてから保湿剤でカバーすることが重要です。保湿クリームは使っていても、水分を入れていないという方が多いですよね。
編集部
クリームやベビーオイルでは不十分なのでしょうか?
若林先生
不十分な場合もあります。例えば、乾燥肌のイメージとして「砂漠」を想像してみてください。砂漠のカサカサの砂の上に、そこを覆うようなものを置いても、下の砂はカサカサのままですよね? まずはジョウロで砂に水分を与えて、上から覆わなければ土が潤わないのと一緒で、水分で乾燥という状態を解決してから、クリームなどで保湿するのが正しい順番です。
編集部
赤ちゃんは夏に汗をかいたりオイリーになったりもします。
若林先生
夏に求められるのは、しっかりした洗浄と紫外線対策でしょう。要するに、赤ちゃんといえど、特別な肌質をもっているわけではないということです。日頃の悪影響が“まだ”積み重なっていないだけで、大人と同様のスキンケアが必要です。
編集部
紫外線の話も出ていましたね?
若林先生
はい。赤ちゃんやお子さん用の紫外線防止クリームがありますので、ケースに応じて活用してください。ただし、日光はビタミンDの生成に関わっていますので、むやみに避けるものでもなく、長時間の直射が考えられるときなどにクリームを用いましょう。「日頃のお散歩を控えてください」という意図ではありません。
良かれと思って悪影響をもたらす「自己流」
編集部
赤ちゃんの肌はデリケートなので、「石けんを使うな」という説を見かけます。
若林先生
肌が汚れていたり、オイリーだったりしたら、顔を含め、迷わず石けんを使うべきです。そして、泡をよく洗い流してください。赤ちゃんの「目のキワ」が怖くて洗えないという方もいらっしゃいますが、赤ちゃんは本能的に目を閉じてくれます。また、細かな泡なら、目の中に入っていかないでしょう。ですから、石けんをしっかり泡立てるようにします。
編集部
今までは、水分を含んだガーゼでぬぐっていました。
若林先生
ガーゼは思いのほか、きめが粗いのですよね。かえって摩擦による肌トラブルの原因になりかねないので、石けんを使うのに加え、大人の指で洗ってください。指のほうが、より細かにコントロールしやすいはずです。
編集部
続いて、保湿の方法についてもお願いします。
若林先生
水分を入れることについては先述のとおりです。そのうえで保湿剤を使うのですが、「塗りさえすればなんでもいい」わけではありません。塗りすぎは、汗の出口をふさいでしまうので避けましょう。保湿クリームとワセリンのダブル使いも、かえって悪影響になります。
編集部
「自己流」は、もろもろ間違いを含んでいるかもしれないのですね。
若林先生
そうかもしれません。肌トラブルを起こす前に、ぜひ、小児科へご相談ください。また、肌トラブルを起こした後の塗り薬にしても、使う量ややめ時に関するアドバイスを仰いでおきましょう。よくあるのは、「見た目の治った段階」で塗り薬をやめてしまうパターンですが、まだ、肌の内部で炎症が続いているかもしれません。こうした自己流の判断も控えましょう。
とっさのときのために、「かかりつけ医」をもっておく
編集部
赤ちゃんの肌対策って、産婦人科の通院時代に教わるものだと思っていました。
若林先生
産婦人科の先生にもよりますよね。それに、コロナ禍の影響で受診機会そのものが減っていると思います。もし、お悩みがあって、なおかつ「出産後」のことであれば、小児科が窓口になります。なお、当院では「こどもスキンケア教室」を開催しています。予防という切り口に限らず、発症済みのお子さんに対するお薬の塗り方などもご指導しています。お薬は、処方することが大事ではなく、塗り方をしっかり教えることが当院では大事と考えています。正しい使い方をしないと本来の効果が望めません。
編集部
汚れやバイ菌は、むしろ抱えていたほうが「免疫力を得る」とも聞きます。
若林先生
たしかに説としてあるのでしょうが、だからといって、家の中が汚し放題でいいわけはありません。「自然な環境で遊ぶことを過度に避けるべきではない」のであって、家に帰ったら清潔でいさせてあげましょう。感染症や花粉による皮膚炎の問題もあるので、家の内外は分けて考えるのが適切です。
編集部
総じて、赤ちゃんや子どもでも、大人と同様の肌ケアが必要ということですね?
若林先生
必要です。とくに生後1歳までの乳児は、肌のバリア機能が弱いですから。肌からアレルギー性の物質を取り込んでしまうことも十分に考えられます。しかし、きちんとした肌対策をしていれば、将来のアレルギー性皮膚炎や食物アレルギーのリスクを下げることも可能です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
若林先生
お子さんのスキンケアに関して、総じて言えることと、個別に必要なことがあるはずです。まずは、各種教室などで「総じて言えること」学んでみて、信頼できそうなドクターであれば、「個別に必要なこと」を相談する順番でしょうか。いつでも正しいケアを教えてもらえる「かかりつけ医」がいるとベストです。
編集部まとめ
結論としては、赤ちゃん専用のスキンケア方法があるのではなく、大人と同様のことをしてあげましょう。ただし、「大人と同様のこと」が、自己流で間違っている場合もあります。その一例が、“砂漠にクリーム”なのでした。やはり、身近に専門家がいると理想的です。最寄りの小児科を、発熱や病気のときだけに限らず、よりよい習慣のためにも活用してみてください。
医院情報
所在地 | 〒333-0801 埼玉県川口市戸塚南1-1-5 |
アクセス | 埼玉高速鉄道「戸塚安行駅」徒歩2分 |
診療科目 | 小児科 |