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不眠症は病院で何科を受診すればいい?検査・治療・受診のタイミングを解説

 公開日:2024/01/22
不眠症は病院で何科を受診すればいい?検査・治療・受診のタイミングを解説

不眠症で病院に受診する場合の診療科は、内科がおすすめです。不眠症の治療方法や診療科は原因によって異なるため、まずは内科を受診して原因を調べます。

受診のタイミングは、不眠症状が辛いと感じたらすぐに受診することが適切な手段です。

しかし、不眠症の問診では過去1ヶ月間の該当症状について答えるため、目安として不眠の症状が1ヶ月程度続くようであれば受診すると良いでしょう。

この記事では、不眠症で病院に通院する場合の診療科や、検査の内容・治療方法・受診のタイミングについて解説します。

小幡 史明

監修医師
小幡 史明(医師)

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自治医科大学医学部卒業 / 現在は医療法人静可会三加茂田中病院、医療法人在宅会 みんなのクリニック勤務 / 専門は総合診療科、腎臓内科、感染症科

不眠症は病院で何科を受診すればいい?

女医
不眠症で悩んでいて「何科を受診すべきか悩んでいる」場合は、内科を受診しましょう。
ただし、不眠症の症状や原因によって診療科が異なるため注意してください。
例えば、ストレスが原因で眠れない場合や不眠症が原因でストレスを感じている場合は精神科、不眠症によって心と体の両方に不調が出ている場合は心療内科がおすすめです。
さらに、睡眠時無呼吸症候群の症状がある場合は、呼吸器内科か耳鼻咽喉科になります。
「不眠症かもしれない」のように原因や症状が曖昧な場合は、内科を受診して今後の治療を検討すると良いでしょう。

内科

不眠症の明確な原因がわからず「とりあえず病院で診てほしい」という人は、内科を受診しましょう。
不眠症の原因は精神的な問題・生活習慣・生活環境などがありますが、何か大きな病気が隠れている可能性もゼロではありません。
的確な治療方法を見つけるためにも、内科に受診してしっかりと調べてもらうことが大切です。
また睡眠に影響が出る病気を「睡眠障害」と呼びますが、不眠症のほかにも過眠症や睡眠時随伴症などがあり、それぞれ最適な診療科が異なります。
自分は不眠症と思っていても、調べてみると違う睡眠障害の可能性もあるため、一度内科を受診してしっかりと調べてもらいましょう。

心療内科・精神科

問診票
ストレスや気分の落ち込みなど、精神的ダメージが原因で不眠症状が出ている場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。
仮に内科を受診して、ストレスが原因とわかった場合は、心療内科や精神科への受診をすすめられます。
「おそらくストレスが原因だな」と自分で気づいている場合は、心療内科や精神科に受診してください。
なお、心療内科と精神科の違いは、体に不調が出ているかどうかで判断します。精神的なダメージに加え、体にも不調が出ている場合は心療内科を受診しましょう。

脳神経内科

不眠症ではなく、ナルコレプシー・特発性過眠症の可能性がある場合は、脳神経内科を受診してください。
思い当たる睡眠不足がないのに「日中の過度の眠気」・「居眠りを繰り返す」などの症状がある場合は、ナルコレプシー・特発性過眠症の可能性があります。
例えば「どれだけ寝ても眠い」・「仕事中に眠気で意識が飛ぶ」・「眠気で日常生活に支障が出る」などの症状がある場合は、すぐに脳神経内科を受診しましょう。
また「足がムズムズして眠れない」・「寝るときにじっとしていられない」などの症状がある場合は、レストレスレッグス症候群の可能性が高いです。
レストレスレッグス症候群は、脳内の神経伝達物質である「ドーパミン」の機能障害が関係しているため、脳神経内科の受診をおすすめします。

呼吸器内科

医師
睡眠時無呼吸症候群の症状がある場合は、呼吸器内科を受診しましょう。次のような症状がある人は注意が必要です。

  • 寝ているときに大きなイビキをかく
  • 睡眠時間は確保できているのに寝た気がしない
  • 夜中になぜか目が覚める
  • 朝起きると口の中が乾燥していて喉がカラカラになる

上記の症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は、呼吸器系の病気のため呼吸器内科への受診がおすすめです。

耳鼻咽喉科

睡眠時無呼吸症候群の症状があって、肥満の人・解剖学的に首が短い人・下顎が小さい人・扁桃が大きい人(主に小児)は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
上記の人は、睡眠中に舌の付け根が気道を閉塞させて無呼吸を引き起こす「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の可能性があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は耳鼻咽喉科の専門分野になるため、呼吸器内科よりも耳鼻咽喉科がおすすめです。

睡眠障害外来

不眠症の的確な治療を受けたい場合は、睡眠障害外来がある病院を受診しましょう。睡眠は医学的な解明によって、睡眠医療が発展しています。
現在では、大学病院を中心に「睡眠科」や「睡眠医療センター」などの名前で診療科が設けられており、専門的な治療が期待できるでしょう。
また、慢性的な不眠はうつ病や生活習慣病の発症リスクを高めるため、専門的な治療を受けられる睡眠障害外来の受診がおすすめです。

不眠症の検査内容は?

