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おりものがおかしい…もしかしてトリコモナス?症状から間違いやすいほかの病気も解説

 公開日:2024/05/10
おりものがおかしい…もしかしてトリコモナス?症状から間違いやすいほかの病気も解説

女性の体の健康状態を示す「おりもの」は、膣内部のうるおいを保って粘膜を守ったり、汚れや菌が子宮内に侵入するのを防いだりする役割を担っています。

しかし、そのおりものが悪臭を放っていたり黄緑色であったりした場合は、膣に何らかの異常が起きていると考えられます。本記事では、おりもの異常の原因の一つであるトリコモナスについてご紹介します。「最近、おりものの様子がおかしい」「検査を受けるべきか悩んでいる」という方はぜひ参考にしてください。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

トリコモナスとは

トリコモナスとは

トリコモナスとは、肉眼では見えない「トリコモナス原虫」が性器の中に入り込み、寄生することによって炎症を起こす、性感染症の一種です。

性器クラミジア感染症といったほかの性感染症は20~40代の若年層によく見られますが、トリコモナスは中高年にも感染者が多く存在します。2019年にWHOが発表したデータによると、2016年の15~49歳を対象にした新規性感染症患者数は、約3億7600万人。

性感染症と聞くと多くの人がイメージするクラミジアは約1億2700万人、淋病は約8700万人、梅毒は約630万人となっており、トリコモナスはそれらを大きく上回る、約1億5600万人の感染者が確認されています。

なお、トリコモナス原虫は膣内や子宮頸管だけでなく、膀胱や尿道にも寄生することがあります。

 

性行為以外での感染も

トリコモナスの主な感染経路は性行為で、膣や子宮頸管、膀胱、尿道などに寄生します。

しかし、感染源が原虫ということもあり、タオルの共有や下着、お風呂、便座、医療機関の検診台といった場所から感染することもあります。つまり、性別にかかわらず、性行為を経験したことがない人や幼児も感染する可能性があるのです。

 

女性は自覚症状がないことも

トリコモナスに感染した場合、女性であれば匂いの強いおりものが増えたり、外陰部がかゆくなったりします。また、痛みの症状を訴える場合もあります。

ただ、感染者の中の20~50%の方はこれらの自覚症状がなく、気付いたときには炎症が卵管にまで達していて、不妊や流産・早産のリスクが生じているというケースも少なくありません。また、感染に気付かないまま、パートナーや一緒に暮らす家族など、身近な人に感染を広げてしまうこともあるでしょう。

さらに、生理中はトリコモナスが増殖しやすい傾向にあるため、治療を経て自覚症状がなくなったとしても、次の月経後に改めて検査を受けることが望ましいと言えます。

 

自然治癒することはない

前述したように、トリコモナスに感染していても自覚症状がない場合も多々あるため、治療を受けないまま進行していく可能性があります。

しかし、感染したトリコモナスが自然に消滅することはありません。放置していると、女性は卵管炎や骨盤内感染症を、男性は前立腺炎や精巣上体炎を引き起こす恐れがあり、状況に応じた正しい治療を行うことが大切です。

トリコモナスは膣だけでなく尿路や膀胱にも感染している可能性があるため、抗原虫薬の膣錠による膣内局所投与ではなく、内服による全身投与を行うのが一般的です。抗菌薬を1日2回、10日間飲み忘れることなくしっかり続けることが重要になります。

なお、飲酒をしてしまうと腹痛や吐き気、動悸、紅潮といった副作用が現れるため、服薬中と服薬後3日間は飲酒を避けるようにしましょう。もし感染者が妊娠中・授乳中である場合は、抗菌薬の内服ではなく錠剤を膣内に挿入することで治療を行います。

トリコモナスになるとおりものはどうなる?

トリコモナスになるとおりものはどうなる?

ここからはおりものに視点を変えてご紹介します。おりものは女性の膣を守るだけでなく、体調のバロメーターとしてあらゆるサインを示しています。正常なおりものと異常なおりものの違いをきちんと理解し、気になる症状やご自身に当てはまるものがあれば早めに医療機関を受診しましょう。

 

健康なおりものとは

無色透明でのり状のおりものが健康的なおりものと言えます。匂いは基本的にありませんが、少し甘酸っぱいような匂いがすることもあります。これは膣内部にある乳酸の匂いですので心配ありません。量としては、1日中下着を替えなくても問題がないようなら正常な範囲と言えるでしょう。

 

悪臭かつ泡状のおりものなら危険サイン

一方で、異常を来しているおりものというのは、量が劇的に増えたり、泡状になっていたりします。また、原因菌と戦って壊れた白血球や死んだ細菌が多く含まれたおりものは、粘性が強く黄緑色になることがあるため、色にも注目しましょう。

おりものが黄緑色で魚が腐ったような生臭い匂いがする場合は、トリコモナス感染が疑われます。これらの症状がある方は一度検査を受けることをご検討ください。

おりもの以外のトリコモナスによる症状

おりもの以外のトリコモナスによる症状

トリコモナスは炎症を起こす疾患だということを前述しました。つまり、トリコモナス感染時の症状はおりものの異常だけではない、ということです。ここからは、おりもの以外の症状について詳しくご説明します。

 

