家族が突然車いす生活に…バリアフリー対応にまず必要な住宅改修のポイントを知る
高齢化社会が問題視されるなか、そう遠くない未来に自分の親が車いすの生活を余儀なくされる可能性もありますし、ケガや交通事故、災害などいつ不測の事態が生じるか分かりません。その場合、車いすでの在宅生活に向けて、どのようなことを確認しながらバリアフリー化を検討すればいいのでしょうか? 自宅のバリアフリー化について「作業療法士」の高瀬さんにお話を伺いました。
監修:
高瀬 駿(作業療法士)
北里大学卒業後、医療機関に従事し、急性期、回復期などの地域でのリハビリ業務につとめる。ほか、小児分野のリハビリや講習会運営にも参加。これらの経験を通して、根拠のある情報をモットーに、リハビリに関するコラムなどの発信活動を行う。
バリアフリー化のポイント
編集部
同居している家族が車いすでの生活になった場合、これからの生活に向けて自宅のどこを確認すればいいのでしょうか?
高瀬さん
確認すべき場所は2つあります。まず、「車いすが入る玄関の幅」と「車いすで室内を移動できるスペース」です。これらが整備できない場合、誰かが抱えて移動したり、本人が這って移動したりしないといけない事態が起こり得ます。共同住宅などでは、玄関の構造が狭い傾向にあるため、注意が必要です。
編集部
確認するポイントを教えてください。
高瀬さん
まず、自宅の玄関扉や廊下の横幅を調べる必要があります。一般的に介助用車いすは横幅78cm程度、自走用の車いすは横幅85cm程度あれば通ることが可能です。
編集部
ポイントを確認できたら、次に何をすればいいのでしょうか?
高瀬さん
次はリハビリの専門家に、自宅で車いすの使用が可能かどうかの確認が必要です。
玄関のバリアフリー化のポイント
編集部
玄関で確認するポイントはほかにもありますか?
高瀬さん
「段差の有無」です。車いすでの出入りは段差があると、不自由を感じる場面が多くなってしまいます。
編集部
玄関の外に段差がある場合、どうしたらいいのでしょうか?
高瀬さん
玄関の外に段差があるときは、車いすが玄関に入りやすいように、車いす用スロープの設置を検討する必要があります。また、複数の段差がある場合は、スロープのほかに段差を補助する昇降機を取り付けるなどの選択肢もあります。どちらも取り付けるスペースや費用の問題が生じるため、玄関の外に段差がある場合は福祉用具業者などの専門家に相談することをお勧めします。
編集部
玄関の中の段差がある場合、どうしたらいいのでしょうか?
高瀬さん
日本の住居には、玄関の中に「上り框(かまち)」と呼ばれる段差があります。靴を脱いだ後に乗り越える段差ですが、この上り框の高さを確認する必要があります。上り框の高さがあまりない場合は、段差を平らにする住宅改修を比較的簡単にできる可能性があります。しかし、築年数の古い日本家屋は、この上り框が数十cmある場合や、複数の段差がある場合が多くあります。このような状況では、自宅内にもスロープや昇降機を取り付ける可能性がでてきます。住宅改修の可否に関しては、専門家に相談して検討する必要があります。
室内のバリアフリー化のポイント
編集部
室内で確認するポイントは、「車いすで室内を移動できるスペース」以外にもありますか?
高瀬さん
ポイントは2つ、「段差の有無」と「ドアの開閉が可能か」になります。
編集部
段差の確認は、どうして必要なのでしょうか?
高瀬さん
室内にある数cmの段差1つで、車いすの移動が制限されることがあります。部屋の入口、トイレの入口、お風呂の入口などに段差がないか確認をしてください。これらの段差は住宅改修で無くすなどの対応が可能です。また、カーペットや電源コードなども車いすの移動を制限してしまいます。移動場所にこのような物がないか、入念に確認しましょう。
編集部
ドアの開閉の確認についても、教えてください。
高瀬さん
扉の開閉する方向を変更する、引き戸への改修をするなどの検討が必要になります。車いすで室内を移動する際、ドアの開閉が難しかったり、開き戸の場合は車いすが動けるスペースがなくなってしまったりするためです。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
高瀬さん
今回紹介したポイントは最低限のもので、実際に車いすで過ごすとなるとほかにも様々な困り事がでてきます。また、対応策も環境や車いす利用者の状態に応じて様々です。紹介例を参考に、福祉用具業者やリハビリの専門家に相談し、個々に適した対応策を模索していく必要があります。相談の際には自宅内の写真や見取り図を用意しておくと、よりスムーズに話し合うことができます。車いすでの生活が必要になった際には、ケアマネージャーを含めた専門家への相談を積極的にご検討ください。
編集部まとめ
自宅のバリアフリー化を検討する際に、最初に確認すべきポイントについて知ることができました。家族だけで検討するのには限界があるため、今回の情報を参考にしながら専門家に積極的に相談して対策を行うことが、快適なバリアフリー対応の住宅改修には重要です。