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「介護」と「看護」って何が違うの?

 更新日:2023/03/27

最近の医療・介護の現場では、利用者の重症化や医療ニーズの高さなどにより、医療職に求められる役割が増大しています。また、介護保険法改正によって、「データに基づいた介護」と対極にある「生活を支える」介護が評価される方向に移行しています。その中で同じ業務を行うこともある「介護」と「看護」。両者の専門性や職種の役割などにはどんな違いがあるのか、「介護福祉士・社会福祉士」の大関さんにお話を伺いました。

大関美里

監修者
大関 美里(介護福祉士・社会福祉士)

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東北文化学園大学卒業。社会福祉士の資格取得後、特別養護老人ホームにて介護職として働く。祖父の在宅介護、看取りを経験。リアルな現場と祖父の介護経験に対する後悔から、排泄ケアを追及するべくおむつメーカーのケアアドバイザーとなる。その後、一般社団法人にて介護教育や研修の意義を痛感。2017年より、「DASUケアLAB®︎」として排泄ケアサポートや講師活動を開始し介護現場での「より良い出し方」を探求している。

「介護士」と「看護師」、それぞれの役割

「介護士」と「看護師」、それぞれの役割

編集部編集部

「介護」と「看護」は似て非なるものかと思いますが、どんな違いがあるのか教えてください。

大関美里大関さん

まず、それぞれの資格や目的から説明させてください。介護職は、介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)に代表されるような「日常生活の支援・生活上の世話」が主な業務です。つまり「介護」とは単独で日常生活を送ることが困難な人に対して、生きていくために必要な行動に関わることを支援し、自立を目指す行為のことを指します。なお、似た言葉に「介助」がありますが、これは介護を実現するための手段であり、行為そのものを指しています。

編集部編集部

もう一方の「看護」についてもお願いします。

大関美里大関さん

「看護」は、看護師の職務内容に代表される「診療の補助と療養上の世話」という、医療職が行っている行為を指します。看護職の最大の目的は「命を守ること」で、これを重点に置いて仕事をしています。対する介護職は、その人らしい生活を送れるように生活を支えることに重点を置いています。

編集部編集部

つまり看護職は、その人の希望や理想の暮らしよりも、「命を守る・治療すること」を優先せざるを得ないということですね。

大関美里大関さん

看護師のような医療職は、「どこが問題なんだろうか?」という問題解決型の視点です。他方の介護職のような福祉職は、相手が高齢者や障害を持つ人を対象とするため、治らない問題に注目していても解決には至りません。そのため、今できることに注力してプラスに置き換えられることや、やり残していることに目線を向けていることが大きな違いです。病気や障害を抱えていても、その人らしい生活ができるように「生活を支える」視点がメインです。介護職はその人が「どうしたいか」の目標を見つけて、その人らしい生活を送れるようにお手伝いをする目標志向型と言えるでしょうか。

福祉職と医療職の仕事内容の違い

福祉職と医療職の仕事内容の違い

編集部編集部

「看護は医療職」、「介護は福祉職」だということが分かりました。

大関美里大関さん

介護福祉士と看護師はどちらも国家資格ですが、その教育内容にも大きな違いがあります。介護福祉士は、「利用者の生活の維持や向上」を目的とし、教育内容も利用者の想いや楽しみをどのように支援していくか、生活とは何かということを主に学びます。看護師は対象の健康回復を目的として、教育内容も療養上の世話に関する内容と医学的知識を学びます。

編集部編集部

介護職には、介護福祉士を取得していないと従事することはできないのですか?

大関美里大関さん

ここでよく勘違いしやすいのが「介護士」と「介護福祉士」です。「介護士」はあくまで介護の仕事に従事する人の「職種」を意味するのですが、「介護福祉士」は介護のプロとしての専門性を示す「国家資格保有者」のことを指します。ただ介護職の場合、資格は必須ではありません。資格を持たない人も“介護士”にはなれます。ですが、看護師の仕事は、看護師の資格を取得しないと従事できない業務独占資格となります。

編集部編集部

同じ仕事内容に当たっている様に見えることがありますが、実際は違いがあるのでしょうか?

大関美里大関さん

介護職はイメージの通り、食事や入浴、排泄などの介助などが該当します。また、介護度の重い利用者に対しては、移動や移乗の介助なども行います。そして、その人の「今の状態」だけでなく、過去の生活、ご家族、周りの環境なども含めた多角的な支援で、その人の生活全体を見ていくことになります。

編集部編集部

看護職も同じような行為をしていませんか?

大関美里大関さん

たしかに、看護職は医療を必要とする人への療養を目的とし、その上で行われる世話の中で、介護職と同じような介護行為をすることもあります。ですが、やはり点滴や採血、注射などの医療行為を通して、病気の予防や苦痛の緩和などに働きかけられるのは、看護職ならではですよね。

編集部編集部

介護職と看護職でできることの範囲が異なりますが、注意点はありますか?

大関美里大関さん

日常生活の介助のほかにも、介護行為との中間に「医療的生活援助行為」という吸引、吸入、経管栄養(けいかんえいよう)の処置などがあります。この部分は平成24年から一定条件のもとで介護職にも許可されることになりました。そのほか、平成17年の通知にて、医療行為に当たらないとされている行為が、介護職でも行える医療的ケアとなります。介護職員が行える医療的ケアの内容は、確認しておくことが必要です。

従事する場所による違い

従事する場所による違い

編集部編集部

看護職と介護職が従事する環境によっても変わりそうですね。

大関美里大関さん

医療現場であれば、治療が優先となることが多く、患者さんは場合によって生活に様々な制限や我慢の場面が起こります。しかし、その医療職の所属する場所が介護保険施設であれば、本人の有する能力に応じた自立した生活の支援が目的となります。医療現場とは異なり、介護現場は生活の場であるため、その人なりの生活が優先されます。また、病気や障害が治らなくても「自分らしく生きる」ことを支える場になります。

編集部編集部

「病気ではなく、人を診る」と?

大関美里大関さん

そうですね。もちろんどちらが正解なのかといった二元論ではなく、目的や視点、置かれている現場によって異なるだけです。介護現場では、医療が優先されるとは限らず、その人らしい「健康的な生活」をいかに支えるかを考えていくことが必要です。介護現場における医療の役割はこれだけでは務まらず、老いという「治せない」対象が相手のため、それをプラスに置き換えていく見方をしていくことが求められそうです。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

大関美里大関さん

「介護」と「看護」のお互いの領域では、もちろん違いも大きいのですが、重なる部分をヒントとして、お互いの連携を強めていけたら、より優れたケアにつながると考えています。

編集部まとめ

同じ現場で働くことも多い介護職と看護職ですが、その仕事内容は重なるところもありつつ、視点が異なっているということが分かりました。そもそも、看護師と介護福祉士の連携が求められるのは、異なる視点を持っているからです。それぞれが大事にしていることを違いとして理解できれば、役割分担を明確にしていくことで、よりよいケアが提供できると思います。そして、そうした現場が増えることを願っています。

この記事の監修介護福祉士