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梅毒が重症化するとどうなる?梅毒の進行に伴って出現する症状についても解説!

 公開日:2024/05/10
梅毒 重症

梅毒が進行し重症化すると、どのような症状が現れるのでしょうか?また、梅毒の治療法や予防法はあるのでしょうか?
本記事では梅毒の重症化について以下の点を中心にご紹介します。

梅毒の発生頻度
梅毒の進行と症状
・重症化した梅毒の症状

梅毒の重症化について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

そもそも梅毒とは

そもそも梅毒とは
梅毒は、性感染症であり、トレポネーマ・パリジウムという細菌が原因です。
性行為や母子感染によって伝染し、進行すると重篤な障害を引き起こす可能性があります。
梅毒は江戸時代から知られており、適切な医療により対処可能な病気となっています。
感染者数の増加が懸念されており、早期の診断と治療が重要です。
梅毒に感染した場合は、適切な医療機関での検査と治療を受けることが必要です。

梅毒の発生頻度

梅毒の発生頻度
近年、日本では梅毒の感染が増加しており、2018年には年間累積報告数が6,923人に達しました。
特に20-50歳代の男性と20-40歳代の女性で感染が増加しており、男性では性交渉による感染割合が異性間で増加しています。
2019年には母子感染数が過去最多となり、特に20代の女性感染者が著しく増加しています。
これには性風俗産業の拡大や外国人観光客の増加が影響しているとの報告もあります。

梅毒の進行と症状

梅毒の進行と症状
梅毒が進行すると、どのような症状が現れるのでしょうか?
以下では、梅毒の進行と症状について詳しく解説します。

第1期

梅毒の1期の特徴的な症状は、感染から数週間後に現れる初期硬結と呼ばれる病変です。
初期硬結は、赤く腫れた小さなしこりやびらんのようなもので、直径1〜2cm程度あり、無痛性です。
感染部位にできることが多いですが、感染経路によっては他の部位にもできることがあります。
初期硬結は梅毒の特徴的な症状であり、感染の有無を確認するために重要です。

第2期

第2期の梅毒は、第1期の潰瘍が治癒した後、約2週間から6ヶ月の間に発症します。
この段階では全身に発疹や粘膜の炎症が顕著に現れ、特に手足のひらや足の裏に広がる発疹や口腔、性器の潰瘍が現れます。
全身症状としては、発熱、リンパ節の腫れ、頭痛、関節痛などが見られます。症状は患者によって異なり、重症化することもあります。

第3期

梅毒の第3期は、感染から数年後に発症するといわれています。
梅毒の細菌は体内で増殖し続け、内臓や骨、関節などに慢性的な炎症や損傷を引き起こします。
第3期の梅毒の症状は以下のようなものです。
・ゴム腫:皮膚や粘膜にできる、ゴムのように柔らかいしこりです。痛みはないか、あっても軽度ですが、破れると悪臭を放ちます。ゴム腫は鼻や口、喉、耳などにできると呼吸や嚥下、聴覚などに障害を与えます。
・骨梅毒:骨や関節に炎症や破壊が起こります。夜間に激しい痛みを感じることがあります。骨梅毒は頭蓋骨や胸骨、脊椎などに多く見られます。
・内臓梅毒:肝臓や脾臓、腎臓などの内臓に炎症や損傷が起こります。黄疸や腹痛、腹水、血尿などの症状が現れることがあります。内臓梅毒は死亡の原因となることもあります。

第4期

第4期梅毒は、最初の感染から10年以上経過している末期状態を指し、梅毒によって心臓血管や中枢神経が深刻に侵されています。
この段階では動脈瘤や大動脈破裂などの重篤な症状が珍しくなくなります。
特に心臓血管系や中枢神経系の侵害が進行し、大動脈瘤の形成や大動脈破裂が起こることが報告されています。
第4期梅毒は神経障害を引き起こすことも多く、進行麻痺や痴呆などの症状が現れます。
第4期の状態まで進行すると、日常生活が困難となり、治療によって命を取り留めたとしても多くの場合後遺症が残ります。改善が極めて難しく、死に至ることもあります。

潜伏期

梅毒の進行において注目されるのが「潜伏期」であり、梅毒血清反応が陽性でありながら症状が認められない期間を指します。
潜伏梅毒は早期顕症梅毒1期と2期の間、および2期の症状消失後にみられます。
感染後1年以内を早期潜伏梅毒、感染後1年以降を後期潜伏梅毒と呼びます。
早期潜伏梅毒は再び2期に移行する可能性があるため感染性がありますが、後期潜伏梅毒は性的接触での感染性がほぼないとされています。
潜伏期には前期(感染後1年未満)と後期(感染後1年以上)があり、症状や徴候はほとんど現れません。しかしながら、血液検査によって抗体が検出されるため、ルーチンな血液検査が行われた際に初めて診断されることがあります。

重症化した梅毒の症状

重症化した梅毒の症状
梅毒の治療を受けないと、どのような症状が現れるのでしょうか?
以下では、重症化した梅毒の第4期の症状について詳しく解説します。

心血管梅毒

細菌が心臓や血管に感染し、重大な合併症を引き起こすことがあります。
これを心血管梅毒と呼びます。
心血管梅毒は、感染から数年から数十年後に発症することがありますが、症状は自覚しにくいことが多いです。心血管梅毒の主な症状は以下のようなものです。
・大動脈瘤:大動脈の壁が細菌によって弱くなり、膨らんで破れることがあります。大動脈瘤は突然死の原因になります。大動脈瘤は胸部X線や心エコーなどで診断できます。
・弁膜症:心臓の弁が細菌によって炎症や破壊を受け、正常に開閉しなくなることがあります。弁膜症は心不全や心内膜炎などを引き起こします。弁膜症は心雑音や心エコーなどで診断できます。
・冠動脈疾患:心臓に血液を送る冠動脈が細菌によって狭窄や閉塞されることがあります。冠動脈疾患は狭心症や心筋梗塞などを引き起こします。冠動脈疾患は心電図や冠動脈造影などで診断できます。
心血管梅毒は、抗生物質治療によって細菌を殺せますが、すでに起こった障害は回復することが難しい場合が多いです。

