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一型糖尿病の原因とは?種類・症状・検査・治療方法について詳しく解説します

 公開日:2024/02/01
一型糖尿病 原因

糖尿病は生活習慣病が原因で発症する、というのが一般的ですが生活習慣病に関係なく発症する糖尿病も存在します。

今回取り上げる一型糖尿病は生活習慣病ではなく、人間の体がもつ外敵から身を守る仕組みに異変が生じることで発生する病気です。

一型糖尿病は複数種類があり、発症時の症状も異なります。この記事では症状に加えて検査・治療方法も解説していくため、ぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

一型糖尿病の原因とは?

医師
一型糖尿病はリンパ球がインスリンを分泌する細胞を破壊してしまうことでインスリンが出なくなり、その結果高血糖状態となり糖尿病が発症します。
リンパ球がこのような行動を起こす理由は、何らかの理由で自己免疫機能に異常が発生するためです。このケースは1A型と呼ばれ、一型糖尿病の9割はこちらに該当します。
生活習慣病として有名な二型糖尿病と異なり、食生活や運動不足が原因ではないのが特徴です。特定の遺伝子を有する場合家族内発症も認められてはいるものの、その遺伝子を有していない場合は遺伝することは通常ありません。
細胞が破壊されずに一型糖尿病を発症するケースも存在し、この場合は突発性(1B型)と呼ばれます。ウイルス感染が原因であるケースも多いですが、まだ解明できていない点も多いのが現状です。

一型糖尿病の種類

カウンセリング
一型糖尿病は進行スピードによって劇症型・急性発症型・緩徐進行(かんじょしんこう)型の3種類に分類されます。進行スピードの速い順に並べると劇症型・急性発症型・緩徐進行型の順です。
糖尿病の代表的な症状の発生後、ケトン体と呼ばれる物質が原因で発生するケトアシドーシスが発現する期間の差が診断基準に含まれています。
また診断の際に行われる現在の血糖値や、過去の血糖値を表す数値も異なるのが特徴です。

劇症一型糖尿病

劇症一型糖尿病とは、一型糖尿病の中でも発症経過のスピードが速いものを指します。発症時の血糖値は高く、数ヶ月前の血糖を知るために用いられる数値は高くないのが検査で分かる特徴です。
糖尿病の症状が発生してから数週間でインスリンを生み出す細胞が破壊され、極度の高血糖状態になる場合があります。そのため重体化による意識障害や合併症の危険性も高い危険な状態に陥りやすいです。

急性発症一型糖尿病

急性発症一型糖尿病は一型糖尿病の典型的なタイプで、糖尿病の症状が出て数ヶ月経過するとインスリンが出せなくなります。
診断の確定には複数の抗体検査が行われますが、これは外からの異物ではなく自身の細胞を攻撃しているか否かを調べるためです。
この自身の細胞を攻撃している状態を自己免疫と呼ばれ、この検査で陽性が出た場合1A型と診断されます。

緩徐進行(かんじょしんこう)1型糖尿病

緩徐進行一型糖尿病もインスリンが体内で生み出されることがなくなる点が同じですが、生活習慣病である二型糖尿病に近い症状なのが特徴です。
そのため抗体検査が行われず、誤って二型糖尿病と診断されるケースも報告されています。
インスリンの分泌機能の低下が緩やかであることも特徴の1つです。この特徴が二型糖尿病との判別を難しくしている点であり、正確な患者数を確定させることを困難にさせています。

一型糖尿病の症状

ペットボトル
一型糖尿病を発症するとインスリンの分泌量が低下してブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなることから、脂肪や筋肉が減少し結果として体重が減少します。
これは生活習慣病として有名な二型糖尿病でも同様に発生する、有名な症状です。一型糖尿病はその発生原因にかかわらず突発的に症状が出ることが多いため、定期的な健康診断や早期発見が重要となります。
二型糖尿病と違い健康的な生活習慣を送っていても突然なる場合があるため、体重の減少や全身のだるさといった症状が長期間続いた場合は一度診察を受けてみましょう。

尿が増える

糖尿病の症状として有名な物として、尿が増えることがあげられます。これは血中にあるブドウ糖を薄めようと排尿によって糖を排出しようとするためです。
ブドウ糖は膵臓からインスリンが分泌されることで細胞に取り込まれます。しかし一型糖尿病を発症するとインスリンを生み出す細胞が破壊され、血管の中のブドウ糖が細胞に取り込まれません。
健康な状態だったブドウ糖の濃度にするために濃度を薄めようと体が水分を求め、喉が渇き水分を補給するように体に指令を送ります。その結果、多飲多尿状態が恒常化するのです。