検査
不眠症(睡眠障害)の疑いがある場合は、次のような検査を行います。

  • 血液検査
  • 睡眠時無呼吸症候群の検査
  • 睡眠ポリグラフ検査
  • MLST(睡眠潜時反復)検査
  • 覚醒維持検査
  • 脳のMRI検査 など

基本的に不眠症の診察では、問診を行います。睡眠パターン・就寝前の習慣・服用している薬・アルコールやタバコの摂取などを答えることが多いです。
問診の結果、睡眠習慣・ストレス・夜間の仕事などによって症状が起こっていると判断された場合は特に検査を行いません。
また、不眠症や過眠症などの睡眠障害は、ほかの病気が隠れている可能性があるため事前に血液検査を行います。
特に、睡眠障害と診断されて薬物治療を行うケースでは、肝機能・腎機能の異常や糖尿病があると治療が難しくなるため必ず確認しましょう。
さらに、大きなイビキや日中の眠気がひどく睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、自宅で使える簡易検査キットで調べます。
問診で睡眠障害の可能性が高いと判断された場合は「睡眠ポリグラフ検査」や「MLST(睡眠潜時反復)検査」・「覚醒維持検査」でより詳しく調べることもあるでしょう。
また、頭痛を併発している場合はホルモン異常の可能性もあるため、脳のMRI検査を行う場合もあります。

不眠症の治療方法

薬を飲む
不眠症の治療は、大きく分けて「非薬物治療」と「薬物治療」の2つあります。まずは、不眠症の原因を診断して薬物を使わない治療を選択することが多いです。
例えば、不眠症の原因がほかの疾患の場合は、その疾患を優先して治療します。
その後、定期的な運動や睡眠時間の調整などを行い、十分な睡眠を取れるような生活習慣を取り戻せばゴールです。
ただし、非薬物治療の過程で薬物による睡眠リズムの改善が必要な場合は、薬物治療を行います。

非薬物療法

非薬物治療では、次のことに注意して進めていきます。

  • 定期的な運動の実施
  • 睡眠時間の調整
  • 規則正しい食生活
  • 寝室環境の改善
  • 就寝前の飲酒・喫煙禁止
  • カフェインを摂取しない
  • 寝るときに悩み事を持ち込まない
  • 毎朝同じ時間に起きる

非薬物治療では、生活習慣や睡眠習慣の改善を行います。定期的な運動や規則正しい食生活を心がけ、生活リズムの調整が重要です。
また、寝室環境を整えて、夜中に目が覚めるのを防ぎます。睡眠時間の長さにこだわるのではなく、日中に眠くならないことが大切です。
アルコールは、一時的に寝つきが良くなる作用がありますが、繰り返すとその効果は弱まり夜中に目が覚めてしまいます。
さらに、ニコチンの摂取は刺激作用があるため、飲酒と同様に喫煙も逆効果です。
このように、非薬物治療ではさまざまな規制をかけて生活習慣の改善に心がけ、睡眠習慣を取り戻します。

薬物療法

薬物治療は、非薬物治療を行う過程で不眠症が改善されない場合に用いられます。薬物治療によって十分な睡眠を取れるようになっても、それが最終目的ではありません。
薬を使わずに、しっかりと睡眠習慣を取り戻すことが不眠症治療の完治になるため、薬を使用している間も睡眠習慣の改善を継続する必要があります。
不眠症治療に使われる主な薬は「GABA受容体作動薬」・「メラトニン受容体作動薬」・「オレキシン受容体作動薬」の3つです。
それぞれ、脳内のホルモンを刺激して、興奮を抑えたり体内時計の調節をしたりしてくれます。
不眠症治療の薬は必ず用法・用量を守って、医師の指示のもと服用するようにしましょう。

不眠症で病院を受診するタイミングは?

診察
受診のタイミングは、不眠症状が辛いと感じたらすぐに受診することが適切な手段ですが、不眠症状が1ヶ月程度続いたら病院の受診をおすすめします。
理由は、不眠症の度合いを調べるために用いられる「アテネ不眠尺度」によると、過去1ヶ月間に週3回以上経験したかを問われているためです。
実際に不眠症チェックで使われているアテネ不眠尺度の内容は、次のようになっています。

  • 寝床についてから実際に眠るまでに1時間以上かかる
  • 夜間、睡眠の途中で目が覚めて、再入眠に時間がかかる
  • 予定の起床時刻よりも早くに目が覚めて、その後、眠れなくなる
  • 夜間の睡眠や昼寝を合わせて、睡眠時間が足りていないと感じる
  • 睡眠の質に不満がある
  • 日中に、気分が落ち込むことがある
  • 日中の身体的及び精神的な活動の状態が低下した
  • 日中の眠気がある

上記8項目の質問に対して、0〜3点の4つの度合いで評価します。チェックの結果、合計が4点未満の場合は十分な睡眠が取れていると判定されるため問題ありません。
4~5点のスコアでも、睡眠に関して何らかの問題を感じたり、日中の機能に影響を感じたりしている場合には不眠症の可能性があるため、睡眠障害に対応している診療科を受診しましょう。
さらに合計が6点以上の場合は不眠症の可能性が高いため、早急に睡眠障害の専門の医師に診てもらい、適切な治療を受けてください。

不眠症の原因として考えられることは?