神経梅毒

感染した細菌が脳や脊髄に侵入し、神経系に重篤な障害を引き起こす神経梅毒は、感染から数年から数十年後に発症し、症状は徐々に進行します。
脳性梅毒と脊髄性梅毒と呼ばれる2つの病型に分かれます。
・脳性梅毒:脳に感染した細菌が炎症や損傷を引き起こし、頭痛、めまい、記憶障害、認知障害、精神障害、視覚や聴覚の障害などが現れます。進行すると発作や麻痺などの運動障害が生じ、死に至ることもあります。
・脊髄性梅毒:脊髄に感染が及び、下肢の筋力低下、感覚障害、歩行障害、自律神経障害、性機能障害などが発生します。進行すると下半身の麻痺や感染性の合併症も見られます。
神経梅毒は抗生物質治療によって細菌を殺すことは可能ですが、既に起こった神経系の障害は回復が難しく、予後が悪いとされています。

梅毒の検査・診断

梅毒の検査・診断
梅毒の検査方法にはどのような種類があるのでしょうか?梅毒の検査・診断について詳しく解説します。

非トレポネーマ試験

非トレポネーマ試験では、梅毒の原因菌によって破壊された組織から出る自己抗体と反応する物質を用いて、梅毒の感染の有無や活動性を判定します。具体的な検査としては、RPR(Rapid Plasma Reagin)カード法やVDRL(Venereal Disease Research Laboratory)テストがあります。しかし、非トレポネーマ試験には偽陽性や偽陰性の可能性があります。そのため、梅毒の診断にはトレポネーマ試験と併用する必要があります。これらの検査は、梅毒の早期感染や治療効果の判定に役立ちますが、単独では確定診断には不十分です。

トレポネーマ試験

トレポネーマ試験は、梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマに対する抗体の量を測定する検査です。具体的な検査としては、RPR(Rapid Plasma Reagin)TPHA法やFTA-ABS法があります。これらの検査は、梅毒トレポネーマに特異的な抗体を検出し、非トレポネーマ試験よりも偽陽性の可能性が低いとされています。ただし、感染後4〜6週間で陽性になるため、非トレポネーマ試験と併用する必要があります。また、一度陽性になると、治療後もずっと陽性のままになることがあるため、検査結果の解釈に注意が必要です。

顕微鏡検査

顕微鏡検査は、梅毒の原因菌であるトレポネーマ・パリジウムを直接観察する方法です。感度や特異度が高く、迅速に結果が得られる利点がありますが、潰瘍からの採取が痛みや出血を伴う欠点や、梅毒が進行した場合には適用できない制限があります。また、顕微鏡検査は、トレポネーマ・パリジウム以外の類似菌との鑑別が難しいという問題もあります。そのため、他の検査と併用することが推奨されます。

検査キット

梅毒の自宅検査キットは、尿や唾液などの体液を採取し、梅毒の感染の有無を判定します。匿名性と手軽さが利点ですが、信頼性や精度に課題があります。感染後の陽性反応までに時間がかかったり、偽陽性や偽陰性が発生する可能性があります。検査結果は医療機関での再検査が必要であり、最終的な確定診断は専門家によるものが不可欠です。検査キットは手軽な方法ではありますが、最終的な確定診断は医療機関での専門家によるものが不可欠です。

梅毒の治療

梅毒の治療
梅毒の治療には主に抗生物質が用いられ、梅毒トレポネーマと呼ばれる原因菌を殺します。
ペニシリンは梅毒に対して効果的な薬であり、通常は筋肉注射や点滴で投与します。
アレルギーがある場合は、テトラサイクリンやエリスロマイシンなどの他の抗生物質を代替として利用します。
治療は梅毒の病期や症状によって異なり、初期の段階では通常1回の投与で治癒が期待されますが、進行した梅毒では数回の投与が必要なことがあります。

梅毒の予防

梅毒の予防
梅毒の予防方法は以下の通りです。
・性行為における注意:性行為をする場合は、コンドームを正しく使用し、性的なパートナーの数を減らすことも感染のリスクを低減します。
・定期的な検査:自覚症状がないことも多いため、感染のリスクがある場合は、定期的に検査を受けることが必要です。
・母子感染の防止:妊娠前や妊娠中に検査を受け、感染が確認された場合は医師の指示に従って治療を行います。
梅毒予防できる病気であり、自分の健康とパートナーの健康を守るために、上記の予防方法を実践しましょう。

まとめ

まとめ
ここまで梅毒の重症化についてお伝えしてきました。梅毒の重症化の要点をまとめると以下の通りです。
梅毒は近年日本で増加傾向にあり、若い世代や男性同性愛者に多く見られる
梅毒は第1期から第4期まで進行し、皮膚や粘膜、内臓、神経系、心血管系などに障害を引き起こす
梅毒が重症化すると心血管梅毒や神経梅毒という合併症が起こり、不妊や死亡に至ることもある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師