ドライアイ治療「液体コラーゲンプラグ」の効果とメリット
ドライアイ治療の主要な選択肢の1つである「液体コラーゲンプラグ」。保険を適用でき、効果が持続している2~3カ月間は、症状を的確に改善できます。この液体コラーゲンプラグについて「繰り返し治療を受けても大丈夫なのか」が気になっている方も多いでしょう。そこで液体コラーゲンプラグについて、日本眼科学会認定専門医であり、さくやま眼科の院長柞山健一先生に、話を聞きました。
監修医師:
柞山 健一(さくやま眼科 院長/日本眼科学会認定眼科専門医)
国立琉球大学卒業、横浜市立大学大学院修了。横浜市立大学附属病院、横浜市立みなと赤十字病院勤務を経て、東戸塚記念病院医長、国際親善総合病院医長、岡田眼科副部長などを歴任。2020年5月にさくやま眼科を開院する。日本眼科学会認定眼科専門医に加え、医学博士号・麻酔科標榜医などの資格を多数保有。日本眼科学会・日本緑内障学会の学会員としても活動している。
液体コラーゲンプラグとは?
編集部
まず「液体コラーゲンプラグ」とは何でしょうか?
柞山先生
液体コラーゲンを用いたドライアイの治療法になります。涙腺から分泌される涙の量が少ないのに、涙点からどんどん涙が排出されてしまうと、涙の量が不足して目の表面が乾いてきます。 そこで、涙の出口(涙点)に栓(プラグ)をすることで、十分な涙が目に溜まるようにするのが涙点プラグ治療の考え方です。この栓として、コラーゲンを用います。液体コラーゲンプラグは、冷たい状態では液状で、体温程度に温めるとゼリー状に固まる性質があります。このコラーゲンを細い管で涙点から続く涙小管へ注入することで、涙の排出量をコントロールし、ドライアイの症状を改善します。
編集部
従来の「固体プラグ」との違いは何でしょう。
柞山先生
どちらもプラグをする仕組みは同じです。プラグに当たるものが、「コラーゲン」(液体コラーゲンプラグ)か「シリコン」(固体プラグ)かの違いです。
編集部
涙点とはどの部分でしょうか?
柞山先生
編集部
涙点から液体コラーゲンプラグを注入すると、どうなるのですか?
柞山先生
涙小管という管を満たします。涙小管全体に行き渡ったあとこれが体温で固まって、涙小管が塞がれる仕組みです。涙小管は鼻に通じる鼻涙管につながっているので、涙が鼻に流れにくくなります。つまり「目の中に溜まる」わけです。「水分が溜まる=目が潤う」ということで、ドライアイの解消につながります。
編集部
「涙が溜まりすぎる」ということはないのでしょうか?
柞山先生
まれに起こりえます。しかし、これは治療の効果がしっかり出ているということでもあります。もしそうなったとしても、コラーゲンは徐々に分解されたり、排出されたりしていきますので、時間とともにそれも落ち着いていきます。従来の固体プラグに比べると効果がマイルドですので、液体コラーゲンプラグの方が起こりにくくなっています。
編集部
痛みはあるのでしょうか?
柞山先生
痛みはほとんどありません。点眼麻酔のみで施術できます。
治療効果の持続期間
編集部
液体コラーゲンプラグの効果は、どのくらい持続するのでしょう?
柞山先生
個人差はありますが、2~3カ月を目安としてください。
編集部
効果が切れるのはなぜですか?
柞山先生
固まったコラーゲンが、少しずつ分解されたり、排出されたりしていくためです。効果が切れるたびに、再注入が必要になります。ただ、この「元に戻る」という性質から、特に初めて涙点プラグの治療を受ける方には、「効果を試す」という意味では導入しやすい治療だと考えています。まずは液体コラーゲンプラグで、しっかり効果を確認して、繰り返しの治療が煩わしいと感じるようになったら、従来の固体プラグに切り替えていくという方法も選択肢となるでしょう。
編集部
効果が早く切れてしまうことはあるのでしょうか?
柞山先生
効果の持続時間には個人差がありますので一概には言えませんが、強く鼻をかむ、目を強くこする、目の周囲を強く押す、などの行為はできるだけ控えた方がよいかと思います。
編集部
効果が切れたら、また注入しても大丈夫でしょうか?
柞山先生
はい。もともと効果が切れるたびに再注入することを想定している治療法です。また液体コラーゲンプラグには、医療に幅広く使われているアテロコラーゲンという特殊なコラーゲンが用いられています。アテロコラーゲンは、酵素処理によって得られる、抗原性の低い、且つ安全性の高いコラーゲンです。
液体コラーゲンプラグに副作用はあるのか
編集部
副作用はあるのでしょうか?
柞山先生
アレルギーの出にくい物質ではありますが、コラーゲンにアレルギーがある場合、まれに痒みが出たり、目が赤くなったりする場合があります。その場合は、早めに医師に相談してください。まれに効果が強く出てしまい、涙があふれてしまうことがありますが、それは時間とともにコラーゲンが分解、排出され、時間とともに落ち着いてきます。
編集部
異物感はありますか?
柞山先生
異物感はほとんどありません。これも液体コラーゲンプラグのメリットです。従来の固体プラグでは、人によって異物感が出ることが時々あり、この場合はやはり「抜く」という選択をしなければなりませんでした。
編集部
長期間使用することによる影響はあるでしょうか?
柞山先生
おそらくないだろうと考えられています。そもそも2~3カ月で分解され、排出されてしまいますし、使用するアテロコラーゲンも先にご紹介したとおり、美容外科、歯科、整形外科などで用いられている安全性の高いものです。
編集部
ダウンタイムはあるでしょうか?
柞山先生
いいえ。治療当日から通常どおりの生活、洗顔や入浴も可能です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
柞山先生
ドライアイの治療の基本は、今も昔もやはり点眼治療です。簡便で安全性も高く、経済的にも負担は少ないですので、ドライアイ治療の第一選択はやはり点眼治療だと思います。今はドライアイの治療薬も複数から選択できるようになり、その組み合わせにより、治療効果を高めていくことも期待できます。しかし、さまざまな理由で点眼治療での改善が難しい場合は、積極的に涙点プラグの適用を検討していくべきだと思います。特に今回ご紹介した液体コラーゲンプラグの「元に戻る」という性質は、繰り返しの治療が必要になるというデメリットでもありますが、それがあるがゆえに導入しやすい治療ともいえるのではないかと思います。すでに点眼治療を受けられていて、症状の改善が感じられない人は、点眼以外の治療について、ぜひ一度専門医にご相談していただければと思います。
編集部まとめ
液体コラーゲンプラグは痛みや異物感がほとんどなく、繰り返し挿入しても安全な治療法です。持続期間は2~3カ月で「万が一不快な症状があっても短期間で元に戻る」という点がメリットといえます。点眼治療に限界を感じて涙点プラグを検討している方は、まず液体コラーゲンプラグから試してみるのもいいでしょう。
医院情報
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診療科目 | 眼科 |