喉が渇く

ブドウ糖が吸収されず尿により濃度を下げようとすると、体外に排出される水分量が増加します。
汗や尿となって体内にある水分が減るが続くと脱水症状に陥ってしまうため、更に水分を多く摂取しようと体がサインを発し多飲となるのが高血糖の脱水症状の原因です。
ブドウ糖を体から排出するために多尿になり、脱水状態になった体が水分を求め喉の渇きや大量の水分を摂取する流れは典型的な糖尿病の症状として取り上げられます。
この状態は次第に倦怠感や嘔吐といった別の症状が発生する原因となり、最終的にケトアシドーシスと呼ばれる状態となり失神や意識障害の引き金になる危険です。

一型糖尿病で行われる検査

検査
一型糖尿病は自覚症状が突然出ることも珍しくないため、二型糖尿病と同様の検査を経てから確定のために追加の検査を行う場合が多いです。
一型糖尿病の確定に用いられる検査として、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)抗体の検査や血液検査があげられます。緩徐進行は二型糖尿病と発症時の状況が似ているため、GAD抗体検査は診断を確定するために欠かせません。

血液検査

糖尿病に置ける血液検査では、主に血糖値とヘモグロビン・エーワンシー(HbA1c)の2種類の基準値が診断の基準です。
血糖値を検査する場合は健康な人の血糖値・HbA1cを基準値とし、空腹時やブドウ糖負荷試験後の血糖値を計測し診断を行います。
血糖値は採血を行ったタイミングの血液で判断するのに対し、HbA1cは1〜2ヶ月前の血糖状態を判断することが可能です。糖が結合したヘモグロビン量を全てのヘモグロビン量で割ることで数値を割り出します。
一度の検査で血糖値とHbA1cが基準値を上回っていた場合糖尿病と診断しますが、どちらかが下回っていた場合は再検査を行い、境界型か正常型かの見極めが必要です。

尿検査

血液検査での血糖値の検査は当日に食事をしない空腹時検査や、絶食後ブドウ糖を補給することで行うブドウ糖負荷試験といった事前の準備が必要なため定期的な健診が難しいという欠点があります。
その点尿検査は簡単に行えるため、負担が少ないというメリットが魅力です。尿検査で糖尿病の検査を行う場合調べるものは、尿糖と呼ばれ尿に糖が含まれているかに加え尿蛋白が含まれているがポイントになります。
尿糖は服用している医薬品によっては検査の段階で見つかりにくくなる場合があるため、尿蛋白と呼ばれる腎臓の状態を見る数値も併せて調べるのが一般的です。
尿蛋白は陰性(-)・陽性(+)に加えて、陽性の基準まで至らなかったものの痕跡が見つかった(±)の三種類で判定されます。
痕跡が見つかった場合は場合によっては治療が必要となるため、日常生活を見直してみましょう。

一型糖尿病の治療方法

運動する
一型糖尿病は発症が確認された後速やかに治療に移行することで、日常生活の負担が大きく変わります。
そして根治ではなく、一生涯コントロールを行うことという考えが必要です。
現在はさまざまなインスリンから選択を行うことが可能なため、人生プランに合わせて医師と相談し種類を変更できます。
体質や生活習慣に適したものを選択し、適切な選択をすれば日常生活における制限を減らすことが可能です。

食事療法

野菜を食べる
一型糖尿病の場合特殊な食事制限は必要ありません。食事の量や、食事と食事の間の時間を一定にすることが求められます。
理由としてはインスリンを注射で補い、血糖値の変動をできる限り小さくすることが求められる必要があるためです。
1日を通して低血糖にならないよう、間食が必要なケースもあります。低血糖を回避することは大事ですが、それと同時に肥満状態も避けなければいけません。
体調管理のために運動を行う際は、運動前に栄養を補うことも重要です。食事に関する相談は、主治医や栄養士といった専門家と行いましょう。

運動療法

走る
運動を行うとインスリンの働きが高まり、結果として注射量を抑えることに繋がります。更に運動することはストレス解消や合併症の予防に効果的です。
運動療法は、食事療法と並行して頻度や強度の調整を行います。高い強度での運動や長時間の運動は血糖値が上昇するリスクがあるほか、エネルギーの消費量も増えるため低血糖には注意しましょう。
インスリンの効果を高める運動として効果的なものは、ジョギングを始めとする有酸素運動や足・腰・背中といった筋肉が多く存在する部分の筋トレがあげられます。
運動を始める際は主治医と相談し、適切な運動量を探しましょう。

