「CT検査」と「MRI検査」の違いを教えて!
画像診断の検査には「X線検査」や「CT検査」、「MRI検査」などたくさんの種類があります。しかし、受診する私たち患者にとって、いまいち違いや目的がわかりません。そこで、画像診断におけるそれぞれの特徴や比較について、「臨床検査技師」の内田さんにお話を伺いました。CT検査やMRI検査の違いを理解し、自身の健康を守れるようにしましょう。
監修臨床検査技師:
内田 佑介(臨床検査技師)
昭和医療技術専門学校卒業。医療機器の営業、医療法人での渉外を経て新薬開発業務に進む。データマネージャーとして勤務をした後、国の指定難病である重症筋無力症を発症。その経験から医療情報のあり方に考えを至らせ、早期発見、早期治療の重要性をコラムとして執筆している。現在は、臨床検査技師、フリーランスのコラムニストとして活動中。
CT検査は「X線」で身体を調べる検査
編集部
病院の撮影検査は種類が多くて、違いがよくわかりません。
内田さん
もともとはX線(レントゲン)検査から始まった技術です。技術の発展に伴い、被ばく量をより少なく、より高画質で撮影できる検査と進化を遂げてきました。代表的な撮影検査としては、X線検査、CT検査、MRI検査などがあります。
編集部
どうして種類が多いのでしょう?
内田さん
仕組みや目的に応じて使い分けているからです。それぞれの検査によって、発見できる病気や病変の違いもあります。また、検査費用や検査時間の問題などの兼ね合いもあるでしょう。
編集部
それぞれの特徴について教えてください。まずはX線検査から。
内田さん
X線検査はレントゲン検査や単純X線撮影とも言われる画像診断で、健康診断などでも一般的に用いられる撮影方法です。撮影の仕組みとして放射線を利用します。放射線を用いる撮影は、私たち臨床検査技師には認められていません。撮影ができるのは診療放射線技師になります。
編集部
CT検査も放射線を用いる検査ですよね? 違いはなんでしょう?
内田さん
その通りです。X線検査が正面からの1枚写真と考えると、CT検査は体を薄切りにして立体的に撮影した写真と考えることができます。CTはComputed Tomographyの略で、コンピューター断層撮影という意味です。コンピュータによって画像を解析します。体を輪切り(断層)にした写真が出力されますので、部位ごとの細かい変化を観察することができます。
編集部
CT検査はどのような病気の発見に向いているのでしょうか?
内田さん
肺がんや肺炎など胸部の病変、肝臓がんやすい臓がんなど腹部の病変、脳卒中、結石、骨折など、幅広い病気の発見に向いています。
編集部
放射線と聞くと、被ばくの心配があります……。
内田さん
おっしゃる通り、被ばくのリスクはあります。しかし、CT検査による被ばくリスクより、病気を見逃すリスクの方が高いと思います。たとえば、CT検査によって早期のがんを発見することができれば、結果的にがんによる死者数が減ることに繋がります。現代の医学では、CT検査によるデメリットよりも、早期発見によるメリットの方が圧倒的に上回ると言えるでしょう。
MRI検査は「磁力」で身体を調べる
編集部
一方、MRI検査とはどのような検査なのですか?
内田さん
MRIはMagnetic Resonance Imageの略で、核磁気共鳴画像法とよばれる磁力を使った撮影方法になります。磁力を発生させることによって、細胞を構成する元素がさまざまな動きをします。元素によって異なる動きを解析し、画像化するのがMRI検査です。
編集部
どのような病気の発見に向いているのでしょうか?
内田さん
脳梗塞などの病変をくっきりと映し出すことが得意ですね。また、全身の状態を把握することができますし、神経や血管といった部位を写しますので、さまざまな病変を見抜くことができます。
編集部
CT検査は被ばくリスクがありましたが、MRI検査にはどのようなリスクがありますか?
内田さん
磁力を用いる検査ですので、放射線による被ばくはありません。以前は、ペースメーカーや骨の固定具などによって検査ができないケースもありましたが、現在ではMRI検査に対応した医療機器も多くあります。ただし、強い磁場が発生しますので、たとえば、使い捨てカイロによって火傷を負ったり、コンタクトレンズが変形して眼に傷つけたりという事故もあります。検査を受ける前に、注意事項を十分に確認してから受診してください。
多角的に身体を調べる
編集部
ここまでの話を聞くと、MRI検査が万能のように感じます。
内田さん
CT検査に比べると検査時間が長いことや、ペースメーカーなど体内の金属部品との兼ね合いもあり、一長一短です。緊急時に検査をする目的でいえば、CT検査の方が適している場合もあるでしょう。検査にかかる費用的な問題もあります。また、小さな病変の発見はCT検査の方が優れていると言われます。
編集部
なぜ小さな病変はCT検査の方が優れているのでしょう?
内田さん
空間分解能といって、物と物の距離を認識できる目安があるのですが、MRI検査とCT検査を比較した場合、同程度もしくはCT検査の方が若干優れているとされます。このような性質からも、CT検査は目的の部位に対しての経過観察に向いていると言えるでしょう。
編集部
画像診断は安全なのでしょうか?
内田さん
全ての検査は、患者さんへの苦痛を減らすことが重要だと考えられています。たとえば、腹部に病変があると疑った場合、そのたびに開腹手術はできません。どのような検査でもリスクがゼロとは言えませんが、それ以上にメリットがあると考えていいでしょう。体の外から中の様子を見られる検査は、病気の発見に大きな利点があると言えます。
編集部
最後に読者へメッセージがあれば。
内田さん
医師は患者さんの病気をいち早く発見して、早期の治療に繋げられるようにさまざまな検査をします。また、病気後の経過観察なども含めて、医師が最も適切と判断した検査を受けることになるかと思います。しかし、どのような検査であっても、受診される方にとって不安はつきものです。それが放射線の問題なのか痛みの問題なのか、どのような不安であっても医師や技師に聞いて安心することも大切です。検査を受けるメリットとデメリットをしっかりと把握して、早期発見、早期治療に繋げましょう。
編集部まとめ
医師はさまざまな画像診断を用いて病気の発見に繋げているのですね。画像だけではなく血液検査などほかの検査も含めて、総合的に判断していることを教えていただきました。画像診断では病変の発見はもちろん、病変の進行なども含めて観察しているとは気づきませんでした。いろいろな画像診断の種類について知ると共に、効果的に早期発見できる検査が選ばれていることは安心に繋がりますね。