そもそも「がん」って何が原因なの?
「がん」という言葉自体は知っていても、そのメカニズムや原因となると、疑問に思う人も多いかと思います。そこで、「メディカルブランチ表参道」の古田先生に、詳しい解説をお願いしました。有効とされる予防方法とあわせて、正確な知識を身につけておきましょう。
監修医師:
古田 一徳(メディカルブランチ表参道 院長)
北里大学医学部卒業、同外科入局。その後も北里大学外科を中心とした外科勤務やドイツ留学などで診療経験を積む。2010年には、川崎市麻生区に「ふるたクリニック」開院。2013年、港区北青山に「メディカルブランチ表参道」開院。2016年、法人化に伴い理事長へ就任。日本肝臓学会専門医、日本肝胆膵外科学会名誉指導医、ほか資格多数。
酸素を吸う生物の宿命ともいえる“がん”
編集部
実は「がん」という病気自体、良くわかっていないのですが、何が“悪い”のですか?
古田先生
がん組織は、ほかの組織に必要な栄養分を奪って増殖していきます。また、ひとたび生じたがん細胞は、体のあちこちに転移することがあります。その結果、ますます正常な組織に栄養が届かず、体を衰弱させてしまうんですね。ですから、がん患者さんには必ず体重の減少が伴います。
編集部
例えば肺にがん細胞ができたとして、その部分は肺としての機能を果たしていないのですか?
古田先生
果たしません。がん細胞には「機能がない」のです。仮に、肺が全部がん細胞になったとしたら、呼吸はできなくなります。ほかの臓器も同様で、胃のがん細胞なら消化ができなくなるということです。
編集部
がん細胞ができてしまう原因は?
古田先生
修復機能の異常と言えばいいでしょうか。酸素を吸う生物は、エネルギーを燃やしたときに、「活性酸素」という燃えかすのようなものを生みます。この「活性酸素」が体内にたまっていくと、細胞の遺伝子に障害を起こして、修復機能を正しく働かせなくするのです。その結果、「悪性腫瘍」、つまりがん細胞を生じさせてしまうと考えられています。
編集部
一方の良性腫瘍とは何のことでしょう?
古田先生
正常な組織ではないものの、栄養を奪ったり転移したりといった“悪さ”をしない腫瘍のことです。良性腫瘍ができる原因は、がんと同じく、修復機能の異常です。
活性酸素がたまっていく原因はさまざま
編集部
がん化する要因としては何が考えられますか?
古田先生
総じて言うなら、「体の中の活性酸素が異常に高くなっている状態」ですね。では、何がそうさせているのかというと、さまざまな環境要因が絡んでいます。遺伝要因も考えられますが、5%から25%の影響しかないと考えられています。
編集部
活性酸素を抱えてしまう環境要因について、詳しく教えてください。
古田先生
例えば、日ごろ口にする食べ物です。化学物質はもちろんのこと、牛・豚・羊などの赤肉にも発がん性物質が含まれています。また、アルコールを代謝したときに生じるアセトアルデヒドにも、発がん性が認められています。サプリメントも基本的には人工物なので、取りすぎに注意しましょう。
編集部
食べ物以外についてはどうでしょう?
古田先生
現代社会に多いのはストレスです。また、日本人の場合、がんの原因の約20%は感染によるものです。ほか、環境汚染なども関係してきます。
編集部
運動が健康にいいと聞きますが?
古田先生
その通りです。がんは糖分が大好きで、酸素を嫌います。ですから、運動せず甘い物を食べている方は、がん化のリスクが高まるでしょう。逆に運動で心肺を動かし、体中に十分な酸素が行き渡っていると、予防につながります。なお、酸素と活性酸素は、まったく別物と考えてください。
なぜ、がん患者は年々増え続けているのか
編集部
どれくらいの確率でがんにかかるのでしょう?
古田先生
国立がん研究センターの統計によると、男性ががんになる確率は62%、がんで死亡する確率は25%となっています。女性の場合、がんになる確率は47%、がんで死亡する確率は16%です。ただし、この数値は全体平均であり、臓器によってかなり異なります。
編集部
どの臓器に顕著なのですか?
古田先生
男女全体でみると、大腸、胃、肺の順で罹患(りかん)率が高くなっています。大腸がんが多い要因の一つは、健康診断の精度でしょう。実は、便検査などが陰性でも、大腸がんを発症していることがあります。それだけ発見が難しく、遅れるということです。また、胃カメラに比べて大腸カメラは、下剤をのむ手間や恥ずかしさといった点で、受診されにくいですよね。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
古田先生
がんは、できないほうがいいに決まっています。生活習慣を見直すなど身体への気遣いを心がけていただきたいです。また、がんになる前の段階で血液検査によるリスク判定ができる可能性もでてきました。いちクリニックとしてできることに注力していきます。
編集部まとめ
ほかの組織に必要な栄養分を奪ったり、別の箇所にも転移したり、改めて「がん」は厄介だということがわかりますね。検診に定期的に通うこと、健康的な生活を心がけることなど、できることをやっていきましょう。
医院情報
所在地 | 〒107-0061 東京都港区北青山3丁目9-7 |
アクセス | 表参道駅から徒歩2分 |
診療科目 | 内科・外科 |