子どもも歯周病になる!? いつから気をつけたらいい?
最近、若い世代でも歯周病にかかる人が多くなってきたという。歯周病が時間をかけて重症化していくことを考えると、その発症時期はいつなのだろう。そして、何がきっかけで発症するのか。さまざまな疑問を、むらおか歯科・矯正歯科クリニックの小林英範歯科医師に問い合わせてみた。
監修歯科医師:
小林 英範(むらおか歯科・矯正歯科クリニック)
日本歯科大学卒業。日本歯科大学付属病院臨床研修医、神奈川歯科大学矯正科、栃木県矯正専門医院勤務をへて、2002年からむらおか歯科・矯正歯科クリニック勤務。主に矯正治療を担当している。日本矯正歯科学会認定医、日本顎咬合学会認定医、インビザライン認定ドクターほか。日本矯正歯科学会、東京矯正歯科学会、日本顎咬合学会ほか各学会所属。メディア歴、講演会など多数。
ややこしい「歯肉炎」「歯槽膿漏(のうろう)」「歯周病」の違い
編集部
子どもも歯周病になるのでしょうか、大人の病気というイメージがあります
小林先生
歯が生えていれば、年齢にかかわらず歯周病になる可能性はあります。歯の周りの病気が「歯周病」ですからね。これに対し、歯のないところの歯茎が炎症を起こすケースは、「歯肉炎」と呼ばれます。かつては歯周病と歯肉炎をともに「歯槽膿漏(しそうのうろう)」と呼んでいましたが、いまは分けて考えています。
編集部
そもそも歯周病とはどういった病気なのでしょう?
小林先生
歯周病菌が食べ物のカスなどでできた歯垢に住み着くと、そこから毒素を放つようになります。この毒素が歯茎などの炎症を起こすのです。歯周病菌には、住まいとなる歯が必要。逆に言うと、歯のないうちは発症しません。
編集部
乳歯であっても、歯周病は発症すると?
小林先生
そういうことですね。また、歯の生え始めに起こる歯周病と似たような症状を「萌出性(ほうしゅつせい)歯肉炎」と呼ぶことがあります。名前からすると歯肉炎ですが、メカニズムとしては歯周病と同じです。乳歯や永久歯のほか、親知らずでも発症することがあります。
日常生活に潜む、歯周病の“甘い”ワナ
編集部
歯周病は、いつごろから気をつければいいのでしょう?
小林先生
萌出性歯肉炎に関していえば、乳歯が生えてくるころからですね。ただし、小さなお子さんは唾液が多く、菌を洗い流してくれるので、かかりづらい傾向にあります。本当に注意したいのは、自分で甘いものを食べ始める時期でしょう。永久歯が生え替わるタイミングとほぼ一致しています。
編集部
子どもの場合、何がきっかけで歯周病を発症するのですか?
小林先生
先天的と後天的な要因があります。先天的な要因としては、汚れがたまりやすい歯並びなどです。後天的な要因は、ご家族からの経口感染が代表的でしょう。例えば、おかずをそれぞれの箸で取りあうと、歯周病に感染している人の菌がおかずを介してお子さんに移ります。ほか、ペットボトルを回し飲みしたり、一口食べたおまんじゅうを分けあったり、さまざまなケースが考えられますね。
編集部
衝撃的です。かなり気をつけなくてはいけないことがありそうですね?
小林先生
その人のお口のリスクは、5歳までに決まります。5歳時の菌の数が一生続くと思っていいでしょう。そのときにむし歯菌が多ければ、成人になってからもむし歯に悩まされます。そうならないよう、平素から歯科医師とコミュニケーションを取り合い、いろいろと教えてもらってはいかがでしょうか。
編集部
歯周病についても、5歳までの環境が、その後を左右すると?
小林先生
その通りです。チョコやアメなどは食べさせず、存在そのものを知らせないほうがいい。小学校に上がって、友だちが食べているのを見て、「そんなお菓子があったんだ」って(笑)。反動でチョコが好きになるかもしれませんが、きちんとした歯みがきができていれば大丈夫です。
親と歯科医院のダブルケアで、子どもの歯を守る
編集部
歯みがきの話が出ましたが、さらに詳しく教えてください
小林先生
小さなお子さんには、お母さんが仕上げ磨きをすると思います。このとき、きちんと歯科医院で、仕上げ磨きの正しいやり方を教わってください。自己流ではダメです。お子さんの多いご家庭の場合、「忙しくて、手がかけられない」という方がいらっしゃいますが、その子の一生の問題ですから徹底しましょう。
編集部
ブラッシングの簡単なチェック方法はありますか?
小林先生
歯の汚れに反応する染め出し薬が市販されています。ただし、チェックした後の色落としが大変なんですよね。歯科医院なら専門の器具をそろえていますし、定期的な検診でチェックするのが一番いいでしょう。
編集部
ほか、生活習慣上のアドバイスがあれば
小林先生
お菓子のだらだら食べは控えたいですね。お口の中の菌へエサを与え続けているようなものですから。食事を規則正しく取り、食べ終わって30分くらいしたら歯みがきをします。食べた直後のお口の中は、菌を食べ物と一緒にのみこむので、比較的きれいな状態です。食後にあわてて歯みがきをする必要はありません。一方、食後の口の中は酸性に傾いているため、唾液によって中和させる時間もほしい。このバランスが30分ということになります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします
小林先生
ぜひ、小児歯科専門の先生とコミュニケーションを取ってください。ひとつでもふたつでも正しいヒントをもらって、家庭で実践してみてはいかがですか。大学病院は紹介がないと行けなくなってしまいましたので、専門医の集まる街のクリニックを選びましょう。
編集部まとめ
生涯の口腔環境は5歳で決まるとのこと。5歳の子どもは自分で何もできませんので、それだけご家族のフォローやケアが求められます。とくに歯周病は、気付かないうちにゆっくり進行していく病気です。「歯が痛いとは言っていないし、歯周病なんて関係ない」と思い込まず、子どもでも歯科医院の定期検診を受けるようにしてください。
医院情報
所在地 | 〒272-0822 千葉県市川市宮久保1-23-23 |
アクセス | 矯正治療の方はクリニックと「市川駅」「本八幡駅」「市川大野駅」間の無料送迎あり(要予約) |
診療科目 | 一般歯科・矯正歯科・口腔外科 |