年間延べ20万件以上実施! 体外受精の流れや費用相場を教えて!
不妊治療の方法としてメジャーな体外受精。費用がかかりそう、妊娠まで大変そう、というイメージがありますが、実際にどんな治療が行われているのでしょうか。また、不妊症に悩んだら必ず体外受精をする必要があるのでしょうか。田園都市レディースクリニックの河村先生、教えてください。
監修医師:
河村 寿宏(田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長)
採取した卵子と精子を体外で受精させる
編集部
はじめに、体外受精の流れを教えてください。
河村先生
最初に、排卵誘発剤で卵巣を刺激し、卵胞を発育させます。次に、経腟超音波で確認しながら卵胞を穿刺(せんし)し卵胞液を吸引するとともに、その中に入っている卵子を採取(採卵)します。そして、採取した卵子と10万単位の良質な精子を出会わせます。これが体外受精の一連の流れですね。
編集部
なるほど。採取した卵子と精子をその名の通り、体外で受精させるのですね。
河村先生
その通りです。その後、インキュベーターと呼ばれる女性の体内と同じ条件を維持するための装置で、受精卵(胚)をだいたい5〜7日かけて培養します。そして、この胚の中から最も良質なものを子宮内に戻します。
編集部
子宮内に胚を戻した時点で妊娠となるのですか?
河村先生
いえ、必ず妊娠するわけではありません。そこから胚が育たない場合もありますし、流産することもあります。体外受精で出産までできる確率は、日本産科婦人科学会の全国統計によると、30代前半で約20%、30代後半で約10%、40代では10%以下となります。
費用はオプションによってさまざま
編集部
不妊治療にはタイミング療法や人工授精もありますが、どのような人に体外受精がオススメなのでしょうか?
河村先生
子宮内膜症の方や、卵巣内の癒着で卵管閉塞や卵管通過障害を起こしている方、男性の精子の運動率や数に不妊の原因がある方、精子をブロックする抗体がある免疫性不妊症の方、30代後半以降、特に40代以上の方にオススメしています。このような病気や高年齢の方の場合、他の不妊治療よりも体外受精の方が効果的です。
編集部
なぜ、体外受精の方が効果的なのですか?
河村先生
卵管に異常があったり、精子の運動率や数に問題があったりすると、精子が卵子まで辿り着くことができません。また、年齢を重ねるにつれて卵子が老化して妊娠しづらくなっていきます。体内での受精が困難になってくるので、病気や加齢で不妊に悩んでいる方には、タイミング療法や人工授精よりも体外受精が効果的であるといえます。
編集部
気にしている方も多いと思うのですが、予算はどれくらいかかるのでしょうか?
河村先生
先ほど述べた体外受精の流れであれば、最低限で平均30〜40万円くらいだと思います。ただ妊娠の確率を上げるために、これにオプションをつけていくと値段は上がっていきます。
編集部
オプションとはどのようなものなのですか?
河村先生
まず、オプションというよりもむしろ体外受精よりも多く用いられている受精法として、「顕微授精」という、卵子の中に1個の精子を直接注入する方法があります。体外受精を実施しても受精しなかった方や、体外受精を行うだけの十分な良い精子が集まらない方などに行います。
また、オプションとしては、いくつかありますが、受精卵を培養する期間を長くして“胚”を“胚盤胞”まで育ててから、子宮内に戻す「胚盤胞移植」という方法があり、初期胚で移植するよりも胚移植あたりの妊娠の可能性が高くなります。また、培養した胚を一度に子宮に複数戻さず、一部を次回のために取っておく「凍結保存」もオプションのひとつです。これをするともし一度目に妊娠できなくても、凍結した胚を次回使うことができます。また、凍結胚移植の周期のほうが、採卵してすぐに移植する新鮮胚移植よりも妊娠率が高いため、最近では採卵周期での移植をせず、全ての胚を凍結保存する方法もよく行われています。
編集部
妊娠の確率を高めるためのオプションをプラスすると、値段も上がっていくのですね?
河村先生
その通りです。上記の顕微授精、胚盤胞、胚凍結などは体外受精以外に追加でかかる費用です。体外受精も一度で成功する方は4人中1人と言われているので、何度も行うと費用はかさみます。オプションをつけることで、成功率を上げて、負担も減らすことができる可能性があります。
妊娠しやすい環境づくりも大切
編集部
体外受精を行うにあたり、日常生活で気をつけることはありますか?
河村先生
当たり前のことですが、規則正しい生活を送り、妊娠しやすい健康な体でいることが重要です。具体的には適度な運動、十分な睡眠、栄養バランスのいい食生活などですね。ビタミンDや亜鉛が不足していると妊娠しづらいので、積極的に摂取するとよいでしょう。また、赤ちゃんのために葉酸を、サプリでも良いので十分摂取することが推奨されています。
編集部
その他、やめたほうがいい生活習慣について教えてください。
河村先生
喫煙は妊娠に悪影響なのでやめましょう。男性は精子に悪影響を与えますし、女性は卵子の老化を加速させます。また、肥満もマイナス要因です。女性はホルモンバランスの乱れを引き起こし、妊娠しづらくなります。また、妊娠しても高血圧など合併症を引き起こしやすくなってしまいます。ただ、痩せるまで待つと年齢的に厳しくなる場合もありますので、その場合はまず先に少しでも若い時の卵子を採卵して胚(受精卵)を凍結保存し減量後に移植をする方もいらっしゃいます。
編集部
体外受精をするか悩んでいる方に、アドバイスをお願いします。
河村先生
妊娠を望んでいる場合、年齢によって妊娠率が変わることを常に意識しましょう。体外受精も一度で成功するわけではないので、タイミング療法や人工授精が難しい場合、特に年齢が30歳代後半以降の方は、早めに始めることが大事になってきます。不妊治療中は精神的に辛いことも多いのですが、まわりの先生やスタッフに相談すればきっと支えてくれると思います。
編集部まとめ
卵管閉塞や精子異常、40代の人にオススメの体外受精。ベースの費用に加えて、妊娠の確率を高めるためのオプションをつけると、費用も上がっていくようです。オプションの選び方はもちろん、精神的にもストレスがかりやすいので、不安なことはまわりに相談しながら進めるのが良さそうです。
医院情報
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アクセス | 東急田園都市線、横浜市営地下鉄ブルーライン「あざみ野駅」東口より徒歩3分 |
診療科目 | 婦人科/不妊治療 |