胃がんは早期発見できれば1週間で治療が終わるってホント?
「がん」といえば、入院や治療期間が長くて完治までに時間がかかるイメージですよね。できるだけ進行していないうちに、治療していきたいものです。そのなかで胃がんに関しては、早期発見できれば1週間で治療が終わると言われていますが、果たして本当なのでしょうか。胃がんを早期発見する重要性や、どのようにして予防すべきかを、「おおくら内科」の大蔵先生に話をうかがってきました。
監修医師:
大蔵 隆一(おおくら内科 院長)
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部附属順天堂医院消化器内科入局。その後、順天堂大学医学部附属練馬病院消化器内科長・講師、順天堂大学医学部附属練馬病院総合診療科科長・助教授、厚生労働省関東信越厚生局を経た2013年に、東京都中野区に「おおくら内科」を開院。胃カメラのスペシャリストとして、辛くない検査、正確な診断を心がけている。医学博士、日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医関東支部評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。
ステージ1なら1週間で治療が可能
編集部
胃がんは早期治療すると、1週間で治療が終わると聞いたことがありますが、本当ですか?
大蔵先生
はい、本当です。胃がんの進行の程度は、1~4のステージ(病期)に分類することができます。その内のステージ1と呼ばれる早期の状態だと、1週間くらいの短期間で胃がんを治療することができます。
編集部
早期ということは、胃がんはそこまで進行してないということですか?
大蔵先生
まだ、がんが胃の表面にできていたり、粘膜にとどまっていたりする状態です。なお、ステージ2以降になると、がんが粘膜の下の筋肉にまで食いこんでいるため、この状態は早期とは言えません。早期のうちに治療することで、進行する前に対処することができます。
編集部
なるほど。では、具体的に1週間でどのように治療を行うのですか?
大蔵先生
病院に入院をして、その日のうちに手術を行います。手術は胃カメラで体内の様子を観察して、胃の粘膜を切除します。手術時は麻酔を使用するので、痛みは感じません。手術後、入院生活で胃の出血の確認や食事の管理などを行い、経過を観察していきます。切除した深さによって入院日数が変わりますが、だいたい1週間ほどで退院できます。
初期の胃がんは検診で見つかることがほとんど
編集部
お話を聞く限り、早期発見が大事だと思うのですが、胃がんのサインなどはありますか?
大蔵先生
胃がんは早期の段階だと、自覚症状がありません。胃痛や胃もたれなどの症状が出て、医師の診察を受けたときに発覚するケースも少なくありません。ただし、がんが見つかったときには、初期よりも進行している場合が多いですね。
編集部
では、どうすれば胃がんを早期発見することができるのでしょうか?
大蔵先生
人間ドックや健康診断で胃カメラやバリウム検査を受けて、たまたま見つかる人がほとんどです。また、ピロリ菌検査というものがあり、これを行うと胃がんの原因であるピロリ菌の有無が調べられます。20代、30代など若い人は、これでたまたまピロリ菌がいることがわかり、そこから早期の胃がんが発見されるケースもあります。
編集部
なるほど。健康診断の際には、できるだけピロリ菌検査はつけたほうがいいのですね。
大蔵先生
そうですね。若い人はなかなか胃カメラなどの検査を行わないため、ぜひピロリ菌検査をつけてほしいですね。ただ、若い人はピロリ菌の保持者が減っているため、胃がんになる人も少なくなっています。胃がんは50〜60代の男性に多いので、40歳を超えたあたりからは注意が必要です。
早期発見で再発率を下げる
編集部
胃がんを早期で見つけるためには、検診はどれくらいの頻度で受ければよいですか?
大蔵先生
特に異常がなかった人は、2~3年に一度の検査で大丈夫だと思います。ステージ1でも切除したことがある人は、年に一度は検査をしましょう。もし、ステージ1で発見できれば5年で再発しない可能性は82%です。ステージ2で59.3%、ステージ3で38.3%、ステージ4で8.5%と、早く見つかるほど再発率は低くなります。
編集部
一方で、胃がんを予防するために心がけるべきことはありますか?
大蔵先生
再発予防の人は特にですが、慢性胃炎を悪化させないことが大切です。塩分、油っこいもの、アルコールの過剰摂取は気をつけてください。また、禁煙することをおすすめします。あとは定期的にきちんと検診を受けて、小さな変化も見逃さないことが重要ですね。
編集部
最後、読者にメッセージがあればお願いします。
大蔵先生
日本の内視鏡技術は、世界一素晴らしいです。もし治療を受けることになっても、安心してください。胃がんは早い段階で見つかれば治療も早く、再発もしづらいです。初期の段階では進行がゆっくりですが、筋肉にまで食いこむと進行が一気に早くなります。現状で異常がない人でも早期発見のため、定期的な検査は受けるようにしてくださいね。
編集部まとめ
胃がんは粘膜にとどまっているステージ1の段階で発見できれば、1週間という短い時間で治療することが可能です。再発率も早く見つけるほど低いので、そのために大切なのは定期的な検診です。特に若い人は胃カメラやバリウム検査などをあまり受けないため、ピロリ菌検査でピロリ菌の有無を調べるのがよいでしょう。そこから胃がんの早期発見につながることもあります。
医院情報
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アクセス | JR「東中野」駅 徒歩1分 |
診療科目 | 内科、消化器内科 |