花粉症の症状は漢方薬で改善するのか「自分の体質に合わせた漢方薬の服用が大事」
日本では多くの人が悩まされている「花粉症」。毎年、春先になると鼻がムズムズしたり、目がかゆくなったりする人も多いのではないでしょうか。「代官山パークサイドクリニック」の岡宮先生いわく、つらい花粉症を予防するには漢方薬が効果的とのことです。一体、どのような漢方薬が効くのか教えていただきました。
監修医師:
岡宮 裕(代官山パークサイドクリニック 院長)
杏林大学医学部卒業。慶應義塾大学病院腎臓・内分泌・代謝内科入局。その後、横浜市立市民病院、静岡赤十字病院、練馬総合病院などに勤務。2009年、「代官山パークサイドクリニック」を開院。「体に負担の少ない、一人ひとりに最適な治療」をモットーに、症状やニーズにじっくりと耳を傾けながら診療をおこなっている。
日本人の花粉症患者は増えている
編集部
まず、あらためて花粉症について教えてください。
岡宮先生
※厚生労働省「花粉症の疫学と治療そしてセルフケア」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/ookubo.html
編集部
5人に1人が花粉症なのですね。
岡宮先生
そうなります。とくに最近では、花粉症発症年齢の低年齢化が顕著になっています。つまり、年代が若ければ若くなるほど、花粉症患者の数が増加しているということです。
編集部
現在、花粉症にはどのような治療がおこなわれているのですか?
岡宮先生
医療機関によって治療法は異なります。当院では漢方薬と抗アレルギー薬を組み合わせながら、その人に合わせた治療をおこなっています。
編集部
抗アレルギー薬とはなんでしょうか?
岡宮先生
抗アレルギー薬の代表的なものに、「抗ヒスタミン薬」というものがあります。くしゃみや鼻水など、アレルギーの症状はヒスタミンというアレルギーの原因物質が引き金となって起こります。抗アレルギー薬はこのヒスタミンの作用を抑える薬で、症状の改善を目指します。
編集部
抗アレルギー薬は市販されていますよね。
岡宮先生
たしかに市販されている薬もありますが、医療機関で処方する薬と同じものでも成分量が少ないことがあります。また、抗アレルギー薬とひとくちに言っても様々な種類があり、自分の体に合う薬を見つけるのは困難だと思います。とくに、薬によっては強い眠気を招くものもあり、仕事や運転の妨げになることもあります。
編集部
なるほど。医師に相談して処方してもらった方がよさそうですね。
岡宮先生
そうですね。花粉症の薬は2~3カ月間、飲み続けるものですから、自分のライフスタイルや症状に合ったものを選ぶことが大事です。そのため、市販されている薬を選ぶのではなく、医師に処方してもらうことが大切になります。
漢方薬による花粉症治療
編集部
一方で、花粉症治療には漢方薬も用いられるのですね。
岡宮先生
はい。漢方薬は自然の植物などを原料にして作られています。そのため、一般的な抗アレルギー薬とは違って、服用後に眠気や口腔内の乾燥などを起こしにくいことが特徴です。また、自分にぴったり合った漢方薬を服用すると、花粉症が改善するだけでなく、ほかの症状にも効果を発揮することがあります。
編集部
「漢方薬は即効性がない」というイメージがあります。
岡宮先生
たしかに「漢方薬は長く飲まなければ効かない」という人がいるのですが、それは正確ではありません。むしろ漢方薬は、自分にぴったり合った薬を適切に使えば、スムーズに症状を抑えることができるのです。
編集部
花粉症治療に用いられる漢方薬には、どのようなものがあるのですか?
岡宮先生
前提として、漢方薬を処方する前に、どのような症状に悩まされているかを知る必要があります。そのうえで、例えば水のような鼻水がだらだらと流れ続けるときには、「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」という漢方薬がおすすめです。これは、水のような鼻水や痰(たん)、くしゃみ、鼻づまり、咳などに幅広く効くので、花粉症だけでなく、風邪やほかのアレルギー性鼻炎などでも多く用いられています。
編集部
ほかには、どのような漢方薬を用いるのでしょうか?
岡宮先生
花粉症の主症状が鼻づまりである場合は、「葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」を用います。葛根湯といえば、風邪薬でお馴染みの薬ですよね。さらに生薬を加えてつくられている葛根湯加川芎辛夷は、鼻づまりを解消する効果が期待できます。
自分にぴったり合った薬を選ぶことが大切
編集部
症状によって漢方薬を使い分けるのですね。
岡宮先生
そうです。漢方薬は現在、薬局やドラッグストアなどで市販されていますが、漢方の専門医に自分の体質に合った漢方薬を処方してもらうといいでしょう。
編集部
自分の体質に合ったものを使用するのが大事なのですね。
岡宮先生
はい。例えば、水のような鼻水が出るという場合でも、本人の体質によって使用する漢方薬が異なります。体力が平均的であれば、先ほどお話しした小青竜湯を用いますが、体力がなかったり胃が虚弱だったり、不整脈など循環器の問題を抱えていたりする場合には「苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)」を用いることがあります。このように、その人の体調や状態を見ながら漢方薬を処方していきます。
編集部
漢方薬の治療は保険が適用になるのですか?
岡宮先生
医療機関によって異なりますが、保険診療の範囲内で漢方を処方しているクリニックもあります。興味がある人は、漢方内科など漢方を扱っているクリニックを探してみるといいのではないでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
岡宮先生
花粉症で悩んでいる人は非常に多く、薬を服用している人も少なくありません。しかし、多くの人が「薬を飲むとボーッとする」「眠くなる」などの副作用に悩んでおり、仕事や勉強の妨げになっています。そういう人にこそ、ぜひ漢方薬を試してほしいと思います。漢方薬は抗アレルギー薬と併用することもでき、双方の弱点を補うことができます。例えば、漢方薬で目のかゆみを抑えるのは困難ですが、点眼剤を使えばすぐに症状を解消できます。このように、自分の症状やライフスタイル、仕事内容などを考慮して、一人ひとりに適した薬を調合するのが、花粉症治療では大切です。ぜひ、つらい症状に悩んでいる人は、抗アレルギー薬だけでなく、漢方薬による治療も検討してみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
花粉症は漢方薬でも改善できるとのことでした。ただし、市販品の薬だと自分の体に合わず、効果が得られない場合があるため、医師に処方してもらうようにしましょう。また、漢方薬というと、自費治療というイメージがあるかもしれませんが、保険が適用になる医療機関もあるとのことでした。興味のある人は、ぜひ調べてみてください。
医院情報
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アクセス | 東急東横線「代官山駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 内科、漢方内科 |