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子宮頸がんってどんな病気?初期症状から検査方法まで解説

 公開日:2024/04/24
子宮頸がんってどんな病気?初期症状から検査方法まで解説

近年、若い女性の発症率が増えてきているといわれる子宮頸がんですが、メディアや人づてに「若いうちから子宮頸がん検診を受けたほうがいい」「子宮頸がんワクチンを接種したほうがいい」などのことを聞いたことがある人も多いでしょう。なかには、「がんになるのは怖いけど、ワクチン接種による副反応も心配だから、受けるのは不安だ」という人もいるようです。

そこで、子宮頸がんワクチンはなぜ必要なのか、きちんと知って正しく予防できるように、「子宮頸がん」と「子宮頸がんワクチン」について、その概要から必要性などをご紹介します。

阿部 一也

監修医師
阿部 一也(医師)

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医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

子宮頸がんとは

子宮頸がんとは
子宮頸がんは、年間では1万人が罹患し、約2800万人が死亡している、女性だけが罹患するがんです。50歳未満の世代での患者数が多く、特に最近では30代で罹患する人も増えてきており、「若い女性が気を付けるべき病気」といえるでしょう。また、似たような言葉に「子宮がん」「子宮体がん」がありますが、それらもあわせて説明します。

子宮頸部にできるから子宮頸がん

子宮は、胎児が育つ部分である「子宮体部」と、子宮体部と腟とを繋ぐ「子宮頸部」でできています。この「子宮頸部」にできるがんが、子宮頸がんと呼ばれます。

多くは、AIS(上皮内腺がん)やCIN(子宮頸部上皮肉腫瘍)・CIS(上皮内癌)という、がんになる前段階を経てからがんになりますが、この段階では自覚できる症状もなく、発見は簡単ではありません

主にヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因とされており、HPVは子宮頸がんの原因ではありますが、珍しいウイルスではなく、性交渉の経験がある女性のうち50~80%は、HPVに感染していると推計されています。もちろん、感染したら全員ががんを子宮頸がんを発症するわけではありません。

HPVに感染した女性のうちの一部は、感染した細胞に異常が出て、前がん病変となります。この後にウイルスがいなくなることで正常な細胞に戻ることもありますが、この時期には自覚できる症状もないため、検診で見つけ、対処する必要があります。

そして、この細胞の異常が数年〜数十年かけてがん細胞となり、子宮頸がんとなるのです。

このHPVは性交渉によって感染することがほとんどです。性交渉を経験する年齢が低年齢化してきていることも若い世代の罹患率をあげている一因と考えられています。

比較的若い世代で発症することが多いことから、子育て世代で発症し、子供を残して亡くなる人も多い病気です。

 

「子宮がん」とはどう違う?

という言葉を聞いたこともあるでしょう。子宮がんは、子宮頸部にできる「子宮頸がん」と、子宮体部にできる「子宮体がん」の総称です。

「子宮体がん」は、子宮内膜から発生するため、「子宮内膜がん」とも呼ばれます。妊娠出産を経験する頃の若い世代の発症が多い子宮頸がんと違い、子宮体がんは閉経後の50〜60代で発症することが最も多いです。また、5年相対生存率は81.3%です。対して子宮頸がんの5年相対生存率は76.5%となっています。

子宮頸がんのワクチンはなぜ重要?

子宮頸がんのワクチンはなぜ重要?
一般的に「がん」というと、予防できない病気というイメージがあるかもしれません。しかし、子宮頸がんに関してはがんの中でもワクチンが有効とされている、数少ない病気です。子宮頸がんの予防におけるワクチンの重要性について、子宮頸がんの特徴を踏まえながら様々な観点から説明します。

 

子宮頸がんは予防しやすい癌

先述したように、子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因であり、その感染経路はほとんどが性的交渉です。

発がん性HPVの中にも種類があり、その中でもHPV16型、HPV18型は、特に前がん病変や子宮頸がんへ進行する可能性が高く、またその速度も早いとされています。しかし、このHPV16型、HPV18型への感染はワクチンによって予防することができるのです。

子宮頸がんで重要なのは、原因であるHPVに感染しない=がんにならないという1次予防、そしてがん検診によって早期に前がん病変、子宮頸がんを発見・治療することで進行、死亡といった深刻な事態を避ける2次予防の2軸です。

子宮頸がんのワクチンとは?

