入院する時、大部屋・小部屋どっちがおすすめですか?
病室には大部屋と小部屋があり、それぞれ設備や料金などが異なります。今回は、入院する時には大部屋と小部屋のどちらがおすすめか、「看護師」の小笠原さんに伺いました。
監修:
小笠原 あゆ美(看護師)
弘前大学医学部保健学科看護学部卒業。大学卒業後は都内病院にて3年間勤務し、整形外科・眼科の手術介助や、外来患者の看護に従事する。夫の転勤で海外に在住する現在は、ライターとして医療記事などを多数執筆中。
大部屋のメリットは料金の安さ
編集部
病室には大部屋と小部屋がありますが、両者はどのように違うのでしょうか?
小笠原さん
一般的に、大部屋というのは6~8人部屋を指します。日本では患者1人あたりの床面積は6.4㎡以上と定められており、大体1人6.4㎡の床面積になるよう配分されているのが大部屋です。一方の小部屋は1~4人部屋の病室で、1人当たりの床面積も6.4㎡より広くなっています。床面積が広いのはもちろん、部屋全体の日当たりの良さや、シャワー室やトイレなどの設備が充実しているのが特徴です。ただ、小部屋は『差額ベッド代』という追加料金がかかるので、どうしても料金が高くなるというデメリットがあります。
編集部
患者側が大部屋か小部屋かを選ぶことはできますか?
小笠原さん
申請をしなければ大部屋になることが多いですが、ベッドに空きがあれば小部屋を選ぶことも可能です。空きがないこともありますが、その場合は空き次第移動させてくれることもあります。入院時には看護師や看護助手がベッドを準備しなければならないので、希望がある場合は入院前に伝えておくとよいでしょう。
編集部
大部屋と小部屋のどちらがおすすめですか?
小笠原さん
予算に余裕があり、快適さを重視するのであれば、小部屋をおすすめします。やはり小部屋はプライバシーが確保しやすく、ほかの方の生活音も少ないので、快適に過ごしやすいようです。一方で、特に個室の場合は寂しさを感じやすいという面もあります。大部屋の患者さんの中には、ほかの患者さんとの交流を楽しんでいる方も多いですね。出費を抑えたい方や、人とのコミュニケーションを楽しみたい方には、大部屋をおすすめします。
小部屋は過ごしやすい一方で費用がネック
編集部
小部屋の場合、料金はどれぐらいかかるのでしょうか?
小笠原さん
差額ベッド代は1日単位で加算され、その額は病院によって異なります。平均的には大体個室で7000円/日、2人部屋で3000円/日、3人部屋で2800円/日、4人部屋で2500円/日あたりが目安のようです。設備が充実していて食事も豪華な病院は、さらに高額ということもあります。入院日数が増えれば増えるほど高くなってしまうので、小部屋を希望する場合は必ず病院に料金を確認しましょう。
編集部
差額ベッド代を節約する方法はありませんか?
小笠原さん
差額ベッド代は健康保険の対象外なので、基本的には全て自己負担です。医療控除の対象にもなりません。ただ、民間の医療保険に入っていれば、差額ベッド代を含む入院費の節約が可能です。例えば1日の入院につき5000円の保険料が支給される場合、保険料を使って差額ベッド代を補えることもあります。ぜひ、ご自身が入っている保険内容を確認してみださい。
編集部
本人が希望していないのに小部屋になることもあるのでしょうか?
小笠原さん
大部屋のベッドに空きがない時は、小部屋になることがあります。この場合によく聞かれるのが、本人の意志ではないのに差額ベッド代を請求されるというトラブルです。このような事態を避けるには、入院同意書をよく読むことが大切です。同意書に差額ベッド代について記載があった場合、サインをした時点で「差額ベッド代にも了承した」とみなされてしまいます。不要な争いを避けるには、同意書をしっかり読み、病院側にも説明を求めるようにしましょう。差額ベッド代がかかる場合は同意書にはサインしない、もしくは自分には請求をしないという旨を加筆してもらうことをおすすめします。
大部屋に入院する際は、トラブルに注意
編集部
大部屋では、やはり患者同士のトラブルはありますか?
小笠原さん
トラブルはやはりありますね。頻繁ではないものの、やはり人と人との共同生活なので、たまに入院患者さんから相談があるというのは事実です。特に多いのはいびきや騒音などのトラブルです。同室の患者さんのいびきがうるさくて眠れない、ゲームや音楽がうるさいといった苦情がよく聞かれます。ほかには自分のものがなくなったという方もたまにいらっしゃいます。自分で紛失した可能性もありますが、よく知らない人と共同生活をしているので、残念ながら盗難の可能性も無いとは言えません。
編集部
トラブルを避けるためには、何に気を付けたらいいのでしょうか?
小笠原さん
入院前に準備をして、ある程度の対策を打っておくのがおすすめです。トラブルが発生するとどうしても相手を悪く考えてしまいますが、相手が変わることはそうそうありません。もちろん相談があれば看護師などのスタッフからご本人に注意をしますが、どこまで改善するかはご本人次第というのが実際のところです。状況の悪化を避けるためにも、耳栓を持参し騒音対策をしておく、どうしても必要という場合以外は貴重品を持ち込まないなどといった準備をしておきましょう。
編集部
これから入院する方に何かアドバイスはありますか?
小笠原さん
大部屋のトラブルについてお話ししたので不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際はほかの方とのコミュニケーションを楽しんでいる方も多いようです。小部屋も大部屋も一長一短なので、ご予算や好みに合わせて病院にご相談いただければと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
小笠原さん
病院は家とは違う環境なので、完全に快適な生活というのは難しいかもしれません。ですが、もし何か問題があればスタッフが連携してサポートも可能です。場合によっては病室の移動ができることもあるので、気になることがあれば気軽に看護師などに相談してみてください。
編集部まとめ
病室には大きく分けて大部屋と小部屋の2種類があります。基本的には快適に過ごせる小部屋がおすすめですが、費用を抑えたい方やほかの方との交流を楽しみたい方には大部屋がおすすめです。ご予算や好みに合わせて選んでみてくださいね。