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~実録・闘病体験記~ 「なまけ者」「仮病」と言われ続けた私の線維筋痛症

 更新日:2023/03/27
~実録・闘病体験記~ 「なまけ者」「仮病」と言われ続けた私の線維筋痛症

「見た目は健康そうに見えますが、実は365日24時間、体のいたる所に痛みがあるんです」。線維筋痛症を患う石川多都子さんは現在、つらい痛みとの付き合い方を憶え、痛みをうまくコントロールしながら生活しています。しかしながら、その苦労に対して、周りの人からの心ない言葉、病気への理解を得られない環境など、難しいことはたくさんあったそうです。そんな「線維筋痛症」の体験を語ってもらいました。

石川さん

体験者プロフィール
石川 多都子

プロフィールをもっと見る

沖縄県宮古島市在住、1964年生まれ。3人の子ども達は独立し、現在は再婚相手の主人と愛犬3匹との生活。診断時は主婦。2009年に線維筋痛症と診断される。現在は県内の病院を受診し、飲み薬とリハビリ治療をおこなっている。趣味はシュノーケリングやSAORI織りなど。ドライフラワーを楽しみながら過ごす毎日。

村上 友太

記事監修医師
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

原因不明の痛みの病名がようやく判明

原因不明の痛みの病名がようやく判明

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

石川さん石川さん

1998年に中絶手術をしたとき、病院側のミスがあって、その後1年近く、熱と右足の付け根の激痛に苦しめられるようになりました。階段の上り下りすらできなくなっていましたし、会社にも行けなくなり、休職することになりました。その後は産婦人科、内科、整形外科、外科、心療内科、ペインクリニック科を受診し採血検査、CT検査、MRI検査などを受けたものの、異常が見つからず。結局、原因不明と言われ、薬物療法とリハビリで様子を見ることに。それでも痛みが引かなかったのですが、2009年に大学病院の心療内科を受診し検査したところ、「線維筋痛症」と診断されました。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

石川さん石川さん

投薬治療とリハビリを行っていくと言われました。当時飲んでいたお薬は覚えていないのですが、現在は1日2回薬を服用しています。リハビリは整形外科に通い、全身のほぐしを中心におこなっています。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

石川さん石川さん

「ようやく病名が判明した」と思いました。原因不明なため、「なまけ者」「言っていることがちぐはぐ」「仮病」などと、病院や家族、周りから言われ続けていたので、ようやく病名が判明し、自分に合った薬に巡り合えたことが嬉しかったですね。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

石川さん石川さん

診断されてから、1年半後には地元の宮古島に病院を移しました。発症後は、とにかく全身の痛みで起き上がるのもやっとの状態で家事もできず、仕事も休み、ほとんどが布団の中で痛みに耐える生活を送っていました。

一人では抱え込まずに頼ることにしてもいいんだよ

一人では抱え込まずに頼ることにしてもいいんだよ

編集部編集部

痛みのコントロールはどのようにおこなっていますか?

石川さん石川さん

今診てもらっている先生に出会い、薬だけではなく自分でできるストレッチのやり方や腹式呼吸、お風呂の入り方など、いろいろな方法を教わりながら痛みのコントロールができるようになりました。今の医療では線維筋痛症を治せないという話も聞きました。しかし、マッサージや温泉や浴槽につかるなど、薬だけではなく、ほかの方法で痛みを緩和できる方法があることを、医療現場から発信できれば救われる患者は少なくないと思います。

編集部編集部

治療中に、心の支えなどはありましたか?

石川さん石川さん

愛犬と遊んでいるときが癒しで、心の支えです。また、以前の自分に声をかけるなら、「なんでも自分一人で抱え込まず誰かに頼ることをしていいんだよ」と言ってあげたいですね。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

石川さん石川さん

現在は痛みのコントロールがうまくできていて、救急搬送されることも減りました。身体障害者2級の手帳を取得し、要介護3級の認定も受けています。1日2回の家事援助と身体介護のヘルパーをお願いしています。また、オーダーで車椅子を作ることもできました。介護ベット、手すり、杖などの福祉用具をレンタルし、主人とスーパーまで出かけるのが日課になっています。かつて自殺未遂を繰り返した時期もありましたが、今は夫との時間を大切にしながら、夫婦2人で痛みと共存して生活しています。

病気への理解がある人が増える世の中に

病気への理解がある人が増える世の中に

編集部編集部

線維筋痛症を知らない人に一言お願いします。

石川さん石川さん

「線維筋痛症」は聞き慣れない病名かもしれません。もし全身に長く続く痛みを抱えている人がいたら、そのときは一度「線維筋痛症」も疑ってみてください。起き上がることもできない、我慢できない痛みは、本人にはとてもつらいことです。けがや風邪のように目に見えない病気のため、「なまけ者」や「仮病」と言われることも多いのですが、この病気を知り、理解のある人が一人でも多く増えれば、生活や活動の場が多く増えていくと思います。もし皆さんの周りに、同じような人がいたら優しい言葉をかけ、手を差し伸べてあげてください。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

石川さん石川さん

ドクターショッピング(診察に納得できずに病院を転々とすること)をさせない医療体制を作ってほしいです。原因がわからず、疑いの視線や言葉を浴びせられることを、患者の多くが経験しています。患者の言葉に耳を傾ける先生が増えると、ドクターショッピングをする人は減ると思います。大変だとは思いますが、一人でも多くの患者さんが痛みのコントロールができるようになることを願います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

石川さん石川さん

「線維筋痛症」という病気は、昔に比べ少しずつ知名度は上がっていますが、まだまだ広く知られていません。線維筋痛症は原因不明で難治性の病気といわれますが、いまだに難病指定を受けていない病気。患者さん一人ひとりの症状が違うため、年金制度や身体障害者手帳を受けることができない患者さんも多くいます。そのため薬代や治療費の問題を抱え生きている方も少なくありません。だからこそ、あなたからの温かい言葉や励ましは、治療の上で励みになると思います。身近に原因不明の痛みを抱える方がいたら、寄り添ってもらえると幸いです。

編集部まとめ

ご自身の痛みの体験から、ドクターショッピングをしない環境づくりの大切さについて語ってくださった石川さん。痛みがコントロールできない病気だからこそ、つらいことも多かったようです。あなたの周りに原因不明の痛みを抱えている人はいませんか?痛みはその人にしかわからないもの、その時はぜひ寄り添ってあげてください。

この記事の監修医師