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梅毒の初期症状は?どのように進行していくの?

 公開日:2024/05/10
梅毒 初期症状

近年、日本では梅毒の感染者数が急増しており、特に若い世代に多く見られます。梅毒の初期症状はどのようなものなのでしょうか?梅毒はどのように進行していくのでしょうか?
本記事では梅毒の初期症状について以下の点を中心にご紹介します。

梅毒の初期症状
梅毒の進行過程
梅毒の治療

梅毒の初期症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

梅毒とは

梅毒とは
梅毒は、性感染症の一つであり、細長いらせん形の細菌「梅毒トレポネーマ(トレポネーマ・パリダム)」によって引き起こされる疾患です。
梅毒は世界中で広く見られ、適切な治療が行われない場合、重大な健康上の影響を及ぼす可能性があります。
梅毒は、症状が多様であることから「模倣の名人」とも呼ばれ、梅毒の症状を他の疾患と混同しやすいことが特徴です。
また、母子感染によって、流産や死産、先天性梅毒などの合併症を引き起こす可能性があります。

梅毒の初期症状

梅毒の初期症状
以下では、梅毒の初期症状について詳しく解説します。

初期硬結(しょきこうけつ)

梅毒の初期症状の一つとして、「初期硬結」が現れることがあります。初期硬結は、感染部位に発生する、小豆〜小指くらいの大きさの硬いしこりで、中心部が非常に硬く、不自然に盛り上がっています。

しこりは、しばしばニキビと混同され、痛みを感じる人と全く痛みを感じない人の2パターンに分かれます。
男性では、亀頭、陰茎、亀頭と陰茎の間の部分(冠状溝)、性器周辺の皮膚に発生しやすいですが、女性では膣内、大陰唇、小陰唇周辺の皮膚に現れることが多いようです。
また、口唇や手指にも現れることがありますが、その頻度は低いとされています。
初期硬結は、梅毒に感染してから約3週間後に現れ、2〜3週間程で自然と消えていきます。
しかし、この時点で梅毒が完治したと考えるのは誤りです。原因菌は潜伏しており、症状が進行していきます。

硬性下疳(こうせいげかん)

硬性下疳は、初期硬結の中心にできる浅い潰瘍のことです。
初期硬結として出現した赤くて硬い小円形の丘疹が、急速に潰瘍となったものです。

男性の場合、亀頭、陰茎、亀頭と陰茎の間の部分、性器周辺の皮膚に生じる例が多く見られます。
女性の場合は、膣の中、大陰唇、小陰唇周辺の皮膚に発症する例が多いです。
また初期硬結同様、男女ともに口唇などにも症状が現れることがあります。
硬性下疳も、放置していると約2〜3週間で消失します。

リンパ節の腫れ

感染すると、梅毒トレポネーマという細菌が血液やリンパ液に乗って全身に広がります。
その過程で、感染部位の近くにあるリンパ節が腫れることがあります。

リンパ節は、体内の異物や病原体を排除する役割を果たす免疫器官です。
梅毒トレポネーマに対抗するために、リンパ節の中で白血球が増殖し、腫れやすくなります。

梅毒の初期症状として、リンパ節の腫れが現れるのは、感染してから約3週間後です。
特に、陰部や口の中に感染した場合は、足の付け根や首のリンパ節が腫れやすくなります。
腫れは、痛みを伴わず、数週間で自然に消えてしまいます。

梅毒は無症状のこともある?

梅毒は無症状のこともある?

