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ICLとは?ICL手術の流れや費用、リスク・ベネフィット、クリニックの選び方を解説

 公開日:2025/10/10

視力矯正手術の選択肢の一つに、ICL(Implantable Contact Lens)と呼ばれる手術方法があります。ICLは、特に強度近視や角膜に不安がある方にとって、治療の選択肢となっています。

本記事では、ICLの基本的な仕組みやレーシックとの違い、手術の流れ、リスク・ベネフィット、費用の目安、さらに日本国内でICL手術を受ける際のクリニック選びのポイントを解説します。

ICLの概要

ICLとは、眼の中にコンタクトレンズのようなやわらかい素材のレンズを挿入して屈折異常を矯正する治療法で、眼内コンタクトレンズとも呼ばれます​。
このレンズは薄い人工レンズで、水晶体と虹彩のあいだの後房(こうぼう)に挿入することで、メガネやコンタクトレンズの代わりにピント調節を補助します​。

角膜を削らず、眼の構造を大きく変えることなく近視や乱視などの屈折異常を改善でき、視力を矯正できるのが特徴です​。ICLによって網膜上に正確に焦点が合うようになり、裸眼視力の向上が期待できます。

ICLは、角膜の厚さ・形状に問題がありレーシックが難しい場合や、強度近視である場合などの治療には有用です。
適応年齢は原則21歳以上〜45歳程度で​、術前に少なくとも1年以上視力が安定していることも重要です。視力が安定していない若年者や、白内障の症状が出始める50代以降の方などは、ICLの適応外となる場合があります。

ICLとレーシックの違い

ICLレーシックは、いずれも視力を矯正して裸眼での視力向上を目指す治療法ですが、アプローチは異なります。

レーシックは、角膜の表面をレーザーで削って角膜のカーブを変えることで、屈折力を調整します。一方のICLは、角膜は削らず角膜の縁を小さく切開し、眼内にレンズを挿入して屈折異常を矯正します。
レーシックは角膜を削るため元に戻すことはできませんが、ICLは必要に応じてレンズの取り外しや交換が可能で、矯正状態を可逆的に調整できる点が大きな違いです。

また、適応範囲にも違いがあります。
レーシックは軽度〜中等度の近視に適していますが、角膜を削る必要があるため、強度近視(近視の度数が-6.0D以上)には不向きです。
ICLによる治療は角膜の厚みに左右されないため、角膜が薄かったり形状に問題があったりしてレーシックを受けられない場合でも、治療できる可能性があります。
また、ICLは強度近視が良い適応とされており、日本で承認されているICLレンズは-6.0Dから-18D程度までの近視眼が適応とされています。

ICLレーシックは、術後の見え方の違いもあります。
レーシックは、一般的には術後数日〜1週間程度で視力が回復し始めます。一部の患者さんでは、ぼやけたり光が見えにくかったりする状態が続くこともありますが、1ヶ月程度で視力が安定します。ICLは見えるようになるまでの期間が短く、手術当日、遅くても手術翌日には視力の回復を感じることができます。
また、ICLは基礎疾患を持っている方や白内障の症状がある方、妊娠中や授乳中の場合、手術が受けられない可能性があります。適応かどうかは、クリニックにて事前のカウンセリングや検査でチェックしてもらう必要があります。

ICL手術の流れ

ICLの手術は日帰り(※)で行われることが多く、片目の手術にかかる時間は10〜20分程度です。
ICLの手術は、一般的に以下の流れで行われます。

(※)術前の検査、術後の経過観察が必要です。

点眼による麻酔

手術の開始前に、点眼薬による局所麻酔で眼の表面を麻酔します。必要に応じて数回に分けて点眼麻酔を行うことで、眼の表面に麻酔をしっかりと効かせるため、手術中に痛みを感じることはほとんどないといわれています。
また、麻酔の点眼の際に瞳孔を開く散瞳薬(さんどうやく)も点眼します。
 

