「手足口病」ってどんな病気? 症状・原因・予防法を医師が解説
「手足口病」という名前の病気を聞いたことがありますか? 実は、子どもがかかりやすい「三大夏かぜ」の1つとされ、2021年秋には季節外れに流行したことでも話題になりました。一体、手足口病とは、どのような病気なのでしょうか。また、どのように予防すればいいのかも気になるところです。今回は、「グローバルヘルスケアクリニック」の水野先生に教えていただきました。
監修医師:
水野 泰孝(グローバルヘルスケアクリニック 院長)
東京慈恵会医科大学大学院(小児科学)修了。タイ王国マヒドン大学熱帯医学部留学、在ベトナム日本大使館医務官、国立国際医療研究センター厚生労働技官、東京医科大学准教授・同大学病院大学病院感染症科診療科長などを歴任し、2019年より現職。日本感染症学会認定専門医・日本小児科学会認定専門医・日本アレルギー学会認定専門医。専門は熱帯医学・渡航医学・予防接種。
「手足口病」とは?
編集部
手足口病とはなんですか?
水野先生
その名の通り、手や足、口内に水ぶくれや発疹ができる病気です。夏に流行することが多く、「ヘルパンギーナ」と「プール熱(咽頭結膜熱)」とともに、三大夏かぜの1つに位置づけられています。
編集部
手足口病の原因はなんですか?
水野先生
手足口病は感染症の一種なので、ウイルスに感染することで発症します。主な感染経路は飛沫感染で、咳やくしゃみなどに含まれるウイルスが気道や目の粘膜から体内に侵入することによって発症します。そのほか、患者の唾液や体液、排泄物などに触れることで感染する「接触感染」によって、手足口病を発症することもあります。また、家族内感染も多く、特に、最初に子どもが感染し、一緒に遊んでいる間に親も感染するというケースもあります。
編集部
近年、患者数は増えているのですか?
水野先生
日本では2019年に大流行しましたが、2020年には新型コロナウイルスの影響で、普段から手洗いをおこなう習慣が根付いていたこともあり、過去最低の水準でした。しかし、2021年秋には再び患者数が増加し、注意喚起をする自治体も増えています。
手足口病の症状
編集部
手足口病になると、どのような症状が現れるのですか?
水野先生
手のひらや足の裏、足の甲、口の中などに2~3mmの水ぶくれや発疹が出ます。また、赤ちゃんの場合はお尻に発疹ができたり、発熱がみられたりするケースもあります。なお、3~5日ほどの潜伏期間があるので、感染してすぐに症状が出るわけではありません。
編集部
発疹はどれくらいできるのですか?
水野先生
場合によります。たくさんできる人もいますし、1~2個で済む場合もあります。また、発疹ができる場所も手のひらだけという人もいれば、足の裏や甲、口内などまで出てくる人もいます。
編集部
手足口病は自然治癒するのでしょうか?
水野先生
大半が自然に治ります。軽症であることがほとんどで、発疹は3~7日で消失します。ただし、稀に急性脳炎や髄膜炎、心筋炎などの合併症を引き起こすこともあります。
編集部
合併症が起こることもあるのですね。
水野先生
はい。それから、喉や舌に粘膜疹が現れることもあり痛みが出ることがあります。その結果、食欲不振になったり、脱水症状を引き起こしたりすることもあります。
編集部
主に、どのような年代が手足口病にかかりやすいのですか?
水野先生
手足口病罹患(りかん)者の約90%は5歳以下と言われていますが、大人でも発症することがあります。そして、小児に比べて大人が発症すると、重症化しやすいので注意が必要です。また、足裏の発疹の痛みがひどく、歩けなくなるという場合もありますし、全身の倦怠感や悪寒、関節痛などを発症することもあります。ひどい場合は心筋炎を起こすこともあるので、発疹などの症状がみられたら、早めに医師の診断を受けましょう。
手足口病の予防法
編集部
手足口病を予防するには、どうしたらいいのでしょうか?
水野先生
手洗いや咳エチケットを徹底することが重要です。気をつけたいのは、症状が落ち着いた後も、しばらくは排泄物中にウイルスが混ざっているということです。そのため、用を足した後は、石鹸でしっかり手を洗うようにしましょう。また、ほかの人とタオルを共有するのは、感染リスクがあるので控えてください。
編集部
治っても、しばらくは気をつけた方がいいのですね。
水野先生
はい。そして、とくに気をつけてほしいのが赤ちゃんの感染です。赤ちゃんが感染すると、おむつに排泄物がつき、それを処理する親が感染してしまうケースがよくあります。おむつを処理したあとは入念に手を洗うようにしましょう。
編集部
手足口病の予防薬やワクチンはあるのですか?
水野先生
現在のところ、予防薬やワクチンはありません。手足口病に対する特別な治療法は確立されていないため、症状に応じた治療をおこなうことになります。発疹が痛い場合は塗り薬で対処しますし、熱が辛ければ解熱剤を使ったり、口内炎が痛ければ点滴をしたりすることもあります。重症化するケースは少なく、だいたいは軽症で完治するので、それほど心配しなくても大丈夫です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
水野先生
手足口病は夏かぜの1つです。重症化するリスクはそれほど高くないので、あまり不安にならないでいただきたいと思います。感染が拡大しやすいのは夏と言われていますが、季節に関係なく感染が広がることもあります。また、保育園や幼稚園、学校などで集団生活を送っている子どもは、1人が感染すると次々にうつりやすいので、症状に気づいたら早めに診察を受けましょう。もちろん、普段から手洗いなど衛生管理を徹底しておくことも必要です。
編集部まとめ
今回の手足口病に限らず、昨今は新型コロナウイルスの影響で、多くの人が感染症に対して敏感になっていると思います。普段から手洗いや咳エチケットを徹底するのはいいことですが、必要以上に心配する必要はありません。「当たり前の衛生管理をきちんとする」ことで多くの感染症は防ぐことができます。あまり不安に感じたり、過度に心配したりしないようにしましょう。
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