マンガに出てきそうな「体外衝撃波治療」とは? スポーツのケガなど短期間で治すことも
スポーツなどによるケガも短期間で治療ができる最新の治療法で、一見、漫画の技名のような響きの「体外衝撃波治療」。簡単に言うと、患部に衝撃波を当てることで、痛みを軽減させる疼痛治療だそうです。いったい、どのようにして治療が行われるのでしょうか。六本木整形外科内科クリニックの前田先生に教えてもらいました。
監修医師:
前田 真吾(六本木整形外科内科クリニック 院長)
2008年聖マリアンナ医科大学卒業。聖マリアンナ医科大学病院整形外科学講座入局。同病院勤務、横浜市スポーツ医科学センターにて研鑽を積む。2018年より東京ひざ関節症クリニック銀座院勤務を経て2020年に六本木整形外科・内科クリニックを開院。自身のケガの経験から、「痛みでスポーツをあきらめる人を一人でもなくしたい」という強い信念をもち、「ありがとう」「来てよかった」と言われるクリニックをめざす。
衝撃波でケガを治す、画期的な治療法
編集部
体外衝撃波治療とはなんですか?
前田先生
簡単にいえば、患部に衝撃波を当てて治療する方法のことをいいます。整形外科の分野では、比較的新しく導入されている治療法です。
編集部
そもそも衝撃波とはなんですか?
前田先生
衝撃波とは、高出力の圧力波のことをいいます。たとえば、すぐ近くで大きな打ち上げ花火が上がったら、ドーンという大音響とともに、空気の圧を感じますよね。これが、衝撃波です。
編集部
もう少し詳しく、衝撃波について教えてください。
前田先生
私たちの生活の身近にあるものに音波があります。声や音が耳に届く速度のことで、波形を描いて耳に届きます。衝撃波も音波と同じく波形を描いて体に届くのですが、衝撃波はこの音波のスピードよりも速く届き、しかも、減速しにくいという特徴があります。治療では皮膚の上からこの衝撃波を患部にあて、痛みを軽減したり、組織を修復したりします。
編集部
衝撃波を患部に当てると、どうなるのですか?
前田先生
たとえば、痛みを感じさせている自由神経終末(刺激を受容するための神経線維の末端)を減少したり、中枢神経への痛みの伝導を抑制したりすることで、痛みを取り除く効果が期待できます。また、新しい血管が作られるのを促したり、血流を改善したりして、自己治癒力を上げることができます。衝撃波は水分を多く含む脂肪や筋肉は通過して、体の深部へダイレクトに届きます。そして、痛みを感じさせている神経の終末部を減少して、痛みを伝える物質を少なくするからです。
体外衝撃波はどんな治療に有効?
編集部
衝撃波による治療は、どのようなケガに有効なのですか?
前田先生
体外衝撃波治療は1980年代、腎臓結石や尿管結石などに対する治療法として用いられたのがはじまりです。体内にできた結石に衝撃波を照射することで、開腹手術などを行わなくても、結石を粉砕することができるとして、多くのケースで採用されてきました。
編集部
それが、整形外科でも用いられるようになったのですね。
前田先生
そうです。最近では結石を粉砕する際の10%程度の出力で、足底腱膜炎や腱付着部炎など、痛みを伴う疾患を中心に用いられています。欧米では広く普及しており、スポーツ選手が抱えやすいテニス肘、ジャンパー膝、アキレス腱炎などさまざまな疾患に対して用いられています。
編集部
治療効果はどうですか?
前田先生
日本ではあまりメジャーではない治療法ですが、大きな効果が認められています。個人差はあるものの、研究によると60〜80%の人に治療効果があるとされています。
編集部
日本では保険が適用になるのですか?
前田先生
平成27年(2015年)4月に難治性足底腱膜炎に対してのみ、保険適用となりました。それ以外は自由診療となるので、もし、治療を考えている場合は、体外衝撃波の治療実績があるクリニックにお問い合わせください。
体外衝撃波治療の流れ
編集部
体外衝撃波治療はどのように行われるのですか?
前田先生
まずは、障害のある部位を正確に特定するため、超音波エコー検査を行います。その後、専用の機器により照射をはじめます。最初は低レベルの照射からはじめ、様子をみながら少しずつ出力を上げていきます。一定のショット数を照射したら、治療は終了です。
編集部
治療時間はどれくらいですか?
前田先生
一回の治療時間は10分前後。2〜3回治療を受けていただくことで、効果が現れてきます。
編集部
治療では痛みがあるのでしょうか?
前田先生
衝撃波を当てる方法にもよりますが、痛みを伴うことがあります。そのため、最初は痛みを感じない程度の低出力からはじめ、少しずつ様子をみながら出力を上げていきます。
編集部
治療で麻酔は使うのですか?
前田先生
基本的に、麻酔は使いません。椅子に座った状態、または、ベッドに横たわった状態で治療を行います。
編集部
治療後に傷跡などが残る心配はありますか?
前田先生
いいえ、傷跡は残りません。まれに皮下出血が起こったり、皮膚が赤くなったりすることはありますが、基本的に副作用はないので安心してください。
編集部
治療を受ける際の注意点はありますか?
前田先生
まだ体外衝撃波治療を行っている医療機関はそれほど多くないため、もし治療を考えている場合は、きちんと治療実績のある医療機関を探しましょう。
編集部
欧米ではメジャーな治療法なのですか?
前田先生
欧米ではスポーツ選手をはじめ、多くの人が受けている最新の治療法です。施術後はすぐに歩行もできますし、スポーツを行うことも可能です。治療を行う際に若干の痛みはありますが、ケガに悩んでいる方は、ぜひ、体外衝撃波治療を試してみると良いと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
前田先生
体外衝撃波治療は、肩こりなど日常的な痛みから、テニス肘やゴルフ肘などスポーツによる損傷まで、幅広く対応可能です。当院で治療を受けられる患者さんは、テニス肘やゴルフ肘、足底腱膜炎で悩んでいる方が多いですね。ほかの治療法に比べて回復が早く、治療効果が現れやすいのが、体外衝撃波治療の特徴です。ほかの治療法を試しているけれどなかなか良くならないという方は、ぜひ一度、ご相談ください。
編集部まとめ
衝撃波を当てることでケガを治療する画期的な治療法「体外衝撃波治療」。まだ新しい治療法のため、地域によっては行っている医療機関が見つからないということもあるかもしれません。もし興味がある方はインターネットなどで検索してみると良いでしょう。治療を受ける場合は、きちんと治療実績があり、信頼のおける医療機関を探すことが大切です。
医院情報
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診療科目 | 整形外科、スポーツ整形外科、小児整形外科、リハビリテーション、内科、ペインクリニック内科 |