膣~周辺のかゆみやただれ

トリコモナスに感染し、膣や膀胱に炎症が起こると、膣内が熱いと感じるような激しいかゆみのほか、外陰部にもただれ・かゆみが見られるようになります。外部からの強い刺激などを受けたわけではないのに、性器に赤みやヒリヒリ感がある場合はトリコモナス感染を疑うようにしましょう。

 

排尿痛・性交痛

排尿時や性交時の痛みもトリコモナスによる症状と考えられます。特に男性でよく見られる症状が排尿痛です。男性は女性以上にトリコモナス感染時に自覚症状がない場合が多いのですが、尿道に炎症を起こしている場合、泡状の分泌物や排尿困難、頻尿といった症状が現れることがあります。

 

放置は厳禁

トリコモナスに感染していることに気付かなかったり、何らかの症状があるのにも関わらず放置してしまったりした場合、進行し、子宮内膜症や卵管炎を引き起こしてしまう可能性があります。

これらは不妊症や早産になるリスクを高め、「子どもがほしい」と思ってもうまく授かることができないといった事態にもつながりかねません。

性感染症はなかなか人には話しづらいデリケートな問題ですが、最悪の事態を招かないようにするためにも、何か症状がある場合は早急に医療機関に相談することをおすすめします。もちろん、定期的な検診もより効果的でしょう。

おりものでわかるほかの病気の可能性

おりものでわかるほかの病気の可能性

おりものに異常がある場合、トリコモナスだけでなくほかの疾患も考えられます。代表的なのはカンジダやクラミジア淋病、細菌性膣炎などです。ここからは、これらの疾患がどのようなものなのか、それぞれご紹介していきます。

 

カンジダ

 正式名称は「膣カンジダ症」と言い、比較的よく見られる感染症です。性行為によって感染することもありますが、常在菌で無症状で存在しているだけのケースも多いため、厳密には性感染症ではないと言えます

カビの一種である真菌によるもので、ホルモンバランスの変化やストレス、免疫力の低下、常在菌のバランスの変化、膣内のpHの変化などによって発症します。主な症状としては、白い酒かす状やカッテージチーズ状のぽろぽろとしたおりものが見られるようになります。

また、外陰部のかゆみや発疹、熱感が伴うことも大きな特徴です。なお、男性に感染することもあります。

 

クラミジアや淋病

日本で最も多く報告されているのがクラミジア感染症です。クラミジアは、クラミジア・トラコマティスという細菌によって発症します。性行為が主な感染経路で、膣や尿道だけでなく喉にも感染する可能性があります。女性の場合、クラミジアに感染するとおりものが黄色や黄緑に変化することに加え、下腹部痛を伴うこともあります。

淋病は1回の性行為で30%の感染確率がある、非常に感染しやすい疾患です。淋病に感染した女性のおりものはクラミジアと同様に黄色や黄緑色になり、わずかな異臭を伴います。

 

細菌性膣炎

膣の中の常在菌のバランスが崩れてあらゆる菌に置き換わった結果、炎症が起きてしまうことを細菌性膣炎と言います。精神面や身体面で強いストレスがかかったり、抵抗力が低下したりしたときに発症しやすい疾患です。細菌性膣炎を発症した場合、灰色でサラサラとしていて、魚のような匂いのするおりものが出るようになったり、外陰部の強いかゆみを感じることがあります。

まずは検査を受けよう

まずは検査を受けよう

トリコモナスに限らず、性感染症は早期発見・早期治療が重要です。前述したようなおりものの異常や性器の違和感があったら、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。ここからは、トリコモナスの検査にはどのようなものがあるのかご紹介します。

 

クリニックでの検査

女性がクリニックで検査を受ける場合は、綿棒などでおりものを採取して顕微鏡で直接観察する方法が一般的です。その場で結果がわかるため、すぐに治療を始められるのがメリットです。ただ、トリコモナスの数が少ない場合は見つけにくいため、感染機会から24時間以上経過してから検査を受けることをおすすめします。

また、男性の場合は尿の採取によって感さが行われ、検査結果は5~7日後に判明します。顕微鏡による目視の検査では菌の検出が難しいため、尿を培養して検査する方法を提案されることもあります。  

 

自宅で検査キットによる検査

トリコモナスの検査は個人でキットを購入して行うことも可能です。キットであれば自宅で検査ができるため、クリニックなどで人と顔を合わせることなく、時間や場所を選ばず行える自由度の高い方法となっています。

インターネットから検査キットを購入し、説明書に記載されている手順を守って膣分泌液を自分で採取したうえで専門機関に返送するといった流れで行います。検査結果は後日郵送で送られてくるか、WEB上で確認する形になります。「性感染症検査を受けたことを人に知られたくない」「仕事や家事で忙しく病院に行く暇がない」という方におすすめです。

 

パートナーにも検査を受けてもらう

ご自身がトリコモナスに感染していることが判明した場合、パートナーにも検査を受けてもらうようにしましょう。これは、性行為によって感染が行ったり来たりするピンポン感染を防ぐことにつながります。言い出しにくいかもしれませんが、お互いに治療しなければ意味がないので、検査は必須です。

まとめ

まとめ

トリコモナス感染は命に関わる疾患ではありませんが、日常生活に大きな支障を与えます。放置すれば、不妊など重大な事態に陥ることもあるでしょう。

性感染症は症状が似ているものも多く、原因をはっきりさせてそれぞれに適した治療を行うことが大切です。気になる症状がある場合は、まずは一度検査を受けてみてください

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