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知っておきたい「腸閉塞」のリスクと対策、最悪の場合は命を落とすことも

 更新日:2023/03/27

腸閉塞」とは、何らかの理由により腸が閉塞してしまい、激しい腹痛や吐き気、嘔吐などを引き起こす病気のことです。とくに以前、腹部の手術を受けたことがある人は、組織が癒着しやすくなっており腸閉塞のリスクが高くなります。一体、どのように治療し、また、予防することができるのでしょうか。「おおつ消化器・呼吸器内科クリニック」の大津先生に教えていただきました。

大津 威一郎

監修医師
大津 威一郎(おおつ消化器・呼吸器内科クリニック 院長)

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昭和大学医学部医学科卒業。その後、さいたま赤十字病院総合臨床内科、消化管内科などで経験を積む。2021年、埼玉県北足立郡に「おおつ消化器・呼吸器内科クリニック」を開院。「地域の方々に安心・安全で適切な医療を提供したい」という想いを掲げ、地域医療に貢献している。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本消化管学会胃腸科専門医、日本内科学会認定医、日本ヘリコバクター学会 H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医、日本がん治療認定医機構認定医。

腸閉塞の症状とは?

腸閉塞の症状とは?

編集部編集部

まず、腸閉塞について教えてください。

大津 威一郎大津先生

腸閉塞とは文字通り、腸が塞がってしまった状態のことを指します。通常、食べたり飲んだりしたものは食道から胃を通り、大腸まで運ばれます。そして、便として肛門から排泄されるのですが、この時に様々な原因で腸管の内容物が詰まり、肛門側に移動できなくなった状態のことを腸閉塞(イレウス)といいます。

編集部編集部

腸管が閉塞すると、どうなるのでしょうか?

大津 威一郎大津先生

腸管が閉塞すると、食べたものや胃液、腸液、ガスなどが腸内にたまり続けてしまいます。その結果、おなかの痛みや吐き気、嘔吐などを引き起こすほか、おなかが張ってガスや便が出なくなることもあります。

編集部編集部

命に関わるようなことはありますか?

大津 威一郎大津先生

腸管が閉塞すると血流が悪くなるため、体内への血液供給が不十分になり、意識障害などが現れる「ショック症状」を起こすこともあります。また、血流の悪い状態が続くと、場合によっては腸が壊死しまうことも考えられます。その場合は腹膜炎を起こして、命を落とす危険性が高いため、緊急手術が必要となります。

編集部編集部

それは怖いですね。腸閉塞の検査は、どのようにおこなわれるのですか?

大津 威一郎大津先生

まずは問診で症状を伺い、触診でおなかのふくらみなどを確認させていただきます。そこで腸閉塞が疑われる場合は、血液検査や腹部超音波検査、腹部のレントゲン検査をおこないます。さらに詳細な検査が必要な場合は、CTを用いることもあります。

腸閉塞は2タイプに分けられる

腸閉塞は2タイプに分けられる

編集部編集部

腸閉塞の原因はなんですか?

大津 威一郎大津先生

腸閉塞には、大きく分けて2つの原因があります。1つ目は、腸管が狭くなっているといった物理的な原因で詰まってしまう「機械的閉塞」です。もう1つは、腸管の形そのものに問題はないけれど、炎症や薬の副作用など何らかの問題によって腸管の血流や神経の障害が起きて、腸の収縮がうまく機能しなくなる「機能的閉塞」です。

編集部編集部

まずは、腸管そのものに問題があるのかないのかで区分するのですね。

大津 威一郎大津先生

そうです。さらに機械的閉塞・機能的閉塞は、2種類に分けられます。まず、機械的閉塞は、腸管の血流が悪くならない「単純性腸閉塞」と、腸管の血流が悪くなる「複雑性(絞扼性)腸閉塞」に分類されます。

編集部編集部

もう一方の機能的閉塞は、どのように分類されるのですか?

