梅毒に感染すると皮膚にさまざまな症状が出現する?進行別の症状を解説
梅毒は、性感染症の中でも変化に富んだ症状を示します。
なかでも進行段階別に特徴的な皮膚症状を呈するため、梅毒に感染した際に皮膚に現れるさまざまな症状について理解しておくことが大切です。
本記事では梅毒の皮膚症状について詳しく解説します。
・梅毒について
・第1期、第2期の症状
・第3期、第4期の症状
梅毒の皮膚症状についての知識を深め、予防に役立てていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
梅毒とは
梅毒は、トレポネーマ・パリダムと呼ばれる細菌によって引き起こされる性感染症であり、主に性行為によって感染が広がります。この細菌は、直接の接触によって体内に侵入し、皮膚や粘膜の傷口や潰瘍から侵入します。
梅毒の起源は古く、文献や考古学的証拠によれば、数千年前から存在していた可能性があります。
梅毒は性的接触によって感染する傾向にありますが、ほかの経路も存在します。
これには、妊娠中の母体から胎児に感染する母子感染や、感染した母乳を通じた乳児感染が含まれます。
また、感染した個人と性的接触以外で接触したときにも感染する可能性がありますが、これはまれなケースです。
そして、梅毒は特定のリスク要因を持つ人々により発症しやすい傾向があります。
例えば、性行為を頻繁に行う人、複数の性パートナーを持つ人、コンドームの適切な使用を怠る人、性的な活動を始めた若年層などがリスクグループに含まれます。
また、ホームレスや性風俗産業の従事者など、社会的に脆弱なグループも感染リスクが高いとされています。
【第1期】の症状
ここからは、梅毒の第1期の症状について解説していきます。
第1期は初期硬結と多彩な随伴症状が現れます。
これらの症状は軽度で、自然に治ってしまう傾向にありますが、放置すると第2期以降の重篤な症状へと進行する可能性がありますので十分に注意が必要です。
初期硬結(こうけつ)
梅毒の初期硬結は、梅毒感染の初期段階で生じる症状の一つです。
感染後、通常3週間から3ヶ月程度で現れることがあります。この症状は、感染部位(通常は性器や口唇)に、硬いでこぼこした塊や結節が現れることで特徴付けられます。
これらの硬結はしばしば痛みを伴わず、触ると硬く感じることがあります。
また、初期硬結は、梅毒菌が感染した部位で増殖し、周囲の組織に炎症反応を引き起こすことで形成されます。
初期硬結が発生する部位は、複数の部位に発生することがあり、感染のルートによって異なる場合があります。
例えば、性的接触による感染の場合は、性器や口唇などの粘膜表面に初期硬結が現れる傾向にあります。
初期硬結は、梅毒の初期段階で現れやすい代表的な症状の一つですが、全ての感染者に現れるわけではありません。
初期硬結が現れない場合でも梅毒に感染している可能性がありますので、定期的な性感染症の検査を受けることが重要です。
硬性下疳(げかん)
梅毒の硬性下疳は、初期硬結の中心部周辺にできる浅い潰瘍を指します。
初期硬結が急速に潰瘍へと変化し排膿する場合もありますが、放置していると2〜3週間程度で自然に消失します。
硬性下疳は、男性は亀頭・陰茎・亀頭と陰茎の間・性器周囲の部位に発生し、女性であれば膣内・大陰唇・小陰唇周辺の皮膚に生じますが、口唇や舌、指の付け根などほかの部位にも現れ、これらの潰瘍は痛みを伴わなかったり、見えにくかったりして見逃してしまうことがあります。
無痛性横痃(おうげん/よこね)
梅毒の無痛性横痃とは、第1期によく見られる症状で、感染部位の近くにあるリンパ節の無痛性の腫れです。
硬性下疳と呼ばれる潰瘍が性器周辺に現れた後、数週間から数ヶ月の間に発生することがあります。
