生涯「裸眼」で生活できる? ホリエモンと眼科専門医が語る眼科医療の最先端とは(前編)
近視治療において、一般的に知られている治療法の一つである「レーシック」は、術後から数年すると、近視が戻るリスクを抱えており、術後永久的に近視が進まないことを保証するものでもありません。そこで近年、ICL(眼内コンタクトレンズ)という治療が注目されています。ICLは、元々の視力に関係なく、近視の戻りが少ないため、術後何年経っても治療直後と同じ見え方が維持されます。
今回、堀江貴文氏と医療法人社団豊栄会・サピアタワーアイクリニック東京執刀責任者である北澤世志博医師が、「ICLと今後の眼科医療」について対談を実施しました。人生100年時代と謳われるようになった昨今、私たちは一生を「裸眼」で生活することが可能になるかもしれません。
※この対談は下記YouTubeチャンネルでもご覧いただけます。
実業家
堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)
医療法人社団豊栄会 サピアタワー アイクリニック東京 執刀責任者
北澤 世志博(きたざわ よしひろ)
目次 -INDEX-
ICLとレーシックの違い
堀江
ICLの技術は、近年かなり進化したと聞きました。
北澤
はい、大きく進化したと言えます。
堀江
ICLの手術方法は、目に小さな穴を開けて、そこからコンタクトレンズを入れるようなイメージですよね?
北澤
はい、おっしゃる通りです。角膜は削らず、小さな切開創からレンズを挿入することで、視力を矯正する治療法ですね。ヨーロッパで初めて導入されてから20年以上経ちますし、日本でも導入されてからすでに15年ほどの期間が経っています。レーシックのように、戻った視力は落ちないので、安心して生活することができます。
堀江
ちょうど私も、約20年前に歯のインプラントを挿入しました。また、レーシックの手術を10年ほど前に受けました。
北澤
インプラントと同様に、目の中に挿入したまま裸眼で生活できるのがICLです。レーシックを受けたとのことですが、現在も順調に目は見えていますか?
堀江
はい、順調に見えています。視力は問題ありませんが、老眼は少しずつきていますね(笑)。レーシックを受けて、私は物凄くQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上がりました。手術を受けて良かったですね。
北澤
近視の軽い人は角膜を削る量が少なく済むため、視力が低下することもないのでレーシック手術はおすすめです。しかし、近視が強い人は角膜を削る量が多いので、時間の経過によって視力が悪くなる可能性を含んでいます。
堀江
そうなんですか、角膜をたくさん削ると視力が戻ってしまう可能性があるのですね。
北澤
はい、たくさん削ると組織は再生しようとするので、最初は視力が良くなっても2〜3年で視力が落ちてしまう人がいらっしゃいます。
堀江
私は現在でも快適に過ごせていますが、中にはレーシック手術を受けられない人も存在すると聞きました。
北澤
そうですね。近視の度数、角膜の厚み、角膜の形などによって、様々な制限が出てきます。近視が強い人は、角膜を多く削らなければなりませんので、角膜の厚みが必要です。さらに、角膜の形が正常で綺麗でなければ、削ることができません。レーシックを希望していても、約1割の人は何らかの理由で手術を受けられません。
堀江
角膜の形が異常でレーシックを受けられなかった人でも、ICLの手術は受けることができるのでしょうか。
北澤
はい、可能です。近視の度合いによってレンズを作成していきますので、通常のコンタクトレンズや眼鏡と同様の感覚です。
堀江
ICLの場合、レンズを挿入するだけなので、目の中にある水晶体は取る必要がないということでしょうか?
北澤
その通りです。透明な水晶体の上にレンズを乗せますので、水晶体は残したまま、通常のコンタクトレンズを挿入するイメージです。現代は眼科医療の発達によって、一生裸眼で過ごせるような時代になりました。老眼の場合でも、老眼用のレンズを挿入すれば良いので、矯正することが可能です。
堀江
凄い技術ですね。費用についての詳細をお伺いしたいです。
北澤
ICLの場合、費用は約60万円が現在の相場です。専用レンズ自体に、費用が多くかかっています。また保険が効かないことも影響しています。老眼用ICLの場合は約80万円と、通常のICLよりさらに費用は高くなります。
堀江
しかし、ICLを受けるとQOLは上がりそうですね。
北澤
そうですね。一番のメリットは、手術後に裸眼で生活できることでしょう。
堀江
ICLの手術を希望する人たちは、どのようにしてこの手術を知るのでしょうか?
北澤
日本では、まだまだ認知されていないのが現状です。今回の対談のような形で、メディアに取り上げられたり、取材を受けたりすることで、ICLの存在を知る人が多いですね。また、著名人の方によって認知されることがあります。
堀江
少しずつ広まっている印象だと?
北澤
そうですね。レーシックに関しては、認知が広まったピークは2008年ぐらいです。現在はまだレーシックの方が認知されていますが、今後5年ぐらいでICLも一気に認知されると予想しています。
堀江
認知が広まっていくと、ICL手術の機材やレンズなどの価格が下がっていくかもしれませんね。
北澤
その可能性はありますね。
堀江
レーシックとICLの手術方法の大きな違いはなんでしょうか?