大津 威一郎大津先生

1つは、腹部の手術後や腹膜炎などで腸の動きが止まる「麻痺性腸閉塞」です。もう1つは、薬物による中毒や精神的な問題で腸が痙攣(けいれん)する「痙攣性腸閉塞」です。

場合によっては緊急手術になることも

場合によっては緊急手術になることも

編集部編集部

腸閉塞はどのように治療するのですか?

大津 威一郎大津先生

腹部の診察やレントゲン、 CT検査などで原因を追求して、治療法を検討します。単純性腸閉塞や機能的腸閉塞に対しては、点滴治療で脱水や電解質異常に対する治療をおこないながら、絶飲食で腸管を安静にするのが主流です。また、必要があれば抗生物質を投与したり、鼻から小腸あたりまでイレウス管と呼ばれるチューブを挿入して腸管内容物の吸引や減圧をおこなったりすることもあります。いずれの治療も、効果が乏しい場合には手術が必要になります。

編集部編集部

複雑性(絞扼性)腸閉塞の場合は、どうですか?

大津 威一郎大津先生

この場合は、時間が経つと腸管が壊死してしまうため、一般的には緊急手術をします。癒着している部分を剥離したり、圧迫している部分を切除したりして、閉塞部位を解除します。また、腸管が壊死していれば、その部分の切除もおこないます。

編集部編集部

腸閉塞を予防するには、どのようなことに気をつけたらいいでしょうか?

大津 威一郎大津先生

腸閉塞には様々な原因があるため、これといった予防法はないかもしれません。しかし、「ゆっくりとよく噛んで食べる」、「水分をしっかりとる」、「暴飲暴食をしない」、「消化に悪いものや食物繊維の多いものを避ける」などを意識することは、腸閉塞の防止に役立つと考えられています。また、便秘は腸閉塞の原因になるため、便秘にならないような工夫も大切です。

編集部編集部

普段の食生活から意識することが必要なのですね。

大津 威一郎大津先生

はい。腸閉塞を予防するために、食べるものや食べ方などに一層注意を払い、気になることがあれば早めに検査を受けることをおすすめします。また、それ以外で気をつけていただきたいのが、腹部の手術歴がある人です。術後に癒着を起こしやすいことから、手術歴のない人に比べて腸閉塞になるリスクが高いことがわかっています。

編集部編集部

腸閉塞は自然治癒するのですか?

大津 威一郎大津先生

腸閉塞は自然によくなることは、ほとんどありません。むしろ、すぐに治療をしないと、どんどん腸管が拡張して命に関わる可能性もあります。とくに、排便が急に止まったり、腹痛や嘔吐、腹部膨満感があったりする場合は、早急に消化器科を受診しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

大津 威一郎大津先生

嘔吐や腹痛が続く場合は、早めに消化器科を受診しましょう。とくに複雑性腸閉塞が疑われる場合は、造影CTの検査をする必要があるため、ある程度設備の整った病院へ行った方がいいでしょう。また、先述したように腹部の手術をしたことのある人は、術後数十年経っても腸閉塞を起こすリスクがあります。そうしたことを常に頭の片隅に置き、「あれ、おかしいな」と思うことがあれば、消化器内科など専門機関で相談しましょう。

編集部まとめ

激しい腹痛や嘔吐など、苦しい症状を伴う腸閉塞。癒着が原因で腸閉塞を起こした場合は、再発のリスクも高いため、日頃の生活習慣を見直すことが大切です。また、自然治癒はしないため、腸閉塞の症状が現れたら放置は厳禁です。

医院情報

おおつ消化器・呼吸器内科クリニック

おおつ消化器・呼吸器内科クリニック
所在地 〒362-0806 埼玉県北足立郡伊奈町小室 3188-6
アクセス JR宇都宮線「蓮田駅」 徒歩23分
診療科目 消化器内科、呼吸器内科、一般内科

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