これは、鼠径部または首に発生する可能性があり、痛みがなく、自然に治まるため、気づかずに放置してしまう人も少なくありません。
【第2期】の症状
梅毒の第2期は、感染後6週間〜6ヶ月の間に現れる症状です。
第1期の症状が一旦治まった後に現れることが多いようですが、第1期の症状が現れないまま第2期に移行することもあり、多彩な発疹と全身症状が現れます。
放置すると第3期以降の重篤な症状へと進行する可能性がありますので早めに医療機関を受診し、検査を受けることが大切です。
梅毒性バラ疹
梅毒性バラ疹は、体幹、顔、四肢、足の裏、手のひらに、バラの花びらのような赤い発疹が現れます。
発疹は、数ミリ〜数センチメートル程度で、痒みはほとんどありません。
数週間で自然に治まりますが、放置すると再発することがありますので注意深く観察する必要があります。
丘疹(きゅうしん)性梅毒
丘疹性梅毒は、梅毒の第2期に見られる症状の一つで、エンドウ豆ほどの大きさの赤褐色のかゆみのない丘疹が、背中・腕・脚・お腹・足の裏・手のひらなどに現れることが特徴です。
これらの症状は男女で差がありません。
扁平コンジローマ
扁平コンジローマは、梅毒の第2期特有の症状であり、生殖器や肛門周辺に出現する小さくて硬い隆起を特徴とします。
これらの隆起は、多数存在する場合が多く、梅毒感染の重要な指標とされています。
梅毒は適切な治療によって治癒可能な病気であるため、これらの症状が現れた場合は、迅速に医療機関で受診をしましょう。
膿疱性梅毒
膿疱性梅毒は、梅毒感染の第2期に見られる症状の一つで、皮膚や粘膜に膿疱(膿を含んだ水ぶくれ)が形成されることが特徴です。
この症状は全身に現れることがあり、多汗部位に出やすいです。
膿疱は自然に消失することもありますが、適切な治療を受けないと症状が進行し、より深刻な健康問題を引き起こす可能性があるため、医師の診断と治療が必要です。
梅毒性白斑
梅毒性白斑は、主に口腔内の粘膜に白い斑点が現れるものですが、これらの白斑はほかの多くの病気とは区別がつきにくい症状です。
例えば、口内炎やほかの粘膜疾患とその外見が似ていることから、白斑症状だけで梅毒と診断することは難しいです。
梅毒性爪炎(そうえん)・爪囲炎(そういえん)
梅毒性爪炎と爪囲炎は、梅毒の感染が進行すると現れる可能性のある症状です。
これらの症状は、爪やその周囲の皮膚に炎症が起こり、赤み、腫れ、痛み、または爪の変形などの症状が現れることが特徴です。
梅毒性粘膜疹
梅毒性粘膜疹は、口腔内や性器を含む身体の粘膜に現れる病変です。
これらは通常、痛みを伴わない赤または灰色の斑点として現れ、時には潰瘍化することもあります。
粘膜疹は、感染から数週間から数ヶ月後に出現するとされており、梅毒が体系的に拡散している証拠となります。
梅毒性アンギーナ
梅毒性アンギーナは、梅毒感染による特異的な症状の一つで、喉の炎症や痛みを特徴とします。
これは梅毒の第2期に見られることが多く、口腔内の粘膜病変に伴うものです。
【第3期】の症状
梅毒の第3期(潜伏期)は、感染から数年後に始まることが多く、症状が顕著に現れる前の無症候期間です。
この段階の梅毒の症状は、皮膚症状に加えて、感染部位以外の臓器や骨にも損傷を与える可能性があります。
結節性梅毒
結節性梅毒は、主に梅毒の後期に現れる皮膚の病変で、硬く、痛みのない結節(組織や器官内に形成される、通常は固い塊や腫れ物のこと)が皮膚に形成されるのが特徴です。
これらの結節は身体のどの部分にも現れますが、しばしば頭部、首、肘に見られます。
適切な治療を行うことで、これらの結節は消失することがあります。
骨病変
