【漫画付き】ピルは誰でも飲めるわけではない!? 飲めない人はどうすればいいの?
避妊目的や生理トラブルなど、様々な目的でピルを服用している人が増えています。私も試してみようかな……と思っている女性の方、ちょっと待って。体質によっては副作用で大変なことになるかも!? ピルを服用すべき人と服用すべきではない人の違いを山田ウイメンズクリニックの中﨑先生に伺いました。
監修医師:
中﨑 千晶(山田ウィメンズクリニック)
日本大学医学部を卒業。東京医科大学病院産科・婦人科に勤務する傍ら、山田ウイメンズクリニックで勤務。日本産科婦人科学会認定専門医。日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、日本女性医学学会に所属。西洋医学と東洋医学の両方を取り入れたクリニックで、一人ひとりに寄り添って日々診療にあたっている。
知っておきたい血栓症のリスク
編集部
ピルが飲めない人とはどのような人でしょう?
中﨑先生
服用に際して問診での確認をすることが必要です。血栓性の病気を持っている方やエストロゲンが関わっているがんの疑いがある方(乳がん、子宮がん)、その他重症の心疾患、肝疾患、高血圧症、脂質代謝異常のある方は服用できません。それ以外にも、内服にあたり注意が必要な病気がありますので、当院では問診票を元に年齢、既往歴や家族歴を確認して問題なければ処方しています。
編集部
問診票には、どんな質問項目があるのでしょうか?
中﨑先生
身長・体重のほか、先ほど示したような家族歴や既往歴、社会歴(喫煙の有無など)、薬のアレルギーの有無などです。細かく書いていただくことで、処方して良いかどうかを確認します。副作用の一つに血栓症があるので、安全に服用してもらうための、大切な情報源となります。
編集部
なぜ血栓症のリスクが高くなるのですか?
中﨑先生
ピルに含まれる「エストロゲン」という成分に血液を固まりやすくする作用があるからです。血が固まりやすくなると、血栓症を引き起こす可能性もあるため、特に注意が必要です。
編集部
太っていると服用できないというのも聞いたことがあります。
中﨑先生
そうですね。肥満度が高いほど血栓症のリスクが高くなるため、ピルを飲むとさらにそのリスクが高まります。基本的には、BMI(体重kg÷<身長m×身長m>)が30を超える方は慎重投与となっているため、チェックシートのほかの項目を確認し、処方可能かどうかを最終判断します。
編集部
喫煙者も血栓症のリスクが高くなりますよね?
中﨑先生
はい。そのため喫煙者が服用すると、さらに血栓症のリスクが高まります。特に35歳以上で1日15本以上の喫煙歴のある方は投与禁忌となります。喫煙者の方が希望される場合は、節煙、禁煙することをお話ししています。
女性ホルモンと関係する病歴や家族歴がある人は要注意
編集部
乳がんや子宮がんの人が飲めないのはなぜでしょう?
中﨑先生
乳がんや子宮がんは女性ホルモンが関係した病気だからです。なお、乳がんの家族歴のある方も慎重投与となります。一方で、内服することによって卵巣がんや大腸がんのリスクを下げると言われています。いずれにしても、処方をする方には、婦人科検診を受けていただくようお伝えし、定期的に乳がん検診や子宮がん検診などを行っています。
編集部
子宮筋腫の人は飲めるのでしょうか?
中﨑先生
はい。内服することで子宮筋腫の大きさへの影響は認めないという報告があります。また副効用として月経期間の短縮や貧血の改善が期待できます。ただし、人によって効果が異なる場合があるため、処方するときは他の項目も確認したうえで、処方できるか判断しています。
月経困難症などの生理トラブルはピルで症状改善を
編集部
では、おすすめしたい人はどのような人ですか?
中﨑先生
まずは、生理不順の方ですね。生理が3ヶ月以上来ていない人は無月経の診断となりますから、生理不順になったら早めに婦人科を受診されたほうがいいと思います。
編集部
生理不順以外の症状で生理に悩んでいる人も有効でしょうか?
中﨑先生
そうですね。月経困難症のある方や、生理の量が多くて困るという方にもおすすめです。また、月経前症候群(PMS)という月経前から頭痛がする、落ち込みやすい、いらいらするなど身体的や精神的に不快な症状が起きやすい方は、ピルを飲んでいただくと症状が楽になり、QOL(生活の質)も上がる方が多いです。
編集部
注意点があれば教えてください
中﨑先生
ピルは基本的に月経5日目までに服用を始めます。飲むときは、できるだけ毎日同じ時間に飲むようにしましょう。とくに、飲む時間がバラバラだったり、飲み忘れたりすると、避妊効果が不十分となり、不正出血などの原因になることもありますので注意が必要です。
編集部まとめ
避妊のために処方されることが多いですが、誰でも飲めるわけではなく、「血栓ができやすくなる」体質や生活習慣、病気を抱えている人は、処方できないとのこと。
また、ピルはホルモンが関係する乳がんや子宮がんの病歴や家族歴のある人は処方できないことが多く、子宮筋腫は条件をみながら、処方されます。
実際に飲み始めたときは、毎日同じ時間に飲むことを心がける必要があります。また、血栓ができやすくなっていないか、ホルモン値に問題がないかを、定期的に検査します。定期検査をしっかり受けて、医師のアドバイスを受けながら使用すれば、安全に服用できると同時に、健康管理にも役立つということがわかりました。
医院情報
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アクセス | 京王八王子駅徒歩2分、 JR八王子駅徒歩8分 |
診療科目 | 産科・婦人科・内科 |