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トリコモナス症の症状とは?男女別の症状から治療法まで徹底解説!

 公開日:2024/03/15

トリコモナス症は、原虫(腟トリコモナス)が原因の腟や尿道に感染する性感染症です。
本記事ではトリコモナス症の症状について以下の点を中心にご紹介します。
・トリコモナス症とはどんな病気?
・トリコモナス症の男女別の症状とは?
・トリコモナス症の治療とは?
トリコモナス症の症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

阿部 一也

監修医師
阿部 一也(医師)

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医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

そもそもトリコモナス症とは

そもそもトリコモナス症とは

トリコモナス症は、トリコモナス腟原虫という微小な原虫によって引き起こされる性感染症(STI)です。
トリコモナス腟原虫は、女性の生殖器官に影響を与え、腟や子宮頸管、さらには膀胱や尿道に寄生し、炎症を引き起こすことがあります。
男性では、前立腺や精巣、尿道に寄生し、感染を引き起こすことがあります。生殖可能年齢の女性では、約20%がトリコモナス症を経験するとされています。
さらに、トリコモナス症の患者は、淋病や他の性感染症を同時に持っている場合が多いとされています。

トリコモナス症の基本情報

トリコモナス症の基本情報

トリコモナス症の原因や感染経路、潜伏期間について知っていますか?以下、トリコモナス症の基本情報を解説します。

トリコモナス原虫

トリコモナス原虫は、微小な原生動物の一種で、性感染症を引き起こす寄生生物です。
トリコモナス原虫は単細胞で、大きさは約0.1mmと非常に小さく、肉眼では確認できません。
トリコモナス原虫はアメーバに似た特性を持ち、人間の性器内に侵入して炎症を引き起こします。
トリコモナス原虫は、男性と女性で寄生する部位が異なります。
男性では、主に前立腺、精巣の付近、そして尿道が寄生の場所となります。
一方で女性においては、トリコモナス原虫は膣、子宮頚部、膀胱、そして尿道に寄生することが多いです。

感染経路

トリコモナス症は主に性行為を通じて感染する性感染症です。
トリコモナス症は、トリコモナス原虫という微小な寄生生物によって引き起こされ、感染者の精液や腟分泌液を介して他人に感染します。
さらに、トリコモナス原虫は性行為以外の方法でも感染する可能性があり、具体的には、共有される下着、タオル、便器、浴槽などを介しての間接的な感染が考えられます。
このため、性行為を経験していない人や幼児にも感染する可能性があります。

潜伏期間

トリコモナス症の感染後に症状が現れるまでの潜伏期間は、男性ではおよそ10日間であることが多く、女性の場合は5日から14日の範囲で症状が出始めることがあります。
ただし、感染者の中には自覚症状がない場合も多く、約20〜50%の人が症状を感じないままでいるといわれています。
トリコモナス症の潜伏期間は個人差が大きく、症状が現れなくても感染している可能性があるため、感染が疑われる場合は早めに医療機関での検査を受けることが重要です。

トリコモナス症の症状

トリコモナス症の症状
トリコモナス症ではどのような症状が現れるのでしょうか?以下、トリコモナス症の症状について男女別に解説します。

男性の症状

男性におけるトリコモナス症の症状は、感染していても自覚症状がないことが多いとされています。
症状が現れる場合、主に尿道に関連したものが見られます。
症状としては、尿道からの少量の分泌物(うみ)や、排尿時に軽い痛みや不快感を感じることがあります。
また、頻尿がある状態も、トリコモナス症の可能性があります。トリコモナス症は、前立腺炎の原因となることもあります。

女性の症状

トリコモナス症は女性において特有の症状を引き起こす性感染症です。
通常よりも多く、泡状で強い悪臭を伴う白色から黄色のおりものが出ることがあります。
また、外陰部や腟に痛みやかゆみを感じることがあり、性交時や排尿時に痛みが生じることもあります。
そして、下腹部痛として症状が現れる場合もあります。
トリコモナス原虫は腟だけでなく、子宮頸管、膀胱、尿道にも感染する可能性があります。
適切な治療を受けない場合、感染は卵管にまで広がり、不妊症や早産、流産のリスクを高めることがあります。
トリコモナス症の症状は個人差が大きく、感染しているにもかかわらず症状を感じない女性もいます。

トリコモナス症の診断

トリコモナス症の診断
ここでは、トリコモナス症の診断のために行われる検査について、医療機関での検査や検査キットについて解説します。

医療機関での検査

トリコモナス症の検査は性別によって異なる方法が取られます。

女性の場合、主に膣からの分泌物を顕微鏡で調べることで病原体を確認します。
通常すぐに診断がつくことが多いですが、結果がはっきりしない場合はサンプルを培養して詳細な検査を行うこともあります。
感染から24時間以上経過後に検査が可能とされています。
一方、男性の場合、陰茎の先から排尿前に分泌物を採取し、顕微鏡での検査や培養を行います。
ただし、男性でのトリコモナス検出は女性よりも困難とされ、精度が安定しないことがあります。
そのため、パートナーが感染している場合や感染の可能性がある場合は、検査よりも治療を優先することが一般的です。
尿検査は男性用となっており、結果は通常5日から7日後に得られます。

さらに、核酸増幅検査と呼ばれる二種類(PCR法、TMA法)の検査があり、どちらも精度が高い検査として知られています。
PCR法はDNAを熱で分解し、その分解された部分に酵素が結合してDNAを増幅する方法です。
TMA法は、細胞内に多数存在するrRNAの遺伝子をターゲットにし、酵素が結合してRNAを増幅させる方法です。
結果は即日または翌日に得られることが多いです。
トリコモナス症は淋菌感染症やクラミジア感染症を併発することが多いため、一般的には他の性感染症に対する検査も同時に行われます。
これにより、トリコモナス症の診断と治療が並行して行われます。