子宮頸がんのワクチンとは?
子宮頸がんのワクチンとは、どういったものなのでしょうか。その種類や接種のタイミングなどを解説していきます。

子宮頸がんを引き起こすHPVへのワクチン

国内では、2価、4価、9価の3種類のHPVワクチンが承認されています。2価ワクチンは子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型の予防に効果的なワクチンです。4価HPVワクチンは、2価ワクチン同様に16型と18型、さらに良性の尖形コンジローマの原因となる6型・11型の4つの型に効果的なワクチンです。9価HPVワクチンは、それらに加えてさらに5つの型が予防対象となっており、2価および4価ワクチンによって60~70%、9価ワクチンによって約90%の子宮頸がんが防げると考えられています。

 

子宮頸がんワクチンはHPV感染前に受ける必要がある

子宮頸がんワクチンは、厳密に言えば「子宮頸がんにならないようにする」のではなく、その原因となっているHPVへの感染を予防するものです。

すでにHPVに感染した細胞からHPVを排除する効果はないため、HPVに感染する前にワクチンを接種する必要があります。また、先述したように、HPVへの感染経路はほとんどが性交渉であるため、初めての性交渉を経験する前に接種を受けることが最も効果的です。

 

子宮頸がんワクチンは一定の間隔をあけて2~3回の接種が必要

HPVワクチンは、一定の間隔をあけて複数回接種する形がとられています。もともと定期接種で扱われるのは2価、4価ワクチンのみでしたが、2023年の4月から、9価も取り扱われるようになりました。原則として定期接種では種類を混合して受けることはできず、同じ種類のワクチンを2回、もしくは3回接種します。途中から9価ワクチンの接種に変更したい場合は、医師と相談の上、検討されることになります。

ワクチンの接種のスケジュールは、そのワクチンの種類と年齢によって違います。

・2価ワクチン(サーバリックス)
2価ワクチンは年齢によるスケジュールの変動はありません。1回目の接種から1か月以上あけて2回目を接種し、さらに1回目から5か月以上、かつ2回目から2か月半以上あけて、3回目を接種して完了です。

・4価ワクチン(ガーシタル)
4価ワクチンも、年齢によるスケジュールの変動はありません。1回目の接種から1か月以上あけて2回目を接種した後、2回目から3か月以上あけて3回目を接種し、完了です。

・9価ワクチン(シルガード9)
9価ワクチンは、1回目を接種した時の年齢に応じてスケジュールが変動します。

15歳未満で1回目の接種を受けた場合は、5か月以上あけてから2回目を摂取し、完了です。

15歳以上になってから1回目の接種を受けた場合は、1か月以上あけて2回目を接種し、さらに2回目の接種から3か月以上あけたタイミングで3回目の接種をして完了となります。

また、これらHPVワクチンは接種完了まで1年以上経ってしまっていても、一定の効果があるとされているため、規定回数ぶんを接種すれば問題ありません。ただ、予防の効果を高めるという意味では、やはりスケジュールに則ってなるべく早く接種を完了させるのが望ましいでしょう。

 

子宮頸がんワクチンは公費での接種が可能

小学校6年から高校1年相当の女子は、予防接種法に基づく定期接種として、公費によりHPVワクチンを接種することができます。
現在公費で受けられるHPVワクチンは、2価ワクチン(サーバリックス)と4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類です。

 

過去に接種できなかった人向けのキャッチアップ接種も

2011年から費用助成により接種が広まり、2013年4月からは公費による定期接種が行われてきたHPVワクチンですが、2013年6月から約9年間にわたり、副反応が疑われたことにより接種の差し控えが続きました。

その後、ワクチンの安全性や効果が国内研究や海外での例などによってより明確になったことで、2022年から、接種が推奨されるようになりました。この接種が差し控えられた期間で接種のタイミングを逃してしまった女性を対象に、無料のキャッチアップ接種が行われています。

1997年4月2日から2007年4月1日生まれで過去にHPVワクチンの接種を3回受けていない女性は、無料で2価、4価、9価のワクチン接種を受けることができます

子宮頸がんはワクチンと検査が重要

子宮頸がんはワクチンと検査が重要
ここまででお伝えしてきたように、子宮頸がんは、HPVワクチンの接種によってある程度予防が可能ですが、完ぺきではありません。子宮頸がんの予防は、ワクチンによる1次予防と、検診による早期発見・早期治療の2次予防の2軸で行う必要があるのです。

定期的な子宮頸がんの検診は、子宮頸がんやその前段階である前がん病変の発見・治療を可能にし、進行を遅らせたり、より体への負担を軽減することが可能となり、結果としてそれからの生活や命を守ることになるのです。

 

