妊娠線は胸にもできる!? 予防する方法はあるの?
一般的には、おなかに生じる妊娠線。しかし、中には胸やお尻にできたという声も聞きます。はたして、妊娠線の正体はなんなのでしょうか。また、生じてしまう仕組みとは。加えて、有効な予防策はあるのでしょうか。「東京マザーズクリニック」の林先生が、妊娠線の気になる見た目の問題を解決します。
監修医師:
林 聡(東京マザーズクリニック 院長)
広島大学医学部卒業、広島大学大学院医系科学研究科修了。県立広島病院産婦人科副部長や国立成育医療研究センター胎児診療科医長を歴任、アメリカの大学病院への留学歴あり。2012年、東京都世田谷区に「東京マザーズクリニック」を開院。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、日本超音波医学会超音波専門医、日本周産期・新生児医学会認定周産期(母体・胎児)専門医。日本胎児治療学会、日本母体胎児医学会、日本胎児心臓病学会、日本再生医療学会ほかの各会員。
例えるなら、しぼんだ風船のシワ
編集部
妊娠線って、消える説と消えない説があるようですが?
林先生
妊娠線は、一度できてしまうと目立たなくなるものの、完全には消えません。おそらく「消える」と言っているのは、「正中線」のことだと思われます。正中線は、おへその下だけに現れる縦方向の1本線です。これは、やがて消えていきます。
編集部
改めて、妊娠線とはなんでしょうか?
林先生
仕組みとしては、「表皮の伸びに内側の真皮などがついていけず、肉割れしてしまった状態」のことです。見た目上、スイカ模様によく似ています。また、腹部に限らず、お尻や胸など、人により出現部位は異なります。とくに胸は母乳を出すために大きくなりますから、頻発箇所といえるでしょう。
編集部
予想していなかった箇所にも、妊娠線はできるということですか?
林先生
その可能性はあります。妊娠線には、妊娠中に増加したホルモンも関係していて、コラーゲンの生成やお肌のターンオーバーを抑制することが知られています。気付きにくいわずかの張りが、妊娠線を生じさせることもあるのです。
編集部
妊娠線のできやすさに個人差はありますか?
林先生
肌の伸びが顕著な人はできやすいですね。例えば、もともと小柄だったとか、急激に太ったなどが要因です。また、高齢出産でお肌に伸縮性のない場合でも、スイカ模様のような「肉割れ」が顕著になります。
妊娠線が出る前提で、保湿に努める
編集部
妊娠線を出さなければ、後に残りませんよね?
林先生
「特別な予防ケアが必要なのか」という意味ですよね。人によってはなにもしなくても出ないので、難しいところです。ですが、「いずれ出るかもしれない」という前提で、“後に残しにくい予防”をしていくといいでしょう。
編集部
よく聞く妊娠線対策は「保湿マッサージ」ですが?
林先生
保湿は間違いのないところですが、“マッサージ”が必要かと言われると疑問です。なぜなら、表皮だけを伸ばしかねないからです。したがって、単なる「保湿ケア」で十分だと思います。おなかのような特定箇所に限らず、気になるところをすべて保湿してください。
編集部
ほかにも予防策があれば教えてください。
林先生
食事と運動による体重管理も重要で、急激に太ることは「肉割れ」の原因になります。昨今、体重管理を妊婦さんに任せることが多くなってきました。かつてと異なり、元々痩せている女性が多くなってきたためです。グラフにして「見える化」することで、モチベーション維持につながりますので、必要に応じて試してみてください。
編集部
こうしたケアは、いつごろから始めるべきでしょうか?
林先生
おなかが大きくなりはじめてからで、目安としては、妊娠5カ月目前後でしょうか。個人差があるため、保湿ケアのコツも含め、医師や助産師に教えてもらってください。
自然由来の商品に潜む落とし穴
編集部
産婦人科は、妊娠線についてなにをしてくれるのですか?
林先生
保湿剤の処方や正しいケア方法のアドバイスですね。なんらかの加療、例えば注射をして予防するといったことはしていません。日々のケアが主体となりますので、ご自身でおこなっていただくほかないでしょう。
編集部
一般的な保湿クリームなどを使ってもいいのでしょうか?
林先生
妊娠線専用の市販品が出ていますが、私は勧めていません。含まれている成分によっては、アレルゲンへの暴露などが起きかねないからです。例えば、ココナッツオイルでココナッツアレルギーになるような例です。やはり、医療用のローションやクリームのほうが安全といえるでしょう。価格も市販の専用品とほぼ同じです。
編集部
妊娠線が心配で、つい全身に塗っちゃいそうです。
林先生
妊娠中はお肌が乾燥しがちですから、おなかや胸、お尻に限らず、全身に使用していただいて構いません。べたつきが気になる人は、サラっとしたローションタイプを使ってみてください。ご希望に合わせて処方いたします。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
林先生
妊娠線は“生じる”ものではあるものの、きちんと対処できますし、あまり神経質に悩まないようにしていただきたいですね。心配なのは、「もっといいケア方法があったにも関わらず、していなかった」というケースです。皮膚科やかかりつけの産婦人科医に、遠慮なくご相談ください。
編集部まとめ
自宅でおこなう保湿ケアと体重管理に気をつければ、妊娠線は最低限に抑えられそうです。ただし、自己努力が主体となるだけに、間違った方法を取り入れてしまうと、逆効果になりかねません。使用するアイテムの成分なども含め、最初から、医師のアドバイスに頼ってみてはいかがでしょう。
妊娠についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
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