梅毒に感染しているかどうかを判断するためには、自覚症状だけを頼りにはできません。なぜなら、梅毒の経過においては、全く自覚症状がないことが想像以上に多いからです。
感染してから約1〜3ヶ月くらい経ってから、先述した初期硬結や潰瘍ができることがあります。

また、梅毒が感染するのは、性器だけではありません。
オーラルセックス(口腔性交)で咽頭部(ノドの部分)に感染したり、アナルセックス(肛門性交)で直腸に感染したりすることもあります。
性器以外に感染した場合にも、本人が感染に気づかないことが多くあります。
そして、本人も自覚がないまま、梅毒は他の人へと広がっていくのです。

梅毒の進行過程

梅毒の進行過程

梅毒は4つの期間に分けられ、それぞれに特徴的な症状があります。
以下では、梅毒の進行過程と各期間の症状について解説します。

第1期梅毒

梅毒の進行過程において、感染後3週間ほど経過すると、細菌の侵入部位から症状が現れる「第1期梅毒」が始まります。
初期硬結や硬性下疳が特徴的です。

第1期梅毒では、症状がなくても梅毒に感染している可能性があります。
放置すると梅毒が治ったと勘違いし、第2期へ移行してしまう危険性があります。
また、妊娠中に感染した場合は、胎児にも影響が及ぶ可能性があるため、特に注意が必要です。
生まれてすぐに症状がなくても、数年単位で遅れて発症するケースもあります。

第2期梅毒

第2期梅毒は、感染後約3か月以上経過した段階で始まります。
第2期梅毒では、梅毒が全身へと移行し、さまざまな症状が現れることがあります。
症状は風邪に似ているため、見分けが難しい場合もあります。
第2期梅毒の主な症状には、以下のようなものがあります。

梅毒性バラ疹:手足や身体、性器に無痛性の紅斑ができる
梅毒性脱毛:頭部全体に脱毛症状がおこる
扁平コンジローマ:肛門周辺や外陰部にイボができる軽い痛みやかゆみなどの不快感がある
梅毒性粘膜疹:口周りや性器などの粘膜にできる口内炎のような赤や白の斑点ただれたり潰瘍を伴う場合もある
発熱・頭痛・リンパの腫れ:バラ疹などの症状とともにあらわれることも

症状は、第1期と同様に時間の経過とともに症状が消えていく場合があります。
しかし、第1期で治っていなかったのと同じように、放置すると第3期へと移行してしまいます。

第3期梅毒

第3期梅毒は、感染後約3年〜10年以上経過した段階で始まります。
梅毒が全身に進行し、特徴的な症状が現れることがあります。

第3期梅毒では、結節性梅毒と呼ばれる症状があります。
結節性梅毒は、腫瘤が筋肉や皮膚、骨にでき、周辺の組織を破壊します。
腫瘤は、ゴムのような質感を持ち、ゴム腫と呼ばれています。ゴム腫は、皮膚や筋肉だけでなく、肝臓や腎臓にもできる可能性があります。

第3期梅毒に至るまでには、通常第1期や第2期に症状が現れるため、現代では第3期に進行するケースはほとんどありません。
しかし、感染が放置された場合や適切な治療が受けられなかった場合には、第3期梅毒に進行する可能性があります。

第4期梅毒

第4期梅毒は、感染後約10年以上経過した段階で始まります。
梅毒が全身に進行し、重篤な症状が現れることがあります。
特に注意すべきは、心臓系の血管や中枢神経が侵されることです。
侵害により、大動脈瘤形成や大動脈瘤破裂などの重篤な症状が生じるリスクが高まります。

また、脊髄癆による麻痺や認知症の症状が現れることもあります。
第3期同様、現代の日本では第4期梅毒まで進行した例はほとんどみられません。

梅毒の検査方法

梅毒の検査方法

梅毒の検査は、血液検査が行われます。
採取した血液から体内の「抗体」を調べ、梅毒の感染有無を確認します。
ただし、梅毒の抗体を検出するには、感染機会から最低でも3週間以上の期間が必要となります。
この抗体を検出できるまでの期間を、「ウインドウピリオド」と呼びます。
ウインドウピリオドの期間中に検査をしても、梅毒の感染を確認することは難しいです。