子宮頸がんの症状に気づくころには進行している

子宮頸がんは、初期症状がないのが恐ろしいところです。子宮頸がんの自覚できる症状としては、生理や性交時以外での出血や、おりものの異常、下腹部痛などがありますが、こういった症状が見られる時には、既に進行してしまっていることがほとんどです。このような異変が見られた際は、速やかに医師の診察を受けましょう。

子宮頸がんは、早期に発見・治療できれば、治癒しやすいがんです。発見が遅れれば治療時の体の負担も大きくなり、子宮を摘出しなければならない可能性も出てきます。そうでなくとも、妊娠出産に悪影響が出たり、後遺症に悩まされる可能性もあります。「症状もないし、健康だし、自分は大丈夫」と思わず、定期的な検診を心がけましょう。

 

子宮頸がん検診

子宮頸がん検診は、厚労省によってその方法が定められており、20歳以上の場合、2年に1度受けることが推奨されています。また、多くの自治体で公費による費用負担があり、自治体から検診が受けられる医院や時期、その方法などが案内されている場合もあるので、調べてみましょう。なお、検診は基本的に予約が必要となります。
  

ここでは、子宮頸がん検診の内容や種類について、検診の流れに沿って紹介します。

問診

まずは問診から始まります。問診では、直前の生理や生理周期を聞かれます。あらかじめ確認しておきましょう。また、妊娠出産の経験や性交渉の経験の有無、初潮年齢なども確認されます。少し答えにくいかもしれませんが、大切なことなので、正しく伝えましょう。不正出血やおりものの異常の有無など、気になることがあればここで伝えておくとよいでしょう。

検診

検診では、下着を脱いで内診台に上がります。スカートやワンピースなどで受けると、着脱が楽でよいでしょう。内診台は、ゆったりとしたイスのような形をしていますが、脚を開いた状態で背もたれが倒れるようにできており、お腹のあたりでカーテンなどによって目隠しされていることが多く、診察に関わる医師や看護師とは顔が見えない状態になっています。

その状態で、腟内にクスコという機具を差し入れ、子宮頸部の状態を医師が視診します。その後の内診では、腟内に指を入れた状態でもう片方の手で腹部を圧迫し、子宮の大きさや位置、動き、痛みの有無などを確認します。

細胞診

やわらかいへらやブラシのような専用の道具で、医師が子宮頸部の細胞をこすりとります。採取自体は1〜2分で済むでしょう。人によっては多少の違和感や痛みを感じる可能性がありますが、緊張せず、リラックスして受けてくださいね。また、少し出血する場合もあるので、心配な場合はナプキンを持参しておくと、検診後に下着が汚れることもありません。

その後、1〜2週間で検診結果は出ます。郵送の場合もあれば再度医院に聞きに行く場合もあるので、検診を受けた医院で確認しておきましょう。

子宮がん検診の結果は、「精密検査不要」もしくは「要精密検査」のどちらかです。「要精密検査」は、あくまでより詳しい検査が必要という状態であり、必ずしもがんというわけではありませんが、1か月以内にすみやかに精密検査を受けましょう。また、「精密検査不要」の場合でも、その後も2年に1回は検査を受けることが推奨されています。

必要に応じて精密検査

検診で「要精密検査」となった場合は、精密検査を受ける必要があります。検診を受けた医院では精密検査を行っていない場合もあるので、確認し、精密検査の受けられる医院での予約・検査が必要です。

精密検査では、コルポスコープと呼ばれる腟拡大鏡を使った「コルポスコープ診」が行われます。医師が子宮頸部をより詳しく見て確認し、異変があれば組織を採取して顕微鏡で調べ(組織診)、がんやCINかどうかを判断します。
また、「ハイリスクHPV検査」では感染しているHPVの型ががんリスクの高いものなのかの確認を行います。

 

まとめ

まとめ
子宮頸がんは、若く健康であっても女性であれば多くの人が罹患する恐れのある病気です。
しかし、初期症状がないゆえにそれに気づかず、気付いたときには進行していた、というケースに陥りやすいため、正しい知識と行動で予防と早期発見を心がけることが重要です。

がんの中でも、子宮頸がんは効果が期待できるワクチンがあり、早期発見で治癒しやすいがんです。子宮頸がんワクチンを正しく知り、有効活用することで、自分自身の体や生活、声明を守ることができます。自分の命や健康を守るのは、自分自身です。特に若い女性の皆さんは、ワクチン接種や検診の意味をよく考え、より良い方法を選択してください。

この記事の監修医師