敏感肌と乾燥肌の違いは? 対策はどうしたらいいの?
一見すると、同じ肌トラブルに思える敏感肌と乾燥肌。しかし、「鎌倉かまりんヒフクリニック」の福永先生によると、2つは異なる肌質だと言います。だとすれば、症状やケアの方法も異なってくるはずです。詳しい説明を伺ってみることにしました。
監修医師:
福永 有希(鎌倉かまりんヒフクリニック 院長)
浜松医科大学卒業。横浜市立大学附属病院皮膚科入局後、おもに神奈川県内の総合病院や皮膚科へ勤務。2018年、神奈川県鎌倉市に「鎌倉かまりんヒフクリニック」開院。皮膚の発信する「かまってちょうだい!」というアラートに耳を傾けるべく、日々の診療にあたっている。日本皮膚科学会皮膚科専門医。日本美容皮膚科学会、日本アレルギー学会、神奈川県皮膚科医会、日本痤瘡研究会の各会員。
敏感肌と乾燥肌はそれぞれ別の肌質だが、合併しているケースも
編集部
敏感肌と乾燥肌は、違った病態なのでしょうか?
福永先生
明確な定義はなく、“どちらも重なること”が多いですが、それぞれ少し違う病態と考えてよいでしょう。敏感肌は、「肌トラブルを起こしやすい状態」を総称していますが、多くの場合アレルギーが関わっています。対する乾燥肌は、文字通り「乾燥している肌」のことで、アレルギーがなくても起こりうる病態です。
編集部
“どちらも重なること”とはどういうことですか?
福永先生
片方の病態になると、もう一方の病態も発症しやすくなるのです。乾燥した状態が続くと肌はアレルギー反応を起こしやすくなりますし、その一方で、アレルギー反応を繰り返していると肌がより乾燥しやすくなります。
編集部
それぞれ、具体的にどのような症状を伴うのでしょう?
福永先生
敏感肌の特徴は、ささいなことに対して肌が敏感に何らかの反応を起こす状態で、アレルギーが関与するケースでは原因物質(アレルゲン)に肌がさらされて刺激感や赤み、かゆみなどを伴います。乾燥肌の特徴は、肌の水分量が減ってカサカサした状態であり、年齢や気候なども影響します。悪化すれば赤みやかゆみを伴うこともあります。
編集部
どのような対策がふさわしいですか?
福永先生
敏感肌の方は、刺激やアレルゲンを避けることが必要です。しかし、ホコリや花粉など完全に避けるのが難しい場合も多いので、肌の保湿・保護ケアをして肌のダメージを最小限に抑えることも大事です。乾燥肌の方は、肌の保湿対策が大切です。保湿剤を塗る以外に、空調管理や衣類の調整なども気を使うとよいですね。もっとも、多くの場合は合併していますので、両方の対策が必要になるでしょう。
編集部
ちなみに、「アトピー性皮膚炎」はどちらに該当しますか?
福永先生
アトピー性皮膚炎は、敏感肌と乾燥肌が合併している病気とも言えます。アトピー性皮膚炎はアレルギー素因に乾燥しやすい肌質が重なって慢性化し、さらに治りにくい状況に陥ることが多いのです。
編集部
乾燥した肌からアレルゲンを取り込んで、「アトピー性皮膚炎」になるパターンもあるのですよね?
福永先生
経皮感作といって、皮膚についた物質に対して体がアレルギー反応を起こしてしまうことがあります。乾燥した弱い肌ではこのような反応が起こりやすくなっています。昨今、乳幼児期の肌ケアが重視されるようになってきたのも、赤ちゃんの弱い肌から経皮感作が成立してアトピー性皮膚炎を発症するケースがあるからです。
敏感肌は「アレルギー体質」、乾燥肌は「バリア機能の低下」の違い
編集部
敏感肌の人には、何が起こっているのですか?
福永先生
敏感肌はささいな刺激に肌が過敏な反応を起こしますが、体調やホルモンバランス、気候などのストレスが加わるとさらに反応しやすくなります。敏感肌という方に多くみられるのが、化粧品類やダニ・ホコリなどがアレルゲンとなって炎症をおこす接触皮膚炎のタイプ。アレルゲンに触れることで肌の炎症が続きます。敏感肌の人はいろいろなアレルギー物質に注意が必要ですね。
編集部
乾燥肌についても、同様にお願いします。
福永先生
皮膚には外部の刺激から体をまもり、水分を保持するバリア機能があります。乾燥肌はこのバリア機能が年齢や環境などで低下した状態で、水分が蒸散しやすくなっています。さらに、細胞間にできた隙間から外部刺激を受け、炎症をおこしやすい状態のため、化粧品類やダニ、花粉などいろいろな物質に対してアレルギーをおこすようになってしまう可能性があります。乾燥肌と敏感肌はどちらも重なり合うので、どちらの肌質であっても悪化させない注意が必要ですね。
編集部
双方ともに、「バリア機能の修復が欠かせない」と思っていました。
福永先生
多くの場合は敏感肌と乾燥肌を合併しているため、実質、保湿ケアが中心となるでしょう。ただし、合併している方は、アレルゲンを避けることも重要です。
敏感肌も乾燥肌も予防ケアが大切
編集部
家庭でおこなうスキンケアについて、アドバイスをお願いします。
福永先生
先ほども話しましたが、保湿ケアをすることがとても大切です。保湿剤はかぶれないものを選びましょう。塗った部分に赤みやかゆみ、刺激感が出ないか確認してください。乾燥しやすい方はこまめに塗ることをおすすめします。入浴後、着替えのタイミング、かゆい時などに塗るとよいです。
編集部
ほかにもコツがあれば、教えてください。
福永先生
入浴や洗顔時に、体や顔をゴシゴシこすらないこと。こすってしまうと肌のバリア機能を損なってしまいます。ヒトの肌についている常在菌も肌質の維持に一役買っています。常在菌のバランスを乱さないためにも洗いすぎは注意しましょう。
編集部
敏感肌や乾燥肌は、医院での治療を受けるべきでしょうか?
福永先生
かゆみや湿疹を伴うようであれば、早めの治療が大切です。保湿剤の選び方や季節によるアレンジなど、さまざまなアドバイスもいたします。単にお肌が乾燥しているだけで、かゆみなどの症状を伴わなかったとしても、予防ケアはしておきましょう。
編集部
医院で処方される保湿剤は、市販品と異なるのですか?
福永先生
大きくは異なりません。肌質や生活状況にあわせて、保湿剤の種類や使い方を個人ごとにアドバイスしています。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
福永先生
20歳を過ぎたら、誰でも肌の老化現象が始まります。すねや腕、腰回りなどのカサカサが気になり始めたら要注意です。お手入れを欠かさず、肌のバリア機能を保ち、アレルギー反応をおこさせないように用心してください。
編集部まとめ
先生によると、乾燥肌だからといって、イコール敏感肌とは言えないそうです。でも乾燥肌は敏感肌になりやすく、敏感肌は乾燥肌を合併しやすいとのこと。乾燥肌も敏感肌も保湿ケアが大事で、敏感肌ならアレルゲンにも注意しましょう。わからなかったら、皮膚科の医師に相談するのが一番です。
医院情報
所在地 | 〒248-0006 神奈川県鎌倉市小町2-15-11 |
アクセス | JR湘南新宿ライン・江ノ島電鉄線 鎌倉駅 徒歩3分 |
診療科目 | 皮膚科 アレルギー科 小児皮膚科 形成外科 美容皮膚科 |