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形成外科はどんなときに受診するの? 大学病院と民間医療機関の違いは?

 更新日:2023/03/27

外科の一分野として、幅広い外傷や病気に対応する形成外科。「名前は聞くけど、役割がわからない」、「美容でよく聞くけど、美容外科との違いがわからない」という人も多いでしょう。また、実際に受診する際、「大学病院と民間医療機関で何が違うのか」も気になるところです。今回はこれらの疑問について、「自由が丘クリニック」の大慈弥先生が解説してくれました。

大慈弥 裕之

監修医師
大慈弥 裕之(自由が丘クリニック)

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福岡大学医学部卒業。その後、北里大学病院形成外科に入局。福岡大学医学部形成外科学主任教授などの教職を歴任。現在は「自由が丘クリニック」教授外来。そのほかに、北里大学形成外科・美容外科客員教授、NPO自由が丘アカデミー代表理事も務める。多くの学会役職を勤めるとともに、美容医療健全化のための活動もしている。医学博士。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会(JSAPS)第13代理事長、日本抗加齢医学会理事。

形成外科(美容外科)とは?

形成外科(美容外科)とは?

編集部編集部

まず、形成外科とはどのような分野なのでしょうか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

主に「人の形に関する問題」を扱う医学分野で、「外傷(顔面外傷や熱傷などへの手術)」、「外表先天異常(口唇裂や小耳症などへの手術)」、「再建外科(乳がん術後の乳房再建など)」、「美容外科(フェイスリフト手術など)」の4つの領域に分けることができます。なお、美容外科も「形成外科の4領域のうちの1つ」に含まれます。

編集部編集部

「美容外科が形成外科の一部」というのは、少し意外ですね。

大慈弥 裕之大慈弥先生

一見無関係に見えますが、形成外科の「形を整える」、「傷を綺麗に治す」という知識と技術は美容外科の技術とも共通します。そのため、形成外科の専門医資格を取るには、美容外科領域の研修も必要です。

編集部編集部

それぞれ、どこで治療を受けることができるのでしょうか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

形成外科は主に「大学病院」、「一般病院(公的病院、民間病院)」、「診療所(クリニック)」の3種類です。美容外科については、「診療所(クリニック)」となります。なお、医師であればどんな科目でも標榜できるため、形成外科や皮膚科出身の医師が美容外科や美容皮膚科を標榜しているケースもあります。

大学病院とクリニックの違い

大学病院とクリニックの違い

編集部編集部

大学病院とクリニックでは、どのような診療をしているのでしょうか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

大学病院や一般病院の場合は、先述した4ジャンルのうちの外傷、外表先天異常、再建外科の3つが中心で、ほとんどは保険診療です。形成外科を標榜するクリニックでは、保険診療と自費診療(美容医療)の両方をおこない、もう一方の美容外科を単独で標榜するクリニックでは、自費診療の美容医療が中心です。

編集部編集部

美容系の医療は、やはりクリニックが主流なのでしょうか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

はい。大学病院の形成外科や美容外科に患者さんが来院されるケースは、例えば合併症や後遺症の治療です。美容クリニックの手術や治療で合併症や後遺症が出た際に、難しい治療を大学病院が「最後の砦」として引き受けるケースがしばしばあります。

編集部編集部

大学病院とクリニックで、医師の技量は異なるのですか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

これは、一概にはいえません。人間の体には創傷治癒と呼ばれる「生体反応」があり、この反応が術後の形にも影響します。したがって、治療直後の見た目だけでは、手術が成功だったかどうかわかりません。半年から1年が経過した後、成否がはっきりすることも少なくありません。経過まで見て判断するのが「医師の技術」の正しい見方です。この評価は非常に難しいことに加えて、担当医個人の技量の差もあるため、大学病院とクリニックで「どちらの技術が上」とは一概にはいえないのです。

編集部編集部

あえて整理するなら、どういった技術に着目すればいいでしょうか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

綺麗に形を整える力」、「安全に手術する力」、「トラブルに対応する力」の3つの技術でみるべきだと思います。「綺麗に形を整える力」は、生体反応の影響まで見越して、理想に近い形を作り上げる力です。「安全に手術する力」とは、合併症や後遺症を最小限に抑えた、安全な医療を提供する力です。最後の「トラブルに対応する力」は、万が一合併症や後遺症が生じた場合に、適切に対応し、できる限り前の状態にまで回復させられる再建外科の力のことです。

大学病院とクリニック、それぞれにかかるべきケース

大学病院とクリニック、それぞれにかかるべきケース

編集部編集部

大学病院の形成外科は、どんなケースでかかるべきですか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

大学病院は、主に「紹介の患者さん」を診療する施設です。そのため、みなさんが最初にかかるのは、クリニックか一般病院がほとんどでしょう。

編集部編集部

どのような症状だと、大学病院を紹介されるのでしょうか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

一例をあげると、重症の顔面外傷や重症の熱傷(やけど)、小児の先天異常、手術後の再建手術(耳鼻科・乳腺外科など)といった場合です。もう少し軽い疾患の保険診療は、一般病院の形成外科が対応しています。

編集部編集部

形成外科にかかる際、事前に調べておくべきことはありますか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

その疾患の基礎知識と、担当医の資格は調べておいた方がいいでしょう。疾患の情報については、医師個人のサイトでは偏ったものもあるため、公的な資料も参考にしていただきたいです。形成外科でしたら、日本形成外科学会のホームページなどです。

編集部編集部

美容外科にかかる場合は?

大慈弥 裕之大慈弥先生

2020年11月公表の「美容医療診療指針」を参考にしていただきたいと思います。この指針は厚生労働省の指導のもと、美容外科学会(JSAPS)などの関連学会が合同で作成したものです。

編集部編集部

美容外科医選びの際にみておきたいポイントはありますか?

大慈弥 裕之大慈弥先生

実のところ、美容外科にはまだ公的な資格がありません。しかし、形成外科出身の美容外科医であれば「形成外科学会専門医」の資格をもっているかどうかは、参考になるでしょう。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージがあれば。

大慈弥 裕之大慈弥先生

形成外科の長い歴史を持つ欧米では、大学病院の形成外科でも「美容外科」が半分ほどの比率を占めています。「傷跡と形を綺麗に治す」には、形成外科の技術が美容外科には不可欠だからです。美容外科は、形成外科との関係が深く、より専門性の高い医療であることがご理解いただけたかと思います。良い美容医療は、人生を豊かにすることができ、それを与えるのは専門医の質と科学的根拠です。形成外科や美容外科の知識をはじめ、医療や健康について、日頃から正しい知識に触れていただけたらと思います。

編集部まとめ

「形成外科とは何か」という知識も含め、私たちが知らない医療の基本は多くあります。そうした基本を正しく知ることは「医師のためではなく、自分のため」に重要なことです。多くの医師が伝えようとしている「難しいけど正しい情報」を、患者側からも努力して理解してくべきでしょう。

医院情報

自由が丘クリニック

自由が丘クリニック
所在地 〒152-0023 東京都目黒区八雲3-12-10パークヴィラ2F・3F・4F
アクセス 東急東横線、東急大井町線「自由が丘駅」 徒歩10分
東急東横線「都立大学駅」 徒歩10分
診療科目 美容外科、美容皮膚科、美容内科

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