梅毒の骨病変は、梅毒が進行して第3期に入った際に見られる症状の一つで、骨の痛みや夜間痛、局所的な骨の腫れや感染が含まれます。
進行すると、骨の変形や骨折のリスクが高まり、なかでも長骨や頭蓋骨に影響を与えることがあります。
治療が遅れると、これらの症状は永続的な損傷につながる可能性がありますので、専門的な治療を受けましょう。
【第4期】の症状
梅毒の第4期(晩期梅毒)は、梅毒感染後数年から数十年で発症し、心血管系や神経系に重大な影響を及ぼすことがあります。
この段階での症状には、神経梅毒、梅毒性心臓病、そしてガム腫(組織内の腫れ物)が含まれることがあります。
心血管梅毒
心血管梅毒は、梅毒の晩期段階で見られる症状で、主に大動脈に影響を与えます。これにより、大動脈炎や大動脈弁の不全、大動脈の拡張や瘤形成が起こり得ます。
これらの病変は、心臓への血流に影響を及ぼし、最終的には心臓疾患や心不全につながる可能性があります。
神経梅毒
神経梅毒は梅毒が神経系に影響を及ぼす形態で、記憶力低下、判断力の低下、視力の問題、運動障害、精神障害など多岐にわたる症状が現れます。
治療の遅れは重篤な結果を招くため、早期発見と適切な治療が必要です。
梅毒の検査方法
ここからは、梅毒の検査方法について解説します。
未治療の梅毒は、心臓、脳、その他の臓器に深刻な影響を及ぼす可能性があり、重大な健康問題を引き起こすことがあります。
また、感染が早期に検出されれば、他者への感染拡大を防ぐことにも繋がりますので、検査方法を知ることは重要です。
医療機関
梅毒は、医療機関で検査を受けられます。
主に血液検査を用いて行われ、最初に非トレポネーマ検査(RPRやVDRLなど)で体内の抗体を調べ、陽性の場合は、トレポネーマ検査(TPHAやFTA-ABSなど)により梅毒トレポネーマ特有の抗体を検出します。
これにより、梅毒に感染しているか割り出します。
検査は無症状の段階でも行えるので、万が一のためにも検査を受けることを推奨します。
保健所
梅毒は、保健所でも検査を受けられます。
検査費は無料で、かつ匿名で実施されることが多く、予約不要で利用できる場合があります。
医療機関での検査と同様、血液検査を主な方法としており、検査結果に応じて適切なアドバイスや治療の案内を行います。
保健所と医療機関の違いは、保健所が匿名で無料の検査を提供し、公衆衛生の向上を目的としている点です。
一方、医療機関では保険を使用した検査と治療が行われ、患者さんの個人情報が記録されます。
郵送の検査キットでも調べられる
医療機関や保健所に行かなくても検査ができる方法があります。
それは、梅毒の検査キットを使用することです。
このキットは、血液サンプルを採取し、指定の機関に送付することで検査が可能になります。
結果はオンラインで確認可能であり、匿名性を保ちつつ検査が行われています。
まとめ
ここまで梅毒の皮膚症状について解説してきました。
内容をまとめると以下のとおりです。
・梅毒は、トレポネーマ・パリダムと呼ばれる細菌によって引き起こされる性感染症であり、主に性行為によって感染が広がる
・第1期は初期硬結と多彩な随伴症状が現れるるが症状は軽度で自然治癒する傾向にあり、放置すると梅毒性バラ疹・丘疹(きゅうしん)性梅毒・扁平コンジローマなどの第2期以降の症状へと進行する
・梅毒の第3期は感染から数年後に始まることが多く、結節性梅毒の皮膚症状のほか骨病変が現れ、第4期には神経梅毒、梅毒性心臓病、ガム腫といった症状が出現する
梅毒は性的接触だけでなく、キスを通じても感染の可能性があるため、警戒が必要な性感染症です。感染の不安がある場合は、早期に検査を受けましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。