レンズの挿入

麻酔が効いたら、メスを用いて角膜の縁を小さく切開し、折りたたんだレンズを眼内に挿入します。レンズは薄くやわらかい素材でできており、眼に入るとゆっくりと広がります。
レンズの挿入時、目が押される感覚はありますが痛みはほとんどありません。

レンズの固定

眼内でゆっくりと広がったレンズは、虹彩と水晶体のあいだに収まります。レンズの位置を微調整し、正しい位置に固定したら手術は終了です。切開創が小さいため、縫合の必要はありません。
最後に消毒の点眼などの処置を行って、手術は終了です。

ICLのリスク・ベネフィット

ICLは、角膜を削らずに近視や乱視などの屈折異常を改善できる治療法ですが、注意が必要な点もあります。そこで、本章ではICLのリスク・ベネフィットを解説します。

ICLのベネフィット

ICLは、主に次のようなベネフィットがあります。

  • 角膜への影響が少ない
  • 手術の適応範囲が広い
  • レンズの取り外しが可能で可逆性が高い
  • 視力の持続や視力の安定性が高い

ICLは角膜を削らないため、角膜への影響が少ないことが大きなベネフィットです。
術後のドライアイ症状が起こりにくく、術後も角膜の自然な形状や生体力学的強度が保たれやすいといえます。
角膜の厚みに左右されない点、屈折矯正の度数範囲が広くて強度近視にも対応できる点、軽度円錐角膜の場合も対応できる可能性がある点などから、手術の適応範囲が広いこともベネフィットです。

また、ICLで挿入するレンズは必要に応じて除去・交換できるので、術後に視力が変化した場合や、合併症が生じた場合などにレンズを摘出して、術前に近い状態に戻すことが可能です​。将来、白内障手術などほかの眼内手術が必要になった際も、ICLレンズを取り外して対応が可能です。

ICLは眼内にレンズを挿入するため、基本的に手術後はメガネやコンタクトレンズを使用する必要がありません。レンズが眼内にあるため外部からのダメージや影響を受けにくく、視力の持続や視力の安定が期待できます。

ICLのリスク

ICLのリスクとして、次のような点が挙げられます。

  • 保険適用外で費用が高額になりやすい
  • 眼内レンズによる合併症のリスクがある
  • 術後感染症のリスクがある

日本において、視力矯正を目的とするICL手術は公的医療保険の適用外(自由診療)なので、手術費用は全額自己負担となってしまうため、興味があっても手術に踏み切れない人もいます。

その他のICLのリスクとして、眼内にレンズを入れることによる合併症のリスクがあり、白内障や緑内障などが考えられます。
ICLは虹彩と水晶体のあいだに人工レンズを挿入するため、水晶体に物理的なダメージなどが及ぶと、早期に白内障が進行する可能性もあります。
また、眼内にレンズを入れることで、隅角(ぐうかく)という眼内の排水口の役割を果たす部分の構造が変化することがあります。これにより眼球内を満たしている房水(ぼうすい)の流れが妨げられ、眼圧が上昇する可能性があります。眼圧がコントロールできないと視神経が障害され、緑内障に至る可能性があります。
現在使用されているレンズではこれらのリスクは低減していますが、注意が必要です。

また、術後感染症のリスクもあります。
ICLは眼内の手術である以上、感染症のリスクも避けて通れません。ICL手術では角膜を切開して器具やレンズを眼内に挿入するため、手術中ないし術後に細菌が侵入すると眼内炎という感染症を引き起こす恐れがあります。
眼内炎が発生すると炎症が急速に広がり、急激な視力低下や痛み、充血などの症状が現れます。適切な治療が遅れると、最悪の場合は失明に至ることもあります。
報告によれば、ICL手術後の眼内炎発生率はおよそ1/6,000例(約0.02%)とされています。
ただ、現在まで失明に至った症例はありません。