北澤
レーシックの場合はレーザーを使用しますが、ICLの場合はコラマーという特殊な素材の眼内コンタクトレンズを使用します。
堀江
手術をする側の医者の人数についてはいかがですか。
北澤
レーシックをおこなっていた医者は国内に500〜600人ほどいましたが、ICLの場合は国内に200名ほどの人数がライセンスを所持しています。しかし、実際にICL手術をおこなっている人数は100名ほどです。レーシックの場合、眼科医であれば誰でも手術ができます。ICLの場合は、白内障の手術ができる医者でなければなりません。どうしても、手術ができる医者の人数は少なくなります。
堀江
その点は、ICLにおけるボトルネックですね。
北澤
はい。その反面、手術をする医者は必ず眼科専門医となりますので、安心して手術を受けることができます。
堀江
日本はこれから高齢化が進むわけですから、今後の需要はもっと増えていくでしょうね。私が受けたレーシック治療も凄いと感じましたが、現在はさらに技術が進歩してICL手術が可能になりました。角膜や水晶体も残せて、素晴らしいと思います。
北澤
ICLのように、目の手術は日々進歩しています。若い人の近視、年齢を重ねた方の老眼にも対応できるので、メガネやコンタクトレンズを一生使用せずに過ごすことが可能です。大きく時代は変化しました。
最先端の老眼治療
堀江
私の同年代でも、老眼の人が増えてきました。私自身も現在は48歳で、知人の老眼鏡を掛けてスマホの画面を見た時に、とても見えやすくて驚きました。
北澤
一般的に、40代後半から老眼は始まると言われています。堀江さんも、レーシックを受けたおかげで、視力が良い人と同様の状況なので、そろそろ老眼の症状が出てきてもおかしくないでしょう。
堀江
そうですね。近くの文字が見えにくかったり、暗い場所だと文字が見えにくかったりしています。
北澤
現在は、老眼の矯正ができるICLが存在します。若い人には近視のICL、老眼の人には老眼のICLを施術できます。
堀江
多焦点に対応できるレンズがあると伺いました。
北澤
はい、その通りです。多焦点のICLですね。眼内コンタクトレンズで、多焦点に対応しているものを挿入します。
堀江
凄いですね。
北澤
堀江さんの場合、レーシック手術を受けているので遠くのものは見えている状況です。ただ、数年のうちに老眼が強くなれば、遠近の眼内レンズを使用することで、近くのものも見えるようになります。
堀江
なるほど。
北澤
そして、60代以降になったときに白内障の症状が出てきた際は、白内障手術で多焦点の眼内レンズを挿入すれば、遠くも近くも見えるようになります。
堀江
まずは、ICL手術を受けてレンズを挿入し、その時々に応じてレンズを変えるということですね。
北澤
はい。通常のICLと同じように眼内レンズで、老眼や白内障のレンズを都度作成していくイメージです。ですので、堀江さんの場合は白内障になる前までに、老眼のICLを受ければ良いのです。
堀江
とても便利ですね。
北澤
ICLがなかった時代は、近視治療というとレーシックをおこなっていました。その結果、近視が治って遠くが見えるようになりますが、歳を取ると近くが見えなくなり、老眼鏡だけが必要となります。
堀江
まさに将来の私ですね。
北澤
60代以降になって白内障を発症した際には、遠近両用の眼内レンズが使用できます。しかし、近視を治療した後から50代までの期間は空白ができてしまい、老眼鏡が必要だったのが、遠近両用のICL誕生以前の話です。
堀江
その問題が解決できるのが遠近両用ICL治療ということですね。
北澤
その通りです。この技術は、いま世界的に注目されています。これからどんどん普及されていくでしょう。
高齢者の目の治療は変わる
堀江
目が見えることは、年配の方にとって老化防止にも繋がりますね。
北澤
その通りですね。特に、70代〜80代以降の認知症が入りかけた方にとっては有効です。目も耳も悪くなると、周りからの刺激が少なくなります。それによって認知症が進むのですが、目が見えるようになると、認知症の進行を抑えることが可能で、中には症状が改善される方も存在します。
堀江
症状を抑えるだけではなく、改善する方もいらっしゃるんですね。
北澤
杖をついて歩いていた方が、白内障の手術後にスタスタと歩いて家族の元に帰る、という事例も珍しくありません。
堀江
目が見えない恐怖から杖をついていたのでしょうが、ご家族の方はびっくりされますね。目が良くなると、姿勢などにも好影響がありそうです。
北澤
そうですね。近視の人は目を細めて首を縮こめるような姿勢を取りますので、目が良くなるだけで姿勢が改善し、健康な生活に繋がります。
堀江
私の50代の知人は、早くから耳が悪くなってしまいましたが、補聴器をつけた途端にQOLが大きく改善されたようです。
北澤
個人差はあれど、人間の聴覚や視覚は年を重ねるにつれ悪くなっていきます。聴覚や視覚は、周りからの刺激を多く受けやすい部分なので、補聴器やICLなどを用いて健康な状態にすることは、とても大切です。
堀江
多くの方に実施していただきたいですね。ただ、なかなか世間に普及していないとも感じています。以前は、「レーシックは怖い」という声をよく聞きました。
北澤
はい。実際に、「目にレーザーを当てるなんて……」という声も多く聞きました。普及していくために、課題はまだまだ存在しています。
後編はこちら>>
医院情報
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診療科目 | 眼科・ICL手術・レーザー白内障手術 |