専門看護師と認定看護師の違いを現役看護教員が解説 資格取得に必要なものとは?
看護師資格を取得後、キャリアアップの目標として掲げられることの多いのが「専門看護師」と「認定看護師」です。どちらも看護のプロと言われるほど、看護の専門性を高めた資格です。一方で、資格名を聞いただけでは、それぞれの資格の仕事内容や求められる役割の違いはイメージしづらいのではないでしょうか。今回は、そんな資格について「看護師」の中島さんに話を伺いました。
監修:
中島 卓也(看護師)
日本赤十字九州国際看護大学看護科卒業。大学卒業後、福岡・山口県の病院で手術室看護師として10年間勤務。現在は看護教員として今までの経験をもとに、看護師の育成に従事。「基本に忠実に」をモットーにライティングや教育を通して、一般の人や学生に医療や看護をわかりやすく伝える活動に努めている。
専門看護師と認定看護師の違いを説明
編集部
まず、「専門看護師」について教えてください。
中島さん
専門看護師はCNS(Certified Nurse Specialist)とも呼ばれ、特定分野で解決が困難な健康上の問題を抱えている患者やその家族、集団に対して高水準の看護の提供を目的とした資格になります。
編集部
「認定看護師」についてもお願いします。
中島さん
認定看護師はCN(Certified Nurse)とも呼ばれ、特定分野において熟練した看護技術・知識に基づいた、高水準の看護の実践を目的とした資格になります。
編集部
特定分野って何ですか? それぞれの資格で違いはあるのでしょうか?
中島さん
専門看護師と認定看護師のどちらの資格も特定分野が求められ、資格取得を目指す段階で決める必要があります。専門看護師の特定分野は「小児看護」「在宅看護」「精神看護」など13分野があります。認定看護師は、2020年から特定認定看護師教育課程へ移行となり、それに伴って特定分野が19分野になりました。専門看護師に比べ分野が細分化されており、「感染管理」「新生児集中ケア」「手術看護」など19の特定分野があります。
専門看護師と認定看護師の役割の違い
編集部
専門看護師の実際の仕事ってどんな感じなのでしょうか?
中島さん
専門看護師は高度な知識と技術によって、現場の人材育成だけでなく病院外の保健医療福祉の発展など幅広い分野での活躍が期待されます。また、近年倫理的価値観などが関係した解決の難しい健康問題を抱えた患者は少なくありません。専門看護師はそういった人々に対して、地域との連携や医師を含めたチームで問題解決に取り組み、解決を目指すといった役割を担っています。このように、看護分野の全般に関わっていく専門看護師は「看護のスペシャリスト」と言えるでしょう。
編集部
認定看護師についても教えてください。
中島さん
認定看護師は一般の看護師の模範となるような臨床業務を実践し、看護師への指導や相談に応じる役割を担っています。専門看護師が、患者以外にも家族や集団を含めた全体に働きかけるのに対し認定看護師は患者本人に働きかけるのが主な違いになります。現場が主な活動場所となる認定看護師は、まさに「現場のスペシャリスト」と言えます。
編集部
どういう人が向いているのでしょうか?
中島さん
専門看護師に向いているのは、次のような方たちです。
・患者だけでなく、家族や地域の健康問題を抱える集団にも関わりたい。
・退院後も質の高い看護を受けられる手助けをしたい。
・看護研究を通して理論的に現状の問題を解決したい。
このように、看護の広く深い知識を活かした幅広い活動をしたい方に向いています。一方で、認定看護師に向いているのは、次のような方たちです。
・自分の興味のある分野を深く掘り下げ、スペシャリストになりたい。
・現場の看護師の指導・育成に興味がある。
・特定分野で患者に質の高い看護を実践したい。
専門看護師に比べ、現場で自分の能力を最大限発揮したい人に向いています。
専門看護師や認定看護師になれる条件の違い
編集部
専門看護師になるにはどうしたらいいのでしょうか?
中島さん
看護師としての実務経験が5年以上で、そのうち3年以上は選択した特定分野での勤務経験が必要となります。そのうえで、看護系大学院の修士課程で単位を取得すると、認定審査を受けられるようになります。また、大学院での教育を受けるためには大学を卒業している必要があり、専門学校などを卒業して看護師になった場合、「通信制の大学で学位を取得する」「専門学校卒でも受験可能な大学院の審査を受ける」のいずれかの必要があります。その後、認定審査に合格すれば専門看護師の資格を取得できます。さらに、資格取得後は5年ごとの更新審査を受けることが義務付けられています。
編集部
認定看護師についても教えてください。
中島さん
実務経験が5年以上で、そのうち3年以上は選択した特定分野での勤務という点は専門看護師と同じですが、大学院で教育課程を修了する必要はありません。その代わり、認定看護師の教育機関で定められたカリキュラムの修了が条件となっています。カリキュラム修了後、認定試験に合格すれば認定看護師の資格取得となります。また、認定看護師も専門看護師同様、資格の取得後5年ごとに更新審査を受ける必要があります。
編集部
資格取得後のメリット・デメリットはありますか?
中島さん
どちらの資格も、自分の持っている高度な知識や技術を病院やスタッフに還元するという役割を担っています。そのため、教えるのが好きな人や自分の力で環境を改善したい人にとって、資格取得は説得力や指導機会が増えるといった点でメリットを実感できると思います。一方、デメリットとしては資格の取得には費用が相応にかかる点が挙げられます。各教育機関の学費や交通費など、現在の収入が少なくなる上に費用がかかるわけですから、経済的な負担は避けられません。
編集部
資格取得後の給与やキャリアアップについて教えてください。
中島さん
資格取得後の待遇ですが、これは職場がどの程度資格を重要視しているかが関係してきます。重要視している職場であれば、給与アップや昇進に繋がりますが、重要視していない職場では必ずしもキャリアアップに繋がるとは限りません。そのため、資格取得を目指す前に現在の職場が、どの程度専門看護師や認定看護師を重要視しているのかを知っておくと良いでしょう。また、活躍する場を用意してもらえるのかといったことの確認も大切です。
編集部
最後に、読者にメッセージがあればお願いします。
中島さん
専門看護師や認定看護師は、現在の看護業界において一目を置かれる存在であることは間違いありません。今よりもっと自分の仕事の幅を広げ、キャリアアップしたい人は目指す価値が十分にある資格です。
編集部まとめ
専門看護師と認定看護師は、役割や特定分野に違いがあり、それに伴って主な活躍の場も異なることが分かりました。専門看護師と認定看護師の資格の違いをしっかりと理解し、自分のキャリアビジョンに適した資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。