【漫画付き】緑茶が緑内障の予防になるってホント?
監修ドクタープロフィール:
西岡 大輔(川崎おぐら眼科クリニック 院長)
鹿児島の名門ラ・サール高等学校から杏林大学医学部に入学。卒業後は名古屋逓信病院、東京大学医学部眼科で研修医として研鑽を積む。その後、宮田眼科医院、関東労災病院を経て、2014年に川崎おぐら眼科クリニックを開院。「患者様と向き合う」をモットーに地域の眼科医療向上に尽力するかたわら、非常勤医師として横浜南共済病院にも勤務。赤ちゃんの頃から診察している患者様の成長を我が子のように温かく見守る子ども好きの一面を持つ九州男児。日本眼科学会 眼科専門医。
医学雑誌に掲載された「緑茶と緑内障」の研究報告
まずは「緑内障」について基本的なことを教えていただけますか?
緑内障とは目から脳への視覚信号を伝達する視神経が損傷していく眼疾患です。進行すると視野欠損が拡がり、失明の原因となります。
米疾病管理予防センター(CDC)によると、現在緑内障は失明原因の第2位です。そのため、緑内障を治すことはもちろん、進行の抑制や予防に関しても研究がさかんに行われています。しかし、現時点では緑内障を完治する治療法は見つかっていません。
完治しないということは、緑内障にならないようにすることが大切ですね
そうですね。皆さん緑内障にならないようにするにはどうすればいいか、気になるところだと思います。そこで、今回は予防法のひとつとして「緑茶」についてお話ししたいと思います。ちなみに、私の出身地である鹿児島県は全国第2位のお茶の生産地としても有名なんです。
いつも飲んでいるあの「緑茶」ですか? 詳しく教えてください
そうです。皆さんも日ごろよく飲んでいるこの緑茶と緑内障のリスクとの関連を調べようという目的で行われた小規模研究の報告が、2017年末”British Journal of Ophthalmology”に掲載されました。この研究は米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のAnne Coleman氏が実施したものですが、データに関しては、米国の疾病対策センターの下で国立健康統計センターが定期的に行っている「米国国民健康栄養調査(NHANES)」を用いて検討されています。
「緑茶を飲んでいれば緑内障にならない」とは言えない
研究の結果はどうだったんですか?
研究報告では、「毎日、温かいお茶を1杯以上飲む習慣をもつ人々の場合、習慣を持たない人々と比べ緑内障のリスクが74%低い」との結論でした。
これだけを見ると「効果があるんだ!」と思いがちですが、研究されたColeman氏自ら、「温かいお茶」以外の要素ももちろん考えなければいけないし、今後より大規模な調査を行って、徹底的に検証する必要があるとおっしゃっています。
温かいお茶を飲んでリラックスすると血流が良くなるといったこともプラスに働いているのでしょうか?
もちろん、そういう可能性もないとは言えませんし、逆にお茶以外の要因が影響していることも考えなければなりません。だからこそ研究者自身もさらなる研究と検証が必要だと言っているわけです。
しかも、研究報告で述べられているのはあくまで”Tea”についてです。つまり紅茶か緑茶なのかということも記されていません。
そうすると、緑茶に含まれるカテキンやビタミンCがいいとか、そういうことが証明されたわけではないんですね?
そういったことは触れられていません。
結局のところ、緑茶は緑内障予防に効果があるんでしょうか?
今回の研究報告からわかることをまとめると、緑内障の予防効果はあるかもしれない。しかし、だからといって緑茶ばかり飲んでいれば緑内障にならないとは言えない、ということになります。
サプリメントや食品はあくまで補助的なもの
緑茶のほかに緑内障に効くと言われる飲み物や食べ物はありませんか?
よく知られているのはブルーベリーやカシスに多く含まれるアントシアニンでしょうか。患者さんの間でもよく飲まれています。ただし、これはあくまでサプリメントであり、医薬品のように効果が証明されているものではありません。
逆に緑内障によくないものはありますか?
しいて言えば、糖尿病にならないような食生活を心がけることでしょうか。少なくとも体に良くないとわかっていることは、緑内障に限らず避けたほうがいいでしょう。
最後に、注意点やメッセージなどがあればお願いします
はじめに「緑内障を完治する方法はまだ見つかっていない」と言いましたが、適切な治療をすれば進行を抑えて生活の質を維持することはできます。緑内障は特に初期の段階では自覚症状が出にくいので、1年に1回は眼科で検査を受けていただくということが大切です。
編集部まとめ
単なる俗説ではなく、緑茶と緑内障の関係を学術的に調べた研究があったというのは驚きでした。今の時点ではまだはっきりしていないことが多いようですが、医学の進歩はまさに日進月歩。研究が進めばこれから明らかになることがあるかもしれません。
西岡先生によれば、初期の緑内障は自覚症状が現れにくいとのこと。定期的に検査を受けて早いうちに見つけることが大切ですね。皆さんも年に1回は眼科で検査を受けるようにしてみてはいかがでしょうか?
医院情報
医療法人社団 川崎おぐら眼科クリニック
電話番号 044-599-1212
住所 神奈川県川崎市幸区小倉5-19-23
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JR南武線「尻手駅」からバス5分、「矢向駅」からバス12分
東急東横線「綱島駅」からバス15分
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【月~金】9:00~12:30 14:30~18:00
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診療科目
・一般眼科
・小児眼科
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