【漫画付き】昼食後の激しい睡魔は要注意! 低血糖症とは?
ランチ後から夕方にかけて襲ってくる独特のけだるさ。一般には「消化のため、胃に血液が集まることで、脳に血液が行かないから」などと言われているものの、度を越してけだるさがくると、病気の可能性を疑ってもいいかもしれません。「鈴木内科・糖尿病クリニック」の鈴木先生によると、低血糖症の可能性があるとのこと。医師の間でもなかなか知られていない低血糖症の怖さについて、詳しい話を伺いました。
監修医師:
鈴木 一成(鈴木内科・糖尿病クリニック 院長)
北里大学医学部卒業。日本医科大学付属病院老年内科病棟医長、東京臨海病院糖尿病内科医長などを歴任後の2019年、東京都葛飾区に「鈴木内科・糖尿病クリニック」開院。改善の難しい糖尿病の治療機会を広げるべく、診療に努めている。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本老年医学会老年病専門医・指導医・評議員、日本糖尿病学会専門医・研修指導医。
インスリンのブレーキが効きすぎると失調を起こす
編集部
昼食後にだるさや眠気を感じるのですが?
鈴木先生
軽度なら誰にでもあることですが、だるさや眠気に加え、集中力の欠如や視界のぼやけ、発汗、ドキドキ感などを伴っていたら、「低血糖症」かもしれませんね。このとき、“甘いもの”を食べて落ち着くようなら、いよいよ疑うべきです。人工甘味料ではなく、糖の含まれるアメなどで試してみてください。
編集部
低血糖症とはどのような病気なのでしょう?
鈴木先生
血液中の糖分が異常に低くなることで起きる症状の総称です。どのような症状に至るかは人によって異なり、だるさや眠さに限りません。重度となると、けいれんを起こしたり意識不明状態になったりします。また、もともと血糖値の高い方の場合、標準的な数値でも起こりえます。
編集部
食後の血糖値は上がるものだと思っていました。
鈴木先生
そのとおりです。通常なら、体内から「インスリン」というホルモンが放出され、食後に上がった血糖値を抑えてくれます。ところが、インスリンの効きが鈍くなってくると、過剰にインスリンを放出します。このブレーキが効きすぎた状態を「反応性低血糖症(機能性低血糖症)」といい、その後しばらくすると、血糖値は元の状態へ戻ります。
編集部
食後のどれくらいのタイミングで起きるのでしょう?
鈴木先生
早くて30分、遅くて3〜5時間後といったところでしょうか。また、元に戻るタイミングも人により異なります。元に戻る仕組みとしては、筋肉や肝臓に蓄えられていた糖の放出です。したがって、筋肉の量や肝臓の機能といった個人差が反映されます。
まずは、甘いアメやジュースでセルフチェックを
編集部
昼間の眠気は「睡眠時無呼吸症候群」のせいだと聞いたことがあります。
鈴木先生
低血糖症の特徴は、「糖分の含まれるものを食べると、元に戻ること」。ですから、睡眠時無呼吸症候群との判別は、アメやジュースなどでチェックできます。ただし、自己判別ができたところで解決はしませんから、医師へご相談ください。
編集部
素人診断であれこれ迷う前に、まずは受診ということですか?
鈴木先生
糖負荷試験という検査方法があり、ブドウ糖を飲んでいただいた後の血糖値とインスリンの量を、30分から1時間ごとにはかっていきます。ほか、問診や血液検査などから、睡眠時無呼吸症候群や甲状腺異常といったほかの病気を突きとめていく場合もあります。
編集部
仮に低血糖症だと診断された場合、治療が必要なのでしょうか?
鈴木先生
医学的な治療も可能ですが、食事を中心とした「生活の見直し」をすることが根本解決につながります。なお、アメやジュースなどを常備してもいいのですが、糖分の取りすぎにより、いずれ糖尿病になりかねませんので注意しましょう。
編集部
先生の医院では、どのようなアドバイスをしているのでしょう?
鈴木先生
たとえば炭水化物の量を控える、もしくは炭水化物以外のサラダやスープから食べるなどですかね。食べる物の中身や順序を変えただけで血糖値の増え方が変わることは、論文などでも明らかにされている事実です。炭水化物ばかりの「素うどん」と、肉・野菜類などを含む「天ぷらうどん」でも違ってくるほどです。朝ご飯をコンビニのおにぎりだけで済ませている方は、要注意ですね。
糖質制限の意外な落とし穴
編集部
そもそも、低血糖症になってしまうのはどうしてなのでしょう?
鈴木先生
糖質制限ダイエットなどで炭水化物を食べていないこと、あるいは糖分の取りすぎでインスリンの分泌に異常を起こしていることが考えられます。何事にも「バランス」が大切ですよね。日本糖尿病学会では、「1日の摂取カロリーのうち、その半分は炭水化物で取ること」を推奨しています。もちろん、別の病気が招いている可能性もあるでしょう。
編集部
たとえば、どのような病気ですか?
鈴木先生
腎不全、肝不全、感染症などさまざまです。心因性の拒食症なども含まれます。このようなケースでは、主訴の治療を併用していきます。
編集部
運動不足なども関係していますか?
鈴木先生
関係しています。先ほど申し上げたように、糖分は「筋肉」にも蓄えられるからです。インスリンの働きは、筋肉などに糖分を“貯糖”することなのです。倉庫に該当する筋肉の量が少ないと、運んでもため込んでくれません。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
鈴木先生
まだまだ「反応性低血糖症」自体の認知度が低いので、まずは、「このようなことが起こりえる」ということを知っていただきたいですね。通常の健康診断では、血糖値の平均値を評価するため、なかなか引っかかってきません。食後の自覚から気づくしかないでしょう。心当たりのある方は遠慮なくご相談ください。必要に応じて栄養士さんも交え、「その方に適した」アドバイスをいたします。
編集部まとめ
もしかしたら、昼食後の眠気は、「反応性低血糖症」がもたらしているのかもしれません。本来なら血糖値を正常に保つインスリンが過剰に働きすぎると、体調不良に至るとのこと。いずれは回復するものの、体のバランス機能がおかしくなりかけている「兆し」と捉えるべきでしょう。治りにくい糖尿病になる前に、医師と相談して、生活習慣の改善を試みましょう。
低血糖になる症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
医院情報
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診療科目 | 内科・糖尿病内科・生活習慣病 |