感染が疑われる性交渉などを行った方も、感染機会から1ヵ月程度を目途に、医療機関での検査を受けるようにしてください。

梅毒の治療

梅毒の治療
梅毒の治療はどのように行われるのでしょうか?
以下では、梅毒の治療の方法について解説します。

治療方法

梅毒の治療方法は、ペニシリン系抗菌薬が用いられます。
ペニシリン系抗菌薬は、梅毒の原因となる細菌の増殖を抑えることで感染を治療します。
ただし、ペニシリン系抗菌薬にアレルギーがある場合や妊婦の場合は、代替としてテトラサイクリン系抗生物質やスピラマイシン酢酸エステルなどが選択されることがあります。

治療には、感染の程度や患者さんの状況に応じて、さまざまな薬が使われることがあります。
感染が軽度であれば、1回の投与で済むこともありますが、重度の場合は数回にわたって投与されることがあります。
また、治療期間も感染の程度に応じて異なりますが、数週間から数か月間続くことがあります。

治療期間

梅毒の治療期間は、感染初期の第1期では約2〜4週間、第2期では約4〜8週間、第3期以降では約8〜12週間の抗生物質の服用が定められています。

治療を開始すると、Jarisch-herxheimer現象と呼ばれる反応が起こることがあります。
抗生物質によって体内の梅毒菌が破壊されることによって引き起こされる現象で、39度前後の発熱や全身倦怠感、悪寒、頭痛、筋肉痛、発疹の一時的な増加などの症状が見られます。
治療を開始した患者さんの約50%がこの現象を経験すると報告されています。

治療費用

梅毒の治療費用は、検査費用と実際の治療にかかる費用に分けられます。
梅毒の検査費用は、保健所であれば無料ですが、他の性感染症も同時にチェックしたい場合は、自治体によって検査できる項目とできない項目があります。

病院で行う場合は、いろいろな性感染症のチェックを同時に行うことが可能ですが、自己負担額は保険証の負担割合によります。
自覚症状がない場合は自費診療となり、検査費用は概ね5,000〜2万円程度です。
治療が必要となった場合、健康保険で治療を受けられますが、自己負担割合により負担額は異なります。
健康保険を利用したくない場合は、自費診療での治療費用は概ね1万〜1万5,000円前後が相場です。

梅毒感染を予防するためにできること

梅毒感染を予防するためにできること

梅毒の感染を予防するためには、以下のようなことが重要です。

コンドームの使用を徹底する:性行為時には必ずコンドームを使用し、不特定多数との性交渉を控えることが大切です。コンドームは感染症のリスクを軽減します。
パートナーが梅毒に感染している場合は、性交渉を控える:パートナーが梅毒に感染していることが分かった場合は、治療が終了するまで性交渉を控えましょう。感染のリスクを最小限に抑えるためには、パートナーとのコミュニケーションが重要です。
体液や血液に触れることを避ける梅毒はまれに体液や血液に触れることで感染することもあります。歯ブラシやカミソリなど体液や血液が付着している可能性のある道具の使い回しを避けるのも予防のポイントです。
定期的な検査を受ける:性感染症の検査は定期的に受けることが重要です。特に、性行為を行った後には検査を受けることで早期発見・早期治療が可能です。
正しい知識を持つ梅毒についての正しい知識を持つことも予防につながります。性感染症についての情報を定期的にチェックし、正しい予防方法を実践しましょう。

まとめ

まとめ

ここまで梅毒の初期症状についてお伝えしてきました。
梅毒の初期症状の要点をまとめると以下の通りです。

梅毒の初期症状は、初期硬結や硬性下疳などの皮膚症状が現れ、リンパ節の腫れも起こる
梅毒は第1期から第4期までの進行過程があり、第1期では初期硬結や硬性下疳、第2期では全身症状が現れ、第3期では結節性梅毒が進行し、第4期では重篤な合併症が現れる可能性がある
梅毒の治療には、ペニシリン系抗菌薬などの抗生物質が主に用いられ、感染の程度や患者さんの状況に応じて適切な治療法が選択される

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師