眼内炎のリスクを最小限に抑えるために、ICL手術は清潔な手術室で厳重な無菌手技のもとで行われ、感染予防のための管理が行われています。

ICLにかかる費用の目安

ICLにかかる費用の目安
ICL手術は自由診療(保険適用外)のため、費用は全額自己負担となります。
高度な医療技術と特殊レンズを用いた手術が行われ、クリニックにもよりますが片目で20〜40万円、両目で40~80万円程度が費用の目安といわれています。

費用には術前検査やレンズ代、手術代、術後の診察、薬代なども含まれている場合が一般的です。乱視用レンズなどを用いる場合や、近視が強い場合は費用がやや高くなる傾向があります。

公的医療保険は使えませんが、確定申告時の医療費控除を利用すれば負担を軽減できる可能性があります。

ICL手術で失敗しないためのクリニックの選び方

ICL手術を受けることを検討する際、クリニックや医師選びのポイントが気になるところでしょう。ここからは、ICL手術で失敗しないためのクリニック選びのポイントを紹介します。

ICL治療の経験が豊富かどうか

まず、クリニックがICL治療に力を入れているか、担当医師がICL手術の経験が豊富かを確認しましょう。

日本眼科学会のガイドラインでは、屈折矯正手術は専門性の高い手術であるため、日本眼科学会 眼科専門医が扱うべき領域であるとされています。クリニックのホームページなどで、医師が日本眼科学会 眼科専門医の資格を持っているか、ICLの症例数はどのくらいかを確認してみましょう。症例数が多いほどノウハウが蓄積されており、さまざまな状況に適切に対応できる可能性が高いと期待できます。
また、ICL(スターサージカル社)の場合、ICL認定医制度もあります。
ICL認定医制度では、

・日本眼科学会主催の屈折矯正手術講習会受講
・オンライン講座受講
・指導医立会い下での認定手術 など

複数の審査をクリアした眼科専門の医師のみを認定しています。
専門の医師が在籍する施設は、ICL研究会公式サイトのクリニック一覧からも地域別に検索可能で、どの医療機関に認定医がいるかを簡単に調べられます。

ICL治療では、患者さん一人ひとりの状態に合ったレンズを選択することが重要です。レンズの大きさや度数が合わないと、過矯正や低矯正の状態になる可能性も考えられます。事前に眼の状態の検査やカウンセリングを丁寧に行い、適切なレンズを選ぶためにも、医師の治療経験や認定医資格の有無を確認することは大切なポイントです。

リスクもきちんと説明してくれるか

信頼できるクリニックかどうかを見極めるうえで、カウンセリング内容の充実度も大切な判断ポイントです。

上述のように、ICLはベネフィットだけでなくリスクもある治療法です。手術に伴うリスクや考えられる合併症などのリスクなどをしっかり説明し、疑問や質問に丁寧に答えてもらえると、安心感があるでしょう。
ICL手術を検討する際には、カウンセリングでリスクや万が一期待した視力が得られなかった場合の追加手術などの対応、費用負担など気になることを確認し、納得して治療を進めることが大切です。

国から薬事承認を受けているICLを取り扱っているか

日本国内でICL手術に使用される有水晶体後房レンズは、厚生労働省から承認を得た製品を用いることが基本です。
術前説明で使用予定のレンズ名を確認し、それが国内で認可されたものかを確認しましょう。

まとめ

ICLは、角膜を削らずに視力を矯正できる先進的な手術であり、特に強度近視や角膜に問題がある方にとって有力な選択肢です。
本記事ではICLの仕組みやレーシックとの違い、手術の流れ、リスク・ベネフィット、費用、クリニック選びのポイントを解説しました。

ICLは高い矯正効果と可逆性など多くのベネフィットがありますが、自由診療であることや、眼内にレンズを入れることによるリスク管理が必要なことには注意が必要です。
ICL手術は、視力回復手術のなかでも侵襲性が低い治療法であるとされていますが、リスク・ベネフィットを理解し、医師と十分に相談して検討することが大切です。

この記事の監修医師