【動画付き】モノが二重に見えるけど、これって単なる乱視? それとも目の病気?
現在の乱視がいずれ、失明に至るとしたら。眼球の前方が円錐(えんすい)状に突出してくる「円錐角膜」は、失明の危険をはらみ、若い世代に多い病気です。また、元に戻らないため、いかに早く気付くかが、その後の視力を左右します。そんな怖い病気の真相を、「医療法人社団ライト」理事長の荒井先生に解説していただきました。
監修医師:
荒井 宏幸(医療法人社団ライト 理事長)
防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院などで近視矯正手術・白内障手術を中心に診療経験を積んだ後、2010年に現職の「医療法人社団ライト」理事長に就任。医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医。みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。自身もレーシック手術を受けている。講演・出演・著書など多数。
一言で「乱視」といっても、その中身は多彩
編集部
モノが二重に見えたら乱視でしょうか?
荒井先生
そう考えていいと思います。ただし、片目だけで起こるのか、両目で見た場合に限って起こるのかによって、原因が異なってくるでしょう。なお、一時的な疲れ目の影響などは、誰にでも起こり得ることです。
編集部
片目だけでおかしいとしたら、その目になにかが起きたということですよね?
荒井先生
そうなります。外傷はもちろんのこと、顕微鏡やカメラなどで「片目だけを酷使する職業の人」は、左右の目に視力差が生じやすいようです。検査用の眼鏡で度数合わせをしてみて、正常な見え方に戻るようなら、眼鏡やコンタクトレンズで解決していきましょう。
編集部
他方、両目でモノが二重に見えるって怖いですね……。
荒井先生
まず、「二重」の解釈には個人差があります。単なるボヤケを「二重」とおっしゃっているのであれば、近視や遠視、老眼、白内障などが考えられます。一方、ピントが合っているのに「二重」に見えるとしたら、斜視の可能性を疑います。両目の方向がそろっていないのかもしれません。
編集部
「本当の二重」の場合、斜視をのぞけば、おおむね視力の問題だと?
荒井先生
いいえ。神経に問題がある場合も考えられますし、「円錐角膜」という病気も散見されています。いずれにしても、モノが二重に見えるようでしたら、きちんと調べてみましょう。様子見で済むケースと医療介入を要するケースがあります。
「かかりつけ」と「いきつけ」が、早期発見のカギ
編集部
「円錐角膜」とは、どんな病気なのでしょうか?
荒井先生
目の一番前の部分にある透明な角膜が、円錐のように突出してくる病気です。多くの場合、10代後半~20代前半に発症しますが、気付かずに進行を許すことも多々あります。かつて「進行はいずれ停止する」とされていましたが、「必ず停止するとは限らない」というのが最近の学説です。なお、日本でおこなわれている角膜移植手術のうち、その原因として最も多いのが円錐角膜です。
編集部
角膜の突出は、自分で見てわかりますか?
荒井先生
自分では気づけません。自覚としては、まず乱視ですよね。この段階で眼科医院や眼鏡店を訪ねると思うのですが、できれば、同じ医療機関かお店に固定してください。時系列の変化を追えれば、医師や検査技師が“気づく”と思われます。そうではなく、都度、単発の検査をしていると、単なる「乱視」で終わってしまうかもしれません。
編集部
眼科では、どのような検査をするのでしょうか?
荒井先生
眼科医でも視診察だけでは見逃しかねないので、機械による測定結果を診断に結びつけています。角膜形状検査をおこなえば、角膜の曲がり具合が色の差で表示されるため、変形が一目瞭然です。
編集部
円錐角膜の原因は、一体なんなのでしょうか?
荒井先生
はっきりしたことはわかっていません。個人的な意見ですが、円錐角膜は、アトピー性皮膚炎の人に多くみられる印象です。肌荒れと同じような現象が角膜にも起きていて、形状変化を起こしやすくしているのではないでしょうか。目のアレルギー症状が強い人も多く、頻回に目をこすり、網膜剥離に進行する場合もあります。
治療選択肢は、必ずしも角膜移植一択にあらず
編集部
今度は、円錐角膜の治療方法についてお願いします。
荒井先生
わかりました。初期であれば、ハードコンタクトレンズによる見え方の矯正が有効です。柔らかなソフトコンタクトレンズだと、「目の先がとんがったまま、サランラップをかける」ような具合で強制力に欠けます。円錐角膜のカーブを変えられないので、視力が出せないのです。
編集部
その方法だと、進行は抑えられないですよね?
荒井先生
そうですね。進行を抑えるとしたら、外科的な手術が必要です。具体的には三段階考えられます。第一に「角膜クロスリンキング」、その次に「角膜内リング」、そして最終的に「角膜移植手術」です。角膜クロスリンキングとは、点眼薬と紫外線の照射により、角膜の強度を強くする治療法です。組織が硬くなることで、それ以上の変形を抑えられます。
編集部
第二段階の角膜内リングとは?
荒井先生
角膜内に挿入したリングで、突出を軽減する方法です。一種の矯正装置とお考えください。円錐角膜は、進行するにつれ、次第に薄くなってきます。角膜クロスリンキングが可能なのは、十分な厚みのある場合です。角膜クロスリンキングの適応が難しそうなら、角膜内リングを検討します。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
荒井先生
円錐角膜には、「角膜移植手術以外の段階的な治療」が可能です。ぜひ、そのことを知っていただきたいですね。怖くて角膜移植手術に踏み切れない人や、ハードコンタクトレンズの装着が痛みはじめた人は、お話だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
若い世代の発症が多いという円錐角膜。その自覚は難しいため、乱視を感じたら、同じ眼科医院か同じ眼鏡店による「定期的なウォッチ」が欠かせません。早期発見につながる大事なポイントです。その後の外科的治療は三段階あります。なかでも、角膜クロスリンキングと角膜内リングは扱っている眼科医が少ないため、なかなか知られていない治療方法です。記事内容に心当たりがあったら、インターネットなどで調べてみてください。
視力低下の症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
医院情報
所在地 | 〒220-6208 横浜市西区みなとみらい2-3-5 クイーンズタワーC8F |
アクセス | みなとみらい線「みなとみらい駅」 徒歩1分 JR根岸線「桜木町駅」 徒歩10分 |
診療科目 | 眼科 |