「ピロリ菌を除菌しない方がいい」という意見があるのはどうしてなの?
胃がんの原因になることから、見つかったら「除菌したほうがいい」と言われているピロリ菌。でも、なかには「しないほうがいい」と言う意見もあるようです。胃がんの原因と言われているのに、なぜ除菌をしないほうがいいという意見が出るの? どっちが正しいの? はやま消化器内科クリニックの羽山先生、教えてください!
監修医師:
羽山 弥毅(はやま消化器内科クリニック 院長)
東京医科大学医学部医学科卒業後、同大学病院の消化器内科に入局。静岡県立総合病院の消化器科に勤務後、東京医科大学の消化器内科や内視鏡センターにて助教授に就任。東京、阿佐ヶ谷エリアに内視鏡検査を提供できる施設が少ないため、患者様のニーズに合わせた施設をつくりたいという想いから「はやま消化器内科クリニック」を開業。阿佐ヶ谷の健康増進に役立つため、日々診療にあたっている。日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医などの資格を有する。
胃がんの原因の90%を占める
編集部
ピロリ菌とはそもそもどういうものなのですか?
羽山先生
正式名称はヘリコバクター・ピロリと呼ばれる細菌で、人間の胃に生息します。胃は胃酸で覆われているので、通常は胃に細菌が存在することはできません。しかし、ピロリ菌はアルカリ性のアンモニアを自らつくりだし、胃酸を中和することで胃に生息することができます。そのため胃酸がどんどん薄くなり、胃の粘膜を退化させてしまいます。
編集部
粘膜が薄くなるとどうなるのでしょう?
羽山先生
食べ物の刺激を胃が受けやすくなり、慢性的に炎症を起こしたり胃潰瘍(いかいよう)になったりします。粘膜が薄いことで胃が守られなくなり、傷つきやすくなってしまうのです。
編集部
上述の理由から、ピロリ菌は除菌した方がいいと言われているのですか?
羽山先生
もちろんそれもありますが、1番の理由は胃がんでしょう。胃がんが発症する原因の90%になると言われています。
編集部
胃がんが発症する原因の90%を占めるならば、そうするべきですね!
羽山先生
そうですね。私はピロリ菌がいた場合、そのようにした方がいいと考えています。
除菌後に逆流性食道炎になることも
編集部
ではなぜ除菌しない方がいいという意見があるのですか?
羽山先生
ピロリ菌を除菌すると胃が健康になり、胃酸の量が前よりも増えます。そのため、ごくまれに除菌後、逆流性食道炎になる人がいるのです。そのためそのように言われることがあるのではないでしょうか。
編集部
どのような人が逆流性食道炎になりやすいなどはありますか?
羽山先生
食道裂孔ヘルニアの方は、食道と胃の境目が弱いので除菌後に胸やけを起こす方がいます。ただ、それ以外ですと年齢や性別関係なく、たまたま胃酸の増加より逆流性食道炎になるというイメージです。もしそうなってしまっても、お薬や食生活できちんと治すことができるので安心してください。
編集部
先生は逆流性食道炎のリスクがあっても除菌するべきだと思われますか?
羽山先生
高齢で食道裂孔ヘルニアの持病がない限り、100%やるべきだと考えます。やはり、胃がんが発症する原因の90%を占めるということは、除菌をすれば胃がんになるリスクは確実に減ります。そのため検査で見つかった場合、私は必ず除去をおすすめしています。
毎年しっかり内視鏡検査を
編集部
では除菌をすれば、胃がんになる確率は減るのですね。
羽山先生
そうですね。ただその後もすぐには安心せずに、毎年内視鏡検査を受けるようにしましょう。特に除菌したすぐ後は、見つけにくいがんがある可能性があるので、内視鏡検査を受けた方がいいでしょう。
編集部
なぜでしょう? 胃がんのリスクはほぼ回避されたのではないのですか?
羽山先生
除菌した時点で、すでに早期の胃がんになっている可能性はあります。除菌前や直後はまだ胃が荒れているため、早期のものだと発見できないことがあるのです。安易に安心せず、きちんと毎年内視鏡検査を受けるとよいでしょう。
編集部
なるほど! どれくらいの期間が経てば安心だという目安はありますか?
羽山先生
除菌後の胃がん発生率を見ると、年々発症者は少なくなっていきます。私の経験上、5年後の検査で胃がんが見つからなければ、安心ではないかと思います。胃もたれや胃痛など胃の不調が多い人はピロリ菌がいる可能性があるので、一度検査を受けてみてくださいね。
編集部まとめ
胃がんが発症する原因の90%を占めるとのことですが、除菌後に胃酸が増えることにより逆流性食道炎になることもあるようです。しかし先生からは「胃がんのリスクを減らすためにも、見つかった場合は除菌した方がいい」というメッセージを頂きました。食道裂孔ヘルニアの持病がある場合は胸やけなど起こりやすくなるので、医師に相談してみましょう。
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