薬物療法

一型糖尿病はインスリンの分泌が行われないため、注射器等でインスリンを補充する必要があります。
インスリンを補う薬物療法として代表的なペン型注射は、頻回注射法と呼ばれ2種類のインスリンを使い分けるのが特徴です。
インスリンは食事の際に追加で分泌される物と日常生活の中で分泌される2種類が存在するため、インスリンが出なくなる一型糖尿病ではどちらも補う必要があります。
そのため2種類のインスリンを使い分けることが必要なのです。日常生活の中で分泌される基礎分泌は基礎インスリンと呼ばれる持続性がある薬が用いられ、食事の際に分泌されるインスリンは速攻性の高い薬が用いられます。

発症年齢はどのくらい?

女性医師
一型糖尿病の発症タイミングは、一定の時期に固まっています。しかしそのタイミング以外に発症する場合もあり、その場合は二型糖尿病と診断された後に一型糖尿病と診断されるケースが多いです。
また基本的に遺伝性ではないことに加え、先天的なものでもない点が一型糖尿病の早期発見が難しい理由の1つでもあります。
直近の健康診断で問題がなかったのにも関わらず、多飲多尿の症状が突然現れ検査を行うといったことも珍しくありません。

小児から青年期に多い

一型糖尿病は、主に小児から壮年期の間で多く発症が確認されています。発症のピークは思春期です。そういった背景もあり、一型糖尿病の子どもを持つ保護者向けの情報を纏めている研究機関が複数存在します。
食事のバランスや運動といった部分の管理が保護者だけでは難しいため、学校の先生を始めとしてさまざまな人の協力が欠かせません。

高齢者でも発症することがある

一型糖尿病は自己免疫や突発性で発症するため、ピークを過ぎた中年期から高齢期にかけても発症する可能性は十分あります
一定の年齢を超えると健康診断によって生活習慣病が発見されることは珍しくありません。定期的な検査で兆候の早期発見を行うと共に、日常生活の中の変化に気を付けることが一型糖尿病の早期発見には重要です。

普段の生活で注意することは?

ポイントを抑える
現在は治療法が進化したため、血糖のコントロールを上手く行うことが出来ればさまざまな職種に就くことが可能です。
しかしコントロールに失敗すると、合併症によって失明や透析が必要となるリスクが高まります。
日常生活や社会の生活の中で気を付けながら自分から説明を行うことが、血糖コントロールのために必要です。注意する点をきちんと把握し、日々の生活をより良いものにしていきましょう。

低血糖に注意する

一型糖尿病で最も気を付けるべき点は、低血糖状態にならないことです。
血液中のブドウ糖の減少が低血糖を起こす引き金となるため、食事の時間・量を一定にすることや体調不良によって食事がとれないケースも低血糖に繋がります。
低血糖対策として、移動中のバックから取り出しやすい場所に素早く補給できる糖分を持ち運んでおくことが効果的です。
また下痢や高熱といった体調不良も低血糖に繋がる危険性があります。体調不良の対応は主治医と相談し、予め対応策を講じておきましょう。

通常は制限なく運動できる

運動はインスリンの効果を高めるだけでなく、ストレス発散や危険な合併症のリスクを下げることに繋がるため計画的に行うのが効果的です。
注意点として空腹時に血糖値が高くなる状態で運動を行うと、運動中や運動後の血糖値の上昇が更に激しくなる場合があります。
これは運動することでアドレナリンが放出されて血糖値が上昇するホルモンが分泌されることで、一時的に血糖値が高くなってしまうためです。運動量をあげる際は主治医と相談し、適切な強度を探っていきましょう。

編集部まとめ

パソコンを持つ女医
一型糖尿病は、生活習慣病が原因となる二型糖尿病とは発症の原理が異なります。そして重要なのは、日常生活の中で血糖値をコントロールすることです。

そのためには自身が気を付けることに加えて、主治医からの提案や周囲の人の理解や協力が欠かせません。

きちんと血糖値のコントロールを行えば、職業選択の制限やさまざまな趣味を行うことが可能です。糖尿病の症状が自身や家族に出た場合は、一度内科で検査を受けてみましょう。

この記事の監修医師