梅毒の治療期間はどれくらいかかるの?完治できる病気なの?梅毒の治療について徹底解説!
梅毒は、早期発見と治療により回復が期待できる疾患です。しかし、未治療で放置すると重篤な後遺症を残すリスクが高まります。なかでも、妊娠中の女性が梅毒に感染すると、胎児に重大な影響を及ぼす可能性があるので、正しい知識を身につける必要があります。
そこで本記事では、梅毒について以下の点を中心にご紹介します。
・梅毒は完治するのか
・梅毒の治療における注意点
・梅毒の治療期間について
梅毒の治療を理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
そもそも梅毒は完治するの?
梅毒は適切な治療を受ければ完治が可能とされる病気です。
治療には主にペニシリン系の抗生物質が使用され、初期段階であれば通常、数回の治療で症状を克服できるとされています。
しかし、治療を受けない場合や不完全な治療を受けた場合、梅毒は進行し、重大な健康問題を引き起こす可能性があります。
したがって、梅毒の疑いがある場合は迅速に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
もしかして梅毒?梅毒の検査方法とは
梅毒は、どのような症状を呈するのでしょうか。
また、検査方法は、主に血液検査があり、場合によってはPCR検査などが行われることがあります。
今回は血液検査に絞って後述します。
梅毒の症状
梅毒の症状は、感染後の期間に応じて異なります。
初期段階(第1期)では、感染部位に硬いしこりが現れます。
第2期では、発疹や粘膜の潰瘍、発熱、頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が見られます。
第3期では、心臓、血管、脳、神経系などに影響を及ぼす深刻な問題が発生する可能性があります。第4期(後期梅毒)では、さらに重篤な症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
梅毒の検査方法
梅毒の検査方法には、主に血液を用いた抗体検査があります。抗体検査は、梅毒トレポネーマに対する抗体の有無を調べます。
梅毒トレポネーマは、螺旋形をしており、体内で迅速に動けます。
人から人への主な感染経路は性的接触ですが、血液を介した感染や、妊娠中の母親から胎児への感染もあります。
梅毒は、未治療の場合、数年にわたって進行し、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。
検査は医療機関や一部の保健所で受けられ、場合によっては匿名で検査を受けられます。
また、郵送でやり取りできる検査キットも普及しており、自宅で梅毒の検査を行え、Web上で検査結果を確認できるため、注目を集めています。
もし、梅毒が疑われる場合は、検査キットを使用して検査してみてはいかがでしょうか。
梅毒の治療方法
梅毒の治療方法は、病状の進行段階や患者さんの状態によって異なります。
方法としては内服薬と筋肉注射があります。
それぞれ解説します。
内服薬
梅毒の内服薬は、アモキシシリンとドキシサイクリンがあります。アモキシシリンはペニシリン系抗生物質の一種です。
日本では、梅毒の治療によく使用される内服薬です。
ドキシサイクリンはテトラサイクリン系抗生物質の一種です。
ペニシリンアレルギーがある患者さんに使用されます。
ペニシリンアレルギーとは、ペニシリン系の抗生物質に対して異常な免疫反応を示すアレルギー反応のことです。
ペニシリンアレルギーの症状は、軽度なものから重度なものまでさまざまです。
軽度な症状としては、発疹、かゆみ、蕁麻疹、吐き気、下痢などがあります。
重度な症状としては、アナフィラキシーショックなどがあります。
アナフィラキシーショックとは、全身にアレルギー反応が起こる重篤な症状です。
呼吸困難、血圧低下、意識障害などの症状が現れ、死に至ることもあります。
ペニシリンアレルギーの診断は、問診や血液検査などによって行われます。
問診では、アモキシシリン服用歴やアレルギーの既往歴などを聞かれます。
血液検査では、アモキシシリンに対する抗体の有無を調べます。
梅毒の内服薬による治療は、筋肉注射より患者さんの負担が少ないことがメリットです。
しかし、服用を忘れたり、途中でやめたりすると、再発する可能性があります。
また、副作用として、吐き気、下痢、発疹などが起こることがあります。
筋肉注射
梅毒の治療には、ペニシリン系抗生物質が使用されます。
ペニシリン系抗生物質は、梅毒トレポネーマの細胞壁合成を阻害するので、殺菌作用が期待できます。
梅毒の治療の筋肉注射は、持続性ペニシリン筋注製剤とベンジルペニシリンG (BPG)の2種類があります。
持続性ペニシリン筋注製剤は、日本では2020年から使用可能になりました。
持続性ペニシリン筋注製剤は、1回の筋肉注射で治る可能性がある、梅毒治療の新しい選択肢です。持続性ペニシリン筋注製剤は、梅毒トレポネーマの細胞壁合成を阻害する効果が期待できるとされています。
また、静脈注射より、患者さんの負担が少ないこともメリットです。
ベンジルペニシリンG (BPG)は、従来使用されている梅毒治療の標準的な薬剤です。
1日1回、7日間、医療機関で静脈注射します。
ベンジルペニシリンG (BPG)は、持続性ペニシリン筋注製剤より、劣ることはないといわれています。しかし、1回の筋肉注射で治るわけではないため、患者さんの負担が大きいことがデメリットです。
