【医師が解説】血液検査を空腹で受けなければいけないワケとは
健康診断や血液検査の前日は、最後の食事を食べられる時間が決まっています。このように、検査前は空腹状態で受けることを推奨されます。はたして、血液検査と食事がどうして関係あるのでしょうか。空腹で受けなければいけない理由について、「臨床検査技師」の川田直樹さんに詳しく伺いました。
監修臨床検査技師:
川田 直樹(一般財団法人慈山会医学研究所付属坪井病院 中央検査部生理検査科科長 臨床検査技師)
昭和医療技術専門学校卒業後、千葉県の亀田総合病院で循環器を中心とした検査に携わる。その後、福島県の寿泉堂綜合病院に17年間勤務。2016年から呼吸器とがん専門の坪井病院に転職し、中央検査部の生理検査科で超音波検査や呼吸器検査を中心とした業務に携わる。同病院に、IP(間質性肺炎)センターが立ち上がり、県内外からの紹介などで急増傾向にある間質性肺炎の患者さんに対応できる知識と技術の向上を図るべく日々精進中。日本超音波医学会認定超音波検査士(循環器領域)、緊急臨床検査士、二級臨床検査士(呼吸生理学・循環生理学)、日本糖尿病療養指導士。
血液検査を空腹で受ける理由
編集部
血液検査は、空腹で受けないといけないのですか?
川田さん
血液検査は食事によって影響を受けやすい項目が多いので、正しい検査結果を出すために、空腹で受けるようにしましょう。検査の12時間前から食事やジュースなどを、摂取しないようにしてください。
編集部
具体的にどのような項目に影響を及ぼすのでしょうか?
川田さん
中性脂肪は、検査前10時間以内の食事が数値に影響を及ぼします。また、食後は血糖値が上昇するため、検査前2時間以内に食事をすると、空腹時血糖値を正しく測ることができません。
編集部
では、検査の10時間前までに食事を終えていればいいのですね?
川田さん
はい、大丈夫です。しかし、検査当日は水分を摂らずに検査するのが理想とされています。水分を摂取したい時は、採血の3時間前までにコップ一杯程度の水であれば問題ありません。また、食事以外にも、喫煙はLDL(悪玉コレステロール)の数値を上昇させてしまうので、少なくとも2時間前から禁煙をお願いしています。前日の深酒は、中性脂肪を上昇させる原因になり、激しい運動もAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、LDH(血清乳酸脱水酵素)、CK(クレアチンキナーゼ)を上昇させてしまいます。検査前日はタバコ、アルコール、運動にも注意してください。
血液検査を受ける頻度
編集部
血液検査ではどのようなことがわかるのでしょうか?
川田さん
血液検査は体の中の異常を、幅広く知ることができます。検査項目には基準値があり、健康な人の95%はこの数値内に収まるのですが、それを大きく超えると病気の疑いがあります。血液検査の数値から肝臓や腎臓の病気、糖尿病、脂質異常症、痛風、貧血、ウイルス性肝炎などがわかります。
編集部
検査結果に異常があったら、どうしたらいいのでしょうか?
川田さん
病気の疑いがあるため、精密検査を受けてください。精密検査の結果で、経過観察の場合は生活習慣に注意を払い、要治療の場合は早期治療をすることで早期改善につながります。精密検査をおこなうことで、経過観察でいいのか治療が必要なのかがわかります。治療する場合は早期治療につながり、経過観察の場合でも生活習慣に気をつけることで、早期改善ができると思います。
編集部
どれくらいの頻度で検査を受けるのがいいでしょうか?
川田さん
特に体の異常を感じない人は、定期健康診断で年に一度受ければ大丈夫だと思います。糖尿病などで通院している人は、医師から定期的に検査を指示されると思いますので、その場合は医師の指示にしっかり従い、必要なタイミングで受けるようにしてください。
異常があった場合は早期受診を!
編集部
検査時に注意することはありますか?
川田さん
採血される人の中には、苦手な人や貧血気味の人もいます。そういった人は、採血中に倒れてしまうこともあるので、遠慮せずに予約や受付時に医療スタッフへ相談してみてください。寝た状態で採血するなどの対応をしてもらえます。また、採血があることを事前に知っている場合は、腕が楽にまくれる洋服で来院していただけるとスムーズに検査が進みます。
編集部
血液検査を受ければ、健康に生活できるのでしょうか?
川田さん
健康診断は受けて終わりではなく、結果を見て今の自分の体がどういう状態か正しく知るためのものです。そのためは、普段通りの状態で受けるのが大切です。結果に経過観察や生活習慣改善と記されていれば、いつもの生活を見直すいいきっかけになると思いますよ。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
川田さん
検査結果に異常があった場合、「症状がないから大丈夫」と自己判断をするのは危険です。早めに医療機関を受診するように心がけてください。原因の特定が早ければ、早期に治療ができ、進行を遅らせたり完治させたりすることもできます。実際に医療現場で働いていると自己判断で放置して、症状が出てから受診する人も少なくありません。特に40~60歳くらいの年代に多い傾向があるので、異常がある場合はぜひ早めに受診してください。
編集部まとめ
血液検査の結果は食事に影響を受けやすい項目が多いため、検査の12時間前までに食事などを済ませるように心がけましょう。検査結果に異常があった場合は、自己判断せずに、早めに医療機関に相談することが大切です。原因が突き止められれば、すぐに治療も開始できます。