「AGA治療が妊活を妨げる」、これって実際どうなの?
男性の薄毛対策として、「AGA治療」に取り組んでいる人もいるでしょう。そこで気になるのが、妊活を妨げるリスクがあるのかどうかです。もしあるとすれば、妊活中の男性は、どのような治療法を選べばいいのでしょうか。「ナチュラルAGAクリニック」の新行内先生が解説します。
監修医師:
新行内 出(ナチュラルAGAクリニック 院長)
千葉大学医学部卒業。大手AGAクリニック勤務を経た2021年、東京都目黒区に「ナチュラルAGAクリニック」開院。「薬に頼らないAGA治療」をコンセプトとし、副作用の心配が少ない治療に努めている。加えて、日本皮膚科学会発行のAGAガイドラインに完全準拠し、主に発毛効果と安全性が確認された治療を提供している。日本美容皮膚科学会、日本抗加齢医学会の各会員。
一部の内服薬には不妊リスクがある
編集部
AGA治療は、妊娠を計画中の男性でも受けていいのでしょうか?
新行内先生
結論から言えば、一部のAGA薬には不妊のリスクがあります。「フィナステリド」と「デュタステリド」という内服薬の追跡調査により、「精液濃度の低下や精子数の減少」が報告されています。したがって、妊活中の男性に対しては、この両薬以外の治療選択肢をおすすめします。
編集部
精子の濃度や数が少なくなるため、妊娠確率が下がるということですか?
新行内先生
下がる可能性はあります。もちろん個人差があるので、薬の影響をまったく受けない人もいるでしょう。しかし、フィナステリドとデュタステリドという内服薬を使わなくても、AGA治療にはほかの選択肢があります。そのため、あえてリスクを取る必要はないと考えます。
編集部
一部に「奇形の胎児が生まれる」という説も見かけるのですが……。
新行内先生
男性がフィナステリドやデュタステリドを使っても、奇形の確率を高めるわけではないと言われていますが、精液を通じて胎児に影響が出るリスクがゼロではありません。また、男性に向けて処方されたこれらのAGA治療薬を女性が使ったり触ったりしてしまった場合は、胎児に影響が出るリスクがあります。そのため、女性ご自身の服用薬などと勘違いしないよう、保管方法に工夫が求められます。
性交渉自体を困難にする可能性
編集部
受精の問題とは別に、「AGA治療でEDになる」とも聞きますが、本当ですか?
新行内先生
本当です。こちらも個人差があり、すべての人がEDになるわけではありませんが、フィナステリドやデュタステリドを服用した人の一部はEDになることがわかっています。そうした副作用が気になる人は、別の治療法を検討していきましょう。
編集部
そのほか、AGA治療が妊活を阻害するリスクはありますか?
新行内先生
よくAGA治療で用いられる薬に「ミノキシジル」があります。ミノキシジルは塗り薬として使用するものですが、内服した場合は毛髪に限らず、腕やすね、顔などの毛が濃くなる場合もあります。もしかしたら、男性のそうした外見が気持ち的に妊活を阻害させるかもしれません。
編集部
フィナステリドやデュタステリドを使用することによる副作用は、不妊以外にもありますか?
新行内先生
稀ですが、フィナステリドやデュタステリドの副作用として、肝機能障害やうつに似た症状を発症させることが知られています。投薬期間の長短とは関係なく、個人差によって現れるようです。その一方で、まったく副作用のない人もいるので、一概に危険とは言いきれません。
編集部
「AGA治療薬ならどれも同じ」というわけではないのですね。
新行内先生
はい。AGAの治療法には様々なものがあり、それぞれメリットとデメリットがあります。また、一人ひとりの症状や状況によって、適した治療法も異なります。そのため、まずは専門家へ相談することを推奨します。
薄毛は遺伝するのか
編集部
薄毛や抜け毛体質は、遺伝するのですか?
新行内先生
はい。父母どちらからも遺伝する可能性があります。ときどき、「毛髪に関連する遺伝子は、女性だけがもつX体遺伝子の中にある」という説を耳にすることがありますが、これは誤りで、実際には父親からも遺伝します。
編集部
遺伝子に手を加えるゲノム医療で、薄毛体質を改善することはできないのでしょうか?
新行内先生
たしかに、遺伝子に手を加えることができればAGAを予防することができるかもしれません。しかし、AGAは多因子性の疾患なので、特定の遺伝子に手を加えたとしても防ぐことができないのが実状です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
新行内先生
今回のテーマについて主な結論をまとめると、「精子の数が減る可能性」、「EDになる可能性」、「毛深くなって見た目がよろしくなくなる可能性」の3点になるでしょうか。また、妊婦さんが薬を服用したり触ったりすると、奇形のリスクがあるので厳禁です。加えて、妊活の妨げになるものもあれば、そうしたリスクの低い治療法もあるため、ぜひ専門医でカウンセリングを受けてほしいと思います。その際には、「現在、妊活中です」などと、自分のライフプランを医師に伝えることも忘れずにお願いします。
編集部まとめ
どうやら、フィナステリドとデュタステリドに限って、男性の妊活を妨げる可能性があるとのことでした。そのため、妊活中はほかの治療方法を選択しましょう。こうした悩みは、自分で考えるよりも専門家に相談するのが確実です。くれぐれも出所が不明なデマ情報や過度な宣伝文句に惑わされず、医師からのアドバイスを受けて、きちんとしたAGA治療をおこなっていきましょう。
医院情報
所在地 | 〒153-0051 東京都目黒区上目黒1丁目26-1 中目黒アトラスタワーアネックス2階 |
アクセス | 東京メトロ日比谷線、東急東横線「中目黒駅」徒歩1分 |
診療科目 | 美容皮膚科、AGA |