「尿の泡立ちが気になる…」これって糖尿病のサインなの!?
排尿後はもちろんのこと、その次のトイレに残っていることもある尿泡。尿をつくるのは腎臓なので、もしかしたら腎臓に何かが起こっているのでしょうか。だとしたら糖尿病が考えられるものの、糖で泡立つとも思えません。この謎を「糖尿病・内分泌内科りんごの花クリニック」の武井先生に紐解いていただきました。
監修医師:
武井 真大(糖尿病・内分泌内科りんごの花クリニック 院長)
信州大学医学部医学科卒業、信州大学大学院医学系研究科修了。その後、信州大学医学部附属病院などで生活習慣病に特化した診療を積む。2020年、群馬県伊勢崎市に「糖尿病・内分泌内科りんごの花クリニック」開院。医学博士。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医・指導医・評議員、日本糖尿病学会糖尿病専門医・研修指導医、日本動脈硬化学会動脈硬化専門医・指導医、日本高血圧学会高血圧専門医ほか。
病気とは限らないものの、調べてみればすぐわかる
編集部
最近、排尿時の泡が目立ってきました。何かの病気でしょうか?
武井先生
その時点では、病気とは断定できません。それだけ尿が“粘って”きているのでしょう。原因は大きく2方向に分かれ、「水分が少なくなっている」か「粘りの元となる成分が多く混ざっている」のどちらかです。これらは、尿検査をしてみれば鑑別できます。
編集部
なるほど、「水分が少ない」というパターンもあるのですね?
武井先生
運動の直後や汗ばむ時期などには、病気の有無にかかわらず、尿が泡立つときがあります。ですから、「排尿の直前に何をしていたか」によって変わり得るということです。ただし、病気による可能性もあるので、気になるようでしたら、検査だけはしていただきたいと思います。
編集部
もう一方で、尿中に何かが混ざっているとしたら?
武井先生
泡立ちの原因として考えられるのはタンパク質です。尿タンパクの異常は疲労や睡眠不足によっても生じますが、やはり怖いのが「腎臓の病気」でしょう。腎臓でタンパク質がこしきれていないということです。
編集部
腎臓病の病気といえば糖尿病ですか?
武井先生
尿にタンパク質が大量に出ているとしたら、考えられる病気の代表格は「糖尿病性腎臓病」です。他方で、タンパク質が多すぎる食事などの影響もあり得ますが、まずは病気を疑ってみるべきではないでしょうか。尿検査による血糖値の確認が簡単かつ一目瞭然なことに加えて、すぐに結果が出ます。
糖尿病ではないことを確認するのも受診の目的になる
編集部
ほかにも糖尿病の自覚症状があるようなら、併せて知っておきたいです。
武井先生
本来なら、ご自分で判断するのではなく、専門家に任せたいところです。ですが、受診を早めるきっかけとして、ほかの自覚症状にも触れていきましょう。まず、典型的な糖尿病の自覚症状は「喉の渇き」です。「水分を追うように飲みたくなる」などとも表現されます。
編集部
血中の糖の量が多くなるから、水で薄めたくなるということですか?
武井先生
それもありますが、多過ぎる血糖を体外へ出そうとして尿が多くなり、その結果として「喉が渇く」場合もあります。つまり、両方ですね。ですから、「喉の渇き」と同時に「多尿」も糖尿病のサインになります。
編集部
尿が泡立っていなくても糖尿病の可能性はあると?
武井先生
可能性はあります。加えて、食事量は以前と変わらないにもかかわらず「体重の増減」がみられたとしたら、さらに疑わしくなってきます。体内の血糖が有効に使われず尿で排出されると、脂肪を燃やしてエネルギー源にするしかありません。もし心当たりがあるようなら、一度、血糖値を調べておきたいですよね。具体的には、空腹時の血糖値が「126」を超えたら、糖尿病の疑いがかなり高くなってきます。
編集部
しかし、「単なる寝不足やストレス」による尿泡だったら恥ずかしいです。
武井先生
むしろ「そのことがわかって良かった」とポジティブに捉えましょう。糖尿病ではなかったことが判明しただけでも、十分な受診動機になります。病気の有無に限らず、「お悩みを解決する場」として医療機関を有効活用してみてください。異常がないという除外診断も安心材料になりますよね。
糖尿病を疑うべきは、尿泡より夜間頻尿
編集部
糖尿病の場合、尿泡より頻尿の方が現れやすいということでしたが?
武井先生
はい。日中は、様々なきっかけでトイレに行きたくなります。長時間の移動に備えたり飲酒後に催したりするほか、たまたま便所を見かけて出したくなったということもあるでしょう。そこで、「夜に寝ている間のトイレの回数」に着目してください。2回を超えるようなら、病的な夜間頻尿といえます。糖尿病に限らず、更年期障害も含めて、何かしらの異変が起きているはずです。
編集部
血尿は、糖尿病と別の話なんですよね?
武井先生
糖尿病によって血尿が出ることは、ほとんどありません。膀胱(ぼうこう)や尿路のどこかで「出血している」ということですから、別の病気を疑いましょう。このケースで最も怖いのは、“泌尿器系のがん”ですよね。
編集部
そもそも、糖尿病の悪影響は体のどこに出るのでしょうか?
武井先生
全身の至るところです。文字どおり、頭の先からつま先まで、どこで何が起きても不思議ではありません。なぜなら、糖尿病は「全身に張り巡らされている血管が脆くなっていく病気」だからです。血管の全取り換えはできないので、「悪くしないための予防」が肝要になってきます。食事や運動などの生活習慣の改善に加えて、場合によっては薬の力を借りていきます。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
武井先生
尿検査自体は来院してからでもできますし、痛みもないうえ、結果が出るまで1分もかかりません。あらゆる検査の中でも効率的な部類に入るでしょう。ここは、検査と治療を切り分けて、検査だけでも受けてみてはいかがでしょうか。その先のことは、検査結果に応じて考えていきましょう。「検査=治療開始」とは限りません。
編集部まとめ
どうやら、疑わしきサインの1つが尿泡なのであって、糖尿病を確定づける兆候とまでは言い切れないようです。だからといって、油断は禁物でしょう。むしろ、「気にしすぎて受診する」ことの弊害はありません。糖尿病の除外診断も、立派な成果だからです。尿泡に限らず、「何か気になったら医療機関で調べてもらう」習慣をもってみてはいかがでしょうか。
医院情報
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診療科目 | 内科 |