「やけど」はどの程度で病院に行くべき? どんな治療をする?
身近に起こり得る「やけど」を、市販品で対応している人も少なくないのではないでしょうか。もし、冷やしたうえで自然回復を待つだけなら、受診の必要性がないようにすら感じてしまいます。はたして、「やけどの治療」とは一体どういうことなのでしょう。「きずときずあとのクリニック」の村松先生が解説します。
監修医師:
村松 英之(きずときずあとのクリニック 院長)
昭和大学医学部卒業。昭和大学形成外科入局後、国内外で形成外科診療の実績を積む。2017年、東京都江東区に「きずときずあとのクリニック」開院。形成外科という標榜科の周知とチーム医療に取り組んでいる。日本形成外科学会専門医、日本熱傷学会専門医、日本創傷外科学会専門医。日本形成外科学会皮膚腫瘍外科分野指導医、日本形成外科学会小児形成外科分野指導医。
やけどとは、皮膚の「死」である
編集部
やけどを負った場合、きちんとクリニックで治した方がいいのでしょうか?
村松先生
傷跡として残る可能性もあるので、ぜひ、形成外科などを受診してください。少なくとも、水ぶくれができていたら、受診しておいた方がいいように思います。なお、水ぶくれの大きさは問いません。加えて、「低温やけど」も受診が推奨される症状です。
編集部
水ぶくれを破って治そうとする人もいますよね。
村松先生
中にはいらっしゃるかもしれませんが、水ぶくれが破けると痛みを伴います。ブヨブヨが気になるようだったら、針や爪切りの端などで、上手に小さな穴を開けてください。中の水を抜くこと自体は、やっていただいて構いません。
編集部
一方、入院が必要なケースはありますか?
村松先生
たしかにありますが、入院の基準については医師の考えで異なる印象です。例えば、腕全体のやけどや化学薬品によるやけどといった“危ないケース”は、おおむね、入院していただきます。来院される際も、救急車を呼んでいただいて結構です。
編集部
壊死(えし)を起こすほどのやけどもあると聞きます。
村松先生
皮膚が熱によってダメージを受けると、深いか浅いかの差こそあれ、“死んで”しまいます。ただし、浅い皮膚はターンオーバーによって生まれ変わりますので、いずれ治っていきます。問題は、ターンオーバーが及ばない深い部分でのやけどです。このようなケースでは、肌のバリア機能が失われるため、菌の繁殖を許してしまうこともあります。
医療期間でおこなえる、やけど治療の選択肢
編集部
肝心の治療方法についても教えてください。
村松先生
浅いやけどは「日焼け」のようなものですから、市販品などでも十分でしょう。もちろん、受診していただければ、塗り薬を処方いたします。他方、水ぶくれを含む中度のやけどに対しては「湿潤療法」、つまり湿った状態のまま治していく進め方が主流です。乾燥しているより湿った状態の方が治りは良好なのです。
編集部
市販薬にない「医院ならではの治し方」ってあるのでしょうか?
村松先生
「フィブラストスプレー」という、日本熱傷学会のガイドラインで早期からの使用を勧められている薬剤があります。こちらは市販で扱っていないスプレーです。保険診療が認められていて、3割負担として3000円前後かかります。
編集部
入院を必要とするようなやけどの治療は大ごとになりそうです。
村松先生
このレベルになると、一般人が知っていても「活かせない知識」なので、割愛していいのではないでしょうか。まずは、やけどの深さによって、「組織に起きる死の深さが違う」ということをご理解ください。
編集部
やけどがケロイドに発展することはありますか?
村松先生
たしかに起こり得ることですが、やけど治療のゴールは本来、「できるだけ綺麗に治すこと」です。単に「治す」ではない点が、形成外科の特徴ともいえるでしょう。万が一、ケロイドになったとしても、ケロイドの治療方法に習熟していますのでご安心ください。
推奨できる応急措置と、間違ったあるある
編集部
やけどの直後、自宅ではどうすればいいでしょうか?
村松先生
大ごとだったら、迷わず救急車を呼んでください。なにをもって「大ごと」とするのかですが、腕1本を超えるような広さか、顔のようなデリケートな箇所かで判断しましょう。その後の応急処置は、救急隊の指示に従ってください。
編集部
小さい範囲のやけどなら?
村松先生
それでも受診が前提ですが、ひとまず、流水で冷やしましょう。洗面器にためた水などは、次第に温まってしまいます。その意味で、「流水」が最も効果的です。とにかく、熱を皮膚の深部へ届かせないようにしてください。また、氷や氷水は凍傷の可能性があるので、冷やす時間の目安は、受傷してから「30分」までとしてください。
編集部
市販のキズテープ類が効果的と聞きます。
村松先生
重度の感染症を起こす危険性があるため、決して市販のキズテープ類(ハイドロコロイド製剤)は使用しないでください。十分に冷やした後で受診する際には、ガーゼや清潔なタオルなどで患部を覆うようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
村松先生
やけどで覚えておいていただきたいことは、「受傷から30分の間、冷やし続けること」と、「湿潤療法が主体であること」でしょうか。乾燥させて治す時代ではなくなってきました。さらに加えるとしたら、「低温やけどは受診が大前提であること」です。肌バリア機能が失われているので、感染症に注意しながら治していきましょう。
編集部まとめ
形成外科そのものの役割が、「できるだけ綺麗に治す」ということでした。やけど治療には、受診先が問われるのですね。日常的なレベルのやけどを前提とすると、形成外科では、患部を乾かさずにガーゼなどで覆う湿潤療法が、治療方法として用いられているそうです。
医院情報
所在地 | 〒135-0061 東京都江東区豊洲5-6-29 パークホームズ豊洲ザレジデンス1F |
アクセス | 東京メトロ有楽町線「豊洲駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 形成外科、美容外科 |