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長期の寝たきりで発症する「廃用症候群」ってなに?

 更新日:2023/03/27
長期の寝たきりで発症する「廃用症候群」ってなに?

廃用症候群」の原因の1つに、長期の寝たきりが挙げられます。しかし、具体的にどういった症状のことを指すのか、どうやって対策していけばいいのかといった、不明点も数多くあります。今回は、介護現場でのご経験を長く持ち、現在は講師として活躍されている「天晴れ介護サービス総合教育研究所」の榊原さんに、「廃用症候群」に関する疑問を投げかけてみました。

榊原宏昌

監修介護福祉士
榊原 宏昌(天晴れ介護サービス総合教育研究所 介護福祉士・介護支援専門員)

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京都大学経済学部卒業後、特別養護老人ホームに介護職として勤務。社会福祉法人、医療法人にて15年間、介護現場での仕事を経験した後、2015年年4月、「介護現場をよくする研究・活動」を目的として「天晴れ介護サービス総合研究所」を設立。執筆、研修講師、コンサルティング活動に加え、ブログやfacebook、YouTubeなどでの情報発信も積極的におこなっている。

筋肉や関節は「使わなければ衰える」

筋肉や関節は「使わなければ衰える」

編集部編集部

そもそも、「廃用症候群」とはなんでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

廃用症候群は、生活不活発病とも言われています。筋肉や関節の動きなど、機能的には「できる」動作でも、日常生活において「していない」、つまり活用していないと機能そのものの衰えを招き、その結果「できなく」なってしまう状態を指します。要するに「使わなければ衰える」ということです。

編集部編集部

では、脳梗塞や骨折が原因で歩けなくなる、とは違うということですね。

榊原宏昌榊原さん

そのとおりです。寝たきりをはじめとして、動かない時間が長いと起こり得るものということですね。ただし、脳梗塞や骨折で入院することがきっかけで起こることはあります。最近は病院でも、手術後でもできるだけ早期に身体を動かすことが推奨されてはいますが、それでも横になっている時間が長いですからね。特に高齢者は廃用症候群を起こすリスクが高いとされています。

編集部編集部

では、できるだけ早く自宅などに戻った方がいいのですね。

榊原宏昌榊原さん

たしかに、そうではあるのですが、自宅に戻ったからと言って活動的になるとも限りません。病院では頑張ってリハビリを受けていても、自宅に戻ったら1日中横になっているということもあり得ます。病院であれ、自宅であれ、日常を活動的に過ごすことが、心身の健康を保つ上で大切なことです。

生活全体の見直しが重要

生活全体の見直しが重要

編集部編集部

では、具体的にどんな状態が廃用症候群なのでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

いくつか種類がありますが、例えば「知的能力や精神活動の低下、無関心」があります。周囲に関心がなくなってボーッとする時間が増えるなどが該当します。また、たまに起き上がると目眩がするなどの「血圧調整能力の低下」もあります。少し動いただけで息が上がってしまうような「心肺機能の低下」も指摘されています。さらに、活動が少なくなると「便秘や膀胱炎」になったり、「筋力低下」に陥ったりします。

編集部編集部

ほかにもありますか?

榊原宏昌榊原さん

ほかにもまだあり、骨がもろくなって骨折しやすくなる「骨萎縮」や、関節が固まって動きにくくなる「関節拘縮」も当てはまります。「褥瘡(じょくそう)」と呼ばれる、いわゆる「床ずれ」も、ずっと寝ていると、お尻の骨が出っ張っている部分などの血流が乏しくなって細胞が壊死してしまいます。そのほか、「バランス能力低下」や「食欲不振」も挙げられます。

編集部編集部

こんなにあるとは知りませんでした。

榊原宏昌榊原さん

驚きですよね。そして、これらが悪循環を引き起こしてしまうことも知っていてほしいです。筋力の低下が原因で歩きにくくなり、ずっと横になっていると心肺機能の低下を引き起こすということです。また、関節が固まってしまい、オムツをつけるようになった結果、膀胱炎や褥瘡が起こりやすくなり、ご飯もあまり食べないからますます体力も落ちる、といった悪循環です。

編集部編集部

つまり、生活すべてがつながっていると?

榊原宏昌榊原さん

そのとおりです。そのため、起床から就寝までの生活全体の改善が重要になります。また、個人個人、1日の過ごし方は違うので、前に自分はどのような1日を過ごしていたのかを知ることも大切です。

廃用症候群を防ぐために

廃用症候群を防ぐために

編集部編集部

悪循環を招かないために、生活で工夫できることはありますか?

榊原宏昌榊原さん

まずはベッドから離れることが大切で、どこか出掛ける場所があるといいですね。要介護の状態になって外出が難しいようであれば、デイサービスなどの利用も有効です。ずっと家にいると、どうしても横になって過ごしがちですからね。

編集部編集部

介護保険のサービスの利用も効果的なのですか?

榊原宏昌榊原さん

はい。心身の状態の改善にもつながりますし、悪化の防止にも役立ちます。また、施設に入所していても同様です。本人の状態にもよりますが、日中はできるだけ活動をさせてもらえるような施設を選ぶことも重要ですね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

榊原宏昌榊原さん

廃用症候群の対策としては、本人の生活習慣を知り、できる限りそれを尊重することが大切です。また、本人が興味を示すような活動をさせてあげることで、心身ともに良好な状態で日々を過ごせるでしょう。

編集部まとめ

廃用症候群には、様々なケースが当てはまることがわかりました。また、生活習慣病のように、日常生活の日々の過ごし方の中に原因と対策があるとのことです。できるだけ長く元気に過ごすためにも、日常の過ごし方の見直しをおこなってみてください。

この記事の監修介護福祉士