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血液で「がん」や「アルツハイマー 」を早期発見することができるようになるって本当?

 更新日:2023/03/27

「健康な生活を長く送りたい」。これは誰もが思うことではないでしょうか。どれだけ生活習慣に気を付けていても、ふりかかってくるのが病気です。現代では、特に「がん」や「アルツハイマー」といった大きな病気が社会問題になっています。多くの人は、そのような大きな病気に警戒をしていて、予防や早期発見を心がけていますが、実際にはどのような方法があるのでしょうか? 「臨床検査技師」の内田さんにお話を伺いました。

内田さん

監修臨床検査技師
内田 佑介(臨床検査技師)

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昭和医療技術専門学校卒業。医療機器の営業、医療法人での渉外を経て新薬開発業務に進む。データマネージャーとして勤務をした後、国の指定難病である重症筋無力症を発症。その経験から医療情報のあり方に考えを至らせ、早期発見、早期治療の重要性をコラムとして執筆している。現在は、臨床検査技師、フリーランスのコラムニストとして活動中。

血液から病気のリスク判定が可能

血液から病気のリスク判定が可能

編集部編集部

「がん」や「アルツハイマー」などを早期発見できる方法はあるのでしょうか?

内田さん内田さん

「がん」や「アルツハイマー」といった病気の早期発見を目的とした血液検査が既に実用化されています。

編集部編集部

血液検査によって病気が発見できるのでしょうか?

内田さん内田さん

現時点では、病気を“診断”する目的では用いられておりません。現状ではリスク判定といって、病気リスクがどの程度かを調べる検査となります。あくまでスクリーニング検査の一つと捉えていただければと思います。

編集部編集部

スクリーニング検査とはどのような検査でしょうか?

内田さん内田さん

スクリーニング検査とは、「精密検査の対象者を絞ること」を目的とした、病気の可能性がある人を探るための検査です。全ての病気に関する精密検査をおこなえば、より確実に病気の早期発見ができますが、この方法だと受診者の金銭的・時間的な負担が大きすぎるため、現実的ではありません。そこでスクリーニング検査をおこなうことで、精密検査の受診対象者を絞り、効率的に病気の早期発見へつなげることができます。

編集部編集部

その検査だけでは病気はわからないのですか?

内田さん内田さん

あくまでもリスクを判定するだけの検査ですので、この時点では明確な病気かはわからないことが多いですね。医師がさまざまな検査や情報をもとに総合的な判断をし、疑いのある病気や将来発症する可能性が高いかどうかが、この検査からわかります。

リスク判定を可能にしているのは「タンパク質」

リスク判定を可能にしているのは「タンパク質」

編集部編集部

具体的に、血液から何を測定するのでしょうか?

内田さん内田さん

血液の中に含まれる物質の種類や数値を調べます。何かしらの病気を患っている場合、血液の中に含まれる物質にその特徴が表れたり、数値に変化が起きたりするため、病気の可能性が判定できるのです。

編集部編集部

「がん」を早期発見する検査とはどのようなものでしょうか?

内田さん内田さん

アミノインデックス®がんリスクスクリーニング(AICS®)」という検査があり、血液中のアミノ酸濃度を調べることで、がん発症のリスクを評価します。私たちの体を作る「タンパク質」という成分は、約20種類の「アミノ酸」という物質が組み合わさることでできていますが、がん患者は、血液中のアミノ酸のバランスが変化する傾向にあります。そのため、この検査によってがんの発見につながります。

編集部編集部

「アルツハイマー」を早期発見する検査についても教えてください。

内田さん内田さん

MCIスクリーニング検査」という、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)のリスクを判定できる検査があります。アルツハイマー型認知症は「アミロイド」と呼ばれるタンパク質が病気に関連していると考えられていることから、そのアミロイドに関係する複数のタンパク質の量やバランスを測定することで、MCIのリスクを評価しています。

早期発見が自身の命を守る鍵に

早期発見が自身の命を守る鍵に

編集部編集部

これらの検査は、リスクがわかるだけなのでしょうか?

内田さん内田さん

スクリーニング検査では、まだ確実に病気と判定することが難しいため、あくまでリスクを測るための検査になります。ただ、検査の結果はリスク判定として出されますが、高リスク判定だからといって病気にかかっているとは言い切れません。また、同じく低リスク判定だからといって何の病気にもかかっていないということでもありません。医師がほかの検査結果や生活習慣の問診など、あらゆる情報を総合して判断をするものとなります。

編集部編集部

検査費用は、どの程度かかるのでしょうか?

内田さん内田さん

受診する医療機関によって費用は上下しますが、アミノインデックス®がんリスクスクリーニング検査は2万5000円~3万円程度、MICスクリーニング検査は2万円程度といった価格帯で検査を受けることができます。ただし、所属している健康保険組合や民間保険によっては補助対象の場合もあるようです。

編集部編集部

思っていたより高額なのですね。

内田さん内田さん

「がん」や「アルツハイマー」といった病気に対する血液検査は、健康診断などの一般的な検査と違って高度な検査のため、費用はやや高くなります。また、病気の治療ではなく、予防や早期発見目的の検査は保険適用外になるため、全て自己負担となることも費用が高い要因になります。今後この検査が一般化してくれば、費用は徐々に下がるのではないでしょうか。

編集部編集部

早期発見が期待できるほどの効果はないのでしょうか?

内田さん内田さん

健康診断に近いと考えていただければ、受診する価値は十分にあると思います。健康診断も、診断結果で病気のリスクがわかり、そのリスクが高いものはその後に精密検査を受けることで病気の発見につながります。「がん」や「アルツハイマー」の検査は高額で、なかなか気軽に受けられないと思います。しかし、発症リスクがわかれば早期治療を受けることができます。また、発見が遅れてしまうと命が助からない可能性もありますので、例えば中年以上になったら数年に1回受けるだけでもリスクの回避に役立ちます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

内田さん内田さん

生活習慣に気を付けることは、ほかのさまざまな病気の予防にもつながります。検査による直接的な効果だけを見るのではなく、日々の生活の改善などにも利用できるのであれば、価値のあることかもしれません。

編集部まとめ

医学の世界は日進月歩で、新しい検査方法も登場していることを教えていただきました。今後も新しい医学の発展に期待できそうですね。どのような病気であっても早期発見、早期治療が重要なことを改めて知ることができました。自分の健康に興味を持って早期発見に繋がる可能性があるならば、検査結果以上に得るものが大きいのかもしれませんね。

この記事の監修臨床検査技師