また、筋肉注射は静脈注射より痛みや腫れなどの副作用が起こりやすいので、医師や看護師の指示にしたがって、正しい方法で注射を受ける必要があります。
梅毒の治療における注意点
梅毒の治療は、早期に行うことが重要です。早期に治療すれば、完治する可能性が高くなります。
また、治療中は、定期的に血液検査を行い、薬剤の副作用などを監視する必要があります。
完治と間違えやすい潜伏梅毒について
梅毒は、感染から1年以内に発症する早期梅毒と、感染から1年以上経過して発症する潜伏梅毒に分けられます。
潜伏梅毒は、症状がないため、完治したと誤解されやすい段階です。
しかし、潜伏梅毒は、感染したままの状態であり、再発する可能性を秘めています。
また、潜伏梅毒は早期潜伏梅毒と晩期潜伏梅毒に分けられます。
早期潜伏梅毒は、感染から1年以内の潜伏梅毒です。
症状はほとんどありませんが、血液検査で梅毒の抗体が検出されます。
そして早期潜伏梅毒は、治療を必要としません。しかし、パートナーにも検査を受けるよう勧め、必要に応じて治療を受けましょう。
晩期潜伏梅毒は、感染から1年以上の潜伏梅毒です。
症状はほとんどありませんが、血液検査で梅毒の抗体が検出されます。
晩期潜伏梅毒も、治療を必要としません。しかし、定期的に血液検査を受け、再発の有無をチェックする必要があります。
梅毒の治療期間の性行為
梅毒は性行為によって感染する病気なので、梅毒の治療期間中は、性行為を避けることが重要です。
治療期間中は、まだ梅毒の菌が体内に残っている可能性があるため、性行為によってパートナーに感染させる可能性があります。
また、治療期間中は、性行為によって傷がつく可能性があり、傷から梅毒の菌が体内に侵入するリスクもあります。
そのため、梅毒の治療期間中は、性行為を避け、パートナーにも検査を受けるよう勧め、必要に応じて治療を受けるようにしましょう。
治療期間が終了し、血液検査で梅毒の菌が検出されなくなったら、性行為を再開しても問題ありません。
梅毒の治療期間について
梅毒の治療期間は、感染の段階によって異なります。
早期梅毒 (感染から1年以内)の場合、治療期間は、約2〜8週間です。
早期梅毒は持続性ペニシリン筋注製剤や医療機関で静脈注射するベンジルペニシリンG (BPG)を使用します。
潜伏梅毒 (感染から1年以上)の場合、治療期間は、約8〜12週間です。
潜伏梅毒の治療も、早期梅毒のように、静脈注射するベンジルペニシリンG (BPG)を使用して治療をします。
晩期梅毒 (進行した梅毒)の場合の治療は、潜伏梅毒と同じイメージです。
梅毒が治りにくい状態
梅毒は、ペニシリン系の抗生物質で治療可能とされる性感染症ですが、いくつかの要因によって治りにくい状態になることがあります。
要因はさまざまありますが、治療の不遵守、糖尿病や腎臓病などの基礎疾患がある方、薬剤耐性がある方などが例として挙げられます。
以下で、それ以外の要因の一部を紹介します。
神経梅毒合併である
神経梅毒は、梅毒の感染が神経系にまで広がった状態です。
早期梅毒、潜伏梅毒、晩期梅毒のいずれの段階でも発症する可能性があります。
神経梅毒の症状は、頭痛、発熱、倦怠感、筋肉痛、関節痛、視力障害、耳鳴り、めまい、麻痺や意識障害などです。
神経梅毒は、早期発見・早期治療が重要です。
治療が遅れると、重篤な後遺症が残る可能性があります。
HIVにも同時感染している
梅毒とHIVは、両方とも主に性行為によって感染する性感染症であるため、梅毒があると、HIVにも感染してしまうリスクが高まるとされています。
近年、梅毒の発生率は増加傾向にあり、なかでも男性同性愛者の間で流行しているとされます。
アメリカでは、梅毒の新規の患者さんの半数以上がHIVを合併しているといわれています。
梅毒による粘膜の損傷がHIVの感染を容易にすることも、重複感染が多いとされる理由の一つです。HIVを合併すると、梅毒の症状の進行が速くなり、治療の結果も得にくいとされています。
梅毒の後遺症について
梅毒の後遺症には、次のようなものがあります。
・心臓病(心臓弁膜症、心筋炎、心不全)
・神経障害(脳卒中、認知症、精神障害)
・失明(視神経炎、網膜炎)
・骨や関節の病気(骨髄炎、関節炎)
・皮膚病気(皮膚潰瘍、皮膚がん)
上記の後遺症は、梅毒が進行した段階で発症する可能性が高くなります。
梅毒は進行してしまうと、命にも関わってくるため、梅毒が疑われる場合はクリニックや病院を受診しましょう。
まとめ
ここまで梅毒の治療期間や治療法をお伝えしてきました。
要点をまとめると以下のとおりです。
・梅毒は、適切な治療を受ければ完治できる可能性がある病気で、初期段階であれば通常、数回の治療で症状を克服できるとされているが、治療を受けない場合や不完全な治療を受けた場合、進行して重大な健康問題を引き起こす可能性がある
・梅毒は、感染してから1年以上経って発症する潜伏梅毒があり、潜伏梅毒は症状がないので、完治したと誤解する可能性がある点と、治療期間中の性行為はパートナーに感染させるおそれがあるので、注意する
・梅毒の治療期間は、感染の段階によって異なり早期梅毒 (感染から1年以内)の場合は約2〜8週間で、潜伏梅毒 (感染から1年以上)の場合は、約8〜12週間とされている
梅毒の後遺症を残さないためにも、早期治療と再発の予防が大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。