悩む人
不眠症の原因は、ストレス・うつ病・睡眠時無呼吸症候群・薬の影響などが考えられます。それ以外にも、生活習慣の乱れや環境の変化も主な原因のひとつです。
不眠症治療では、考えられる原因によって治療方法や受診する診療科が異なります。
「どのようなことで不眠症が起こるのか」・「自分が眠れない原因は何なのか」を把握することが大切です。自分で原因がわからない場合は、睡眠外来か内科を受診しましょう。

ストレス

ストレスや極度の緊張は安定した睡眠を妨げるため、不眠症を起こしやすいです。特に、神経質で真面目な性格の人は、ストレスを感じやすいため注意しましょう。
ストレスの原因は人によって異なりますが、仕事上の問題・交友関係・家族や友人の死などによって引き起こされる可能性があります。
普段からストレスを溜めないように、自分なりのストレス解消法を見つけておくと良いでしょう。

うつ病

うつ病にかかると、不眠症状を起こしやすくなります。慢性的な不眠症状がある人の3〜5割は、精神的な疾患を持っている可能性が高いです。
例えば、不眠症状とともに「気分の落ち込み」・「やる気の低下」・「趣味が手につかない」などの症状がある場合はうつ病の可能性があります。
精神科や心療内科のような診療科はどうしても通いづらいイメージがありますが、早期治療が負担の軽減につながるため専門の医師に相談して適切な治療を受けましょう。

睡眠時無呼吸症候群

いびき
睡眠時無呼吸症候群を引き起すと、不眠症状が現れます。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に大きなイビキとともに何度も呼吸が止まる病気です。
眠っている間に10秒以上呼吸をしていない「無呼吸状態」や睡眠中に呼吸が弱くなる「低呼吸」を、1時間あたり5回以上繰り返している状態を指します。
実際に、睡眠中に無呼吸状態が続くと体内は低酸素状態になり、心臓・血管系の病気や生活習慣病を起こしやすくなるでしょう。
また、中等症や重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心筋梗塞・脳梗塞・眠気による事故を引き起こしやすくなります。
放置すると死亡リスクも高まるため、ひどいイビキや睡眠中の呼吸停止が疑われる場合は、早急に専門の医師に受診しましょう。

薬の影響

普段から服用している治療薬が原因で、不眠症になることがあります。
例えば、血圧を下げる薬・自律神経や中枢神経に働く薬・抗がん剤・ステロイドなどを服用している場合は注意しましょう。
また、抗ヒスタミン薬は日中に眠気が出る可能性があるため注意が必要です。不眠症の治療で病院に受診する場合は、現在服用中の薬を必ず伝えるようにしてください。

生活リズムの乱れ

生活リズムが乱れることで、不眠症状が現れます。例えば、夜勤・海外旅行による時差ボケ・受験勉強など、生活リズムが乱れるような環境は危険です。
睡眠時間の確保だけではなく、寝る時間と起きる時間のリズムを一定にすることが大切になるでしょう。

睡眠環境

睡眠環境の変化によって、不眠症になるケースがあります。寝室の気温や室温・騒音・部屋の明るさなどに注意が必要です。
快適な睡眠を取るには、温度が20度前後、湿度が40〜70%程度に保ちましょう。
また、ベッドや布団の種類・枕の高さ・照明の質や明るさなども自分にあったものを選択してください。

不眠症の治療に利用できる支援制度

手帳
不眠症治療に利用できる支援制度は、次のようなものがあります。

  • 精神障害者保健福祉手帳
  • 就労支援
  • 自立支援医療制度

精神障害者保健福祉手帳は、障害者手帳のひとつです。不眠症の原因が精神疾患の場合に、取得できる可能性があります。
取得できれば、税金の減免や公共交通機関の運賃割引など各種支援を受けられるでしょう。
また、自立支援医療制度は、通院による精神疾患の治療継続が必要な人に対して通院医療費の自己負担を軽減する制度です。
具体的には、医療費の自己負担金額が3割から1割に軽減されます。ただし、風邪や怪我など精神疾患以外の治療に必要な医療費については適用されません。

編集部まとめ

不眠症
不眠症で病院に通院する場合の診療科や、検査の内容・治療方法・受診のタイミングについて解説しました。

不眠の症状で病院に受診する場合は、内科を受診しましょう。不眠症は原因によって治療方法や診療科が異なるため、まずは原因の解明が先決です。

不眠症の原因がストレスによるものとはっきりしている場合は、心療内科や精神科を受診すると良いでしょう。

また、受診のタイミングは、不眠の症状が1ヶ月程度続く場合です。この記事で紹介した「アテネ不眠尺度」で調べて4~5点と点数が低くても、睡眠に関して何らかの問題を感じたり、日中の機能に影響を感じたりしている場合には不眠症の可能性があるため専門の医師に相談しましょう。

この記事の監修医師