検査キット

トリコモナス症の診断には、自宅で使用可能な便利な検査キットがあります。
これは、自ら採取した検体を郵送し、専門の検査機関で分析する方式です。
男性は尿検体を、女性は膣検体を採取します。尿検体の場合、専用のカップに尿を採り、その後検査容器に移して送付します。
膣検体の場合、綿棒を使用しておりものを採取します。これらのキットは使い捨てタイプで衛生的、匿名性も担保されています。
検査結果はインターネット上で確認可能です。
ただし、トリコモナス症と似た症状を示す性感染症は他にも存在するため、その他クラミジア淋病など、他の細菌による感染症の検査とセットで実施することが推奨されます。

トリコモナス症の治療

トリコモナス症の治療
トリコモナス症の治療はどのように行われるのでしょうか?以下、治療について詳しく解説します。

薬物治療

トリコモナス症は、原虫が原因となる感染症であり、その治療には抗原虫薬の使用が必要です。
通常、この症状の治療には経口薬が用いられます。1回の経口投与もしくは投与量を分割して10日間服用します。
女性は膣内に直接薬剤を入れる形での治療が行われることがあります。
副作用としては、吐き気や皮膚の紅潮、口内の金属味、白血球数の減少、膣カンジダ症のリスク増加などが報告されています。

パートナーの治療

トリコモナス症の治療においては、感染者のパートナーも同時に治療を受けることが非常に重要です。
これにより、治療後の再感染のリスクを大幅に減少できるといわれています。
パートナーが治療を受けることが難しい場合、医師は感染者のパートナーに向けた処方箋を発行することがあります。
同時治療により、感染の連鎖を断ち切りるようにしましょう。また、感染が完全に治るまでの間は、性交渉を控えることが推奨されます。

トリコモナス症に似た性感染症

トリコモナス症に似た性感染症
最後に、トリコモナス症と似た性感染症について解説します。

淋菌感染症

淋菌感染症は、淋菌によって引き起こされる性感染症の一つです。
淋菌は比較的弱く、外界の環境にさらされると感染力を失い、消毒剤や温度変化、乾燥、日光などにより容易に死滅します。
そのため、性行為やそれに類似する行為以外での感染は稀です。
男性の場合、感染すると淋菌性尿道炎の症状が現れ、排尿時の痛みや膿性の分泌物が見られます。
しかし、症状は必ずしも典型的ではなく、粘液性の分泌物が出ることもあります。
また、無症状の場合もあります。一方、女性では子宮頚管炎の症状が主で、症状が軽いために自覚症状がないことが多いです。
感染が上行性に広がると、骨盤炎症性疾患や卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛の原因となることがあります。
また、咽頭や直腸の感染も報告されており、これらの部位も感染源となり得ます。

淋菌感染症の治療には抗菌薬が用いられますが、耐性菌の出現が問題となっています。
予防策としては、性行為時のコンドームの使用や、感染者だけでなくその接触者の早期発見と治療が重要です。
淋菌感染症は再感染する可能性があるため、注意が必要です。

膣カンジダ症

膣カンジダ症は、カンジダ菌による感染症です。
カンジダ菌は口腔や消化管、腟、皮膚に自然に存在する常在菌で、単にこれらの部位に存在しているだけでは病気ではありません。
健康な女性の約30〜50%の腟内にもこの菌が見られます。
発症には様々な要因があり、性交渉、免疫力の低下(例:糖尿病、妊娠、抗がん剤治療、免疫抑制剤の使用)、局所の衛生状態の悪化、ステロイド外用薬の誤用などが含まれます。特に、抗生物質の服用後に発症することが多いです。
性行為によって女性から男性へ、またはその逆への感染が起こる可能性があり、妊娠中の女性から新生児への感染も稀に見られます。
主な症状には、腟の強いかゆみや灼熱感、白い帯下(おりもの)の増加があります。
これらの帯下は粥状、酒粕状、またはヨーグルト状の特徴を持ちます。外陰部痛や排尿時の不快感も現れることがあります。
外陰部の発赤や浮腫、かゆみによる擦り傷が視覚的に確認できることもあります。
治療としては、腟錠や外用薬が使われます。
その際、局所の清潔を保ち、通気性の良い下着を着用し、濡れた状態を避けることが重要です。
無用な自己洗浄は避け、ぬるま湯で軽く洗う程度が推奨されます。
ステロイド外用薬の使用は避けるべきです。
再発率は10%と高いため、発症要因をできるだけ取り除くことが重要です。
症状が改善した場合は治癒とみなされますが、特に妊娠中や糖尿病の患者では注意が必要です。

まとめ

まとめ
ここまでトリコモナス症の症状についてお伝えしてきました。トリコモナス症の症状の要点をまとめると以下の通りです。
・トリコモナス症は、トリコモナス腟原虫という微小な原虫によって引き起こされる性感染症(STI)のことで、生殖可能年齢の女性では、約20%がトリコモナス症を経験するとされている
・トリコモナス症の症状は、男性の場合は尿道からの少量の分泌物(うみ)や、排尿時に軽い痛みを感じることがあるが感染していても自覚症状がないことが多く、女性の場合は、泡状で強い悪臭を伴う白~黄色のおりもの、外陰部や腟に痛みやかゆみ、性交時や排尿時に痛みが生じることがある
・トリコモナス症の治療には抗原虫薬が使用され、感染者のパートナーも同時に治療